生活魔法は万能です

浜柔

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462 寄り道

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 陽は大きく傾いていたが、フヨヨンの要望でルキアス一行はラナファーベの町より前にダンジョンの前に下りた。メイナーダが木々を焼いて直ぐには熱気で近寄れなかったこの場所も、今はもう冷めていて降りられる。積もる灰が足を踏み出した拍子に激しく舞った。
 ダンジョンの入口前に立てば洞窟内の様子がはっきりと見えた。ベクロテのダンジョンのような人工物っぽさは無いが、壁は凸凹しながらも滑らかな表面をしていて光ってもいる。昼間の陽の光の下で覗き込むのでもない限りは暗く感じることは無いだろう。

「これは確かにダンジョンだね。こんなのが在ると判っていたならどうして最初からボクを誘ってくれなかったんだい?」

 ルキアスは道すがらフヨヨンにここを目指した理由を説明しているが、人選は説明の範囲外だった。

「ぼくは始め、独りで来るつもりだったから……」

 メイナーダに「一緒に行く」と迫られれば、魔物の大発生時にメイナーダにはメリットの無い頼みをしてしまった手前もあって、心情的に断り切れなかったのだ。後はもう済し崩し増えた。フヨヨンを始めとした深層滞在者を、説明を兼ねた会食に呼ばなかったのはこのダンジョンに来たがるとは思えなかったためだ。

「……そう聞くと怒るに怒れないね。むしろ一人だけ感付いて抜け駆けしようとしたタイラクを問い質すべきかも知れないね」
「おいおい、ルキアスの怪しい様子くらい自分で気付けよ。面倒を見てやる義理は無いぜ」
「……ったく、反論できないから困ったものだよ」

 フヨヨンは矛先を引っ込めた。探索者が頼りにするのは自らの眼力だけなのだ。

「しかしこのダンジョンが忘れ去られた理由は容易に想像できてしまうね」
「どう言うことだ?」
「考えてもみたまえよ。この湿地が大雨で増水したらどうなるかい?」
「あっ!」
「ルキアス君は判ったようだね」
「水没しますよね?」
「そうさ。そうなったらダンジョンから出られなくなる。もしもそれでダンジョンが全て水没するような事態になってみたまえ。一巻の終わりだよ」
「うへぇ……」

 ロマが嫌そうな声を出した。いつかのダンジョンタワー地下の水没を思い出したようだ。

「それじゃ、ここの探索は諦めた方がいいんでしょうか?」
「一概には言えないね。水没するまでには猶予がある筈だから、晴れた日に日帰りや精々一泊の探索なら大丈夫だろうね。危ないのは長期間の滞在さ」

 フヨヨンはここで息を継いだ。

「それよりもっといいのは、ベクロテのダンジョンタワーのように周りを囲んで水が入らないようにすることだね」
「そんな事できるのか?」
「可能か不可能かなら可能だよ。『土魔法』の使い手を動員しても一朝一夕に出来るものじゃないけどね。出資者を募って時間とお金を投入してやっとってところかな」
「まあ、どの道当分は日帰り探索だから、その間にどうにかして貰やいいさ」
「そうですね……」

 ルキアスはタイラクの意見に生返事しつつ、出資者の心当たりを思い浮かべた。
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