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470 飛んだ方が早い
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翌朝。ルキアスは余所行きを身に着け、メイナーダ、ユアと共にベクロテへ向かった。キルシルセッカに渡された連絡先のリストにある店を探してその所在地の町を探すより、ベクロテに飛んだ方が早いとの判断だ。
往路の印象が強かったらしいメイナーダが始め不思議そうにしたが、高く速く飛び始めたら納得の表情に変わった。
「凄いわ! ルキアスちゃん、こんなに速いなんて!」
「最初からこう言う風に飛んでれば良かったんですけど……」
ルキアスは何の躊躇も無く腕を絡めて来て胸が当たってもまるで気にしていないメイナーダにドギマギしながらも、ラナファーベへの往路では無駄に時間を使ったようで反省の念が強く出る。
「あら、あれはあれで楽しかったから大丈夫よ」
自分達がどこを通ったかを知れたのは有意義だったと言う。そして「ゆっくりは一度だけで十分だけどね」と笑った。
「それなら良かったです」
ルキアスにも似たような気持ちがあるのが手伝ってか、ルキアスは少し心が軽くなった。
「ところでユアも大きくなりましたよね。顎がユアの頭にちょうど当たっちゃって……」
相変わらずユアはルキアスの膝の上がお気に入りのようで今も座っているのだが、この一年余りの間にユアの背も伸び、膝の上に座られ、もたれ掛かられると、その頭がちょうと顎を乗せ易い位置に来る。ルキアスは顎を休めてしまわないよう、多大な苦労を強いられていた。
「そうね。そろそろ一度膝の上は卒業した方がいいかも知れないわね。でも今日はユアの好きにさせてあげて」
「はい」
ルキアスは「一度」の意味に気付かなかった。
ベクロテへと着くと、真っ直ぐキルシルセッカの屋敷に向かった。そこは高級住宅街の一角だ。人口の密集したベクロテに在りながら高級住宅街には広い庭を持つ家が並んでいる。ルキアスは余所行きを着ていても気後れした。
「やっぱりナファーに行きませんか?」
ナファーとはキルシルセッカの経営するホームセンターの店名だ。
「もう、ルキアスちゃんたら、ここまで来て怖じ気づいてどうするの。さあ、行くわよ」
「あ、あの! やっぱり心の準備が!」
メイナーダはユアを地面に降ろし、ルキアスは訴えなどお構いなしにルキアスの左腕を引っ張って行く。するとユアがメイナーダを真似るようにルキアスの右手を取って引っ張り出した。こうなるともう振り解くこともできないルキアスは引っ張られるままだ。
そうしてキルシルセッカの屋敷の前にやって来た。
メイナーダに背中を押されつつ呼び鈴を鳴らすと、執事らしき人が屋敷から現れた。
「ご用件を伺います」
「さあ、ルキアスちゃん」
メイナーダがルキアスに小声で囁きながら肘で突いた。
ルキアスはメイナーダを一瞬だけ恨みがましく見る。ここは自分で話すべきだと自覚はあるのでそれだけだ。
ルキアスは執事に告げた。
「ルキアスと申しましゅ。キルシルセッカさんにお取りちゅぎ願いましゅ」
盛大に噛んだ。
往路の印象が強かったらしいメイナーダが始め不思議そうにしたが、高く速く飛び始めたら納得の表情に変わった。
「凄いわ! ルキアスちゃん、こんなに速いなんて!」
「最初からこう言う風に飛んでれば良かったんですけど……」
ルキアスは何の躊躇も無く腕を絡めて来て胸が当たってもまるで気にしていないメイナーダにドギマギしながらも、ラナファーベへの往路では無駄に時間を使ったようで反省の念が強く出る。
「あら、あれはあれで楽しかったから大丈夫よ」
自分達がどこを通ったかを知れたのは有意義だったと言う。そして「ゆっくりは一度だけで十分だけどね」と笑った。
「それなら良かったです」
ルキアスにも似たような気持ちがあるのが手伝ってか、ルキアスは少し心が軽くなった。
「ところでユアも大きくなりましたよね。顎がユアの頭にちょうど当たっちゃって……」
相変わらずユアはルキアスの膝の上がお気に入りのようで今も座っているのだが、この一年余りの間にユアの背も伸び、膝の上に座られ、もたれ掛かられると、その頭がちょうと顎を乗せ易い位置に来る。ルキアスは顎を休めてしまわないよう、多大な苦労を強いられていた。
「そうね。そろそろ一度膝の上は卒業した方がいいかも知れないわね。でも今日はユアの好きにさせてあげて」
「はい」
ルキアスは「一度」の意味に気付かなかった。
ベクロテへと着くと、真っ直ぐキルシルセッカの屋敷に向かった。そこは高級住宅街の一角だ。人口の密集したベクロテに在りながら高級住宅街には広い庭を持つ家が並んでいる。ルキアスは余所行きを着ていても気後れした。
「やっぱりナファーに行きませんか?」
ナファーとはキルシルセッカの経営するホームセンターの店名だ。
「もう、ルキアスちゃんたら、ここまで来て怖じ気づいてどうするの。さあ、行くわよ」
「あ、あの! やっぱり心の準備が!」
メイナーダはユアを地面に降ろし、ルキアスは訴えなどお構いなしにルキアスの左腕を引っ張って行く。するとユアがメイナーダを真似るようにルキアスの右手を取って引っ張り出した。こうなるともう振り解くこともできないルキアスは引っ張られるままだ。
そうしてキルシルセッカの屋敷の前にやって来た。
メイナーダに背中を押されつつ呼び鈴を鳴らすと、執事らしき人が屋敷から現れた。
「ご用件を伺います」
「さあ、ルキアスちゃん」
メイナーダがルキアスに小声で囁きながら肘で突いた。
ルキアスはメイナーダを一瞬だけ恨みがましく見る。ここは自分で話すべきだと自覚はあるのでそれだけだ。
ルキアスは執事に告げた。
「ルキアスと申しましゅ。キルシルセッカさんにお取りちゅぎ願いましゅ」
盛大に噛んだ。
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