生活魔法は万能です

浜柔

文字の大きさ
上 下
461 / 627

461 俺も

しおりを挟む
 ダンジョンタワーに着いて直ぐに、タイラクはダンジョン深層へと向かった。
 ルキアスは居残りだ。幾らタイラクでも今日の間に往復はできないので、無料宿泊所に一泊して帰りを待つ。
 その前にラビット丼で腹ごしらえをしている時だった。

「兄弟? 何でここに居るんだ?」
「ロマさん……」

 別れ際に少ししんみりしたこともあって、ここで会うのは少々気まずいルキアスだ。
 だが会ってしまったものは仕方がない。事情を説明する。

「……ほう。それなら別にフヨヨンでなくてもいいんだな?」
「そうだけど、確実だし、知らない仲でもないから」
「まあ、そうだな。ルキアスの知らないヤツを紹介してもお互いに遠慮しちまうかも知れないな」

 ロマは腕を組んでうんうんと頷いた。そしてやおら身を乗り出す。

「今度は俺も連れてってはくれないか?」
「え!? 行っても大丈夫なの?」

 ロマは深層へと物資輸送の多くを担っている筈だ。そのロマが抜けて大丈夫なのかとルキアスは心配した。

「深層は俺が抜けたくらいでどうにかなるもんじゃないさ。それに行くと言っても今回は場所を確かめたら直ぐに帰って来るつもりだ。道さえ判れば、俺がここからそっちに荷物を運んだっていいし、他に行きたがるヤツが居たら案内もできる。ちょっとした商売のネタになりそうだろ?」

 ロマが大丈夫と言うならルキアスに否やはなかった。




 タイラクは翌日昼頃にフヨヨンを連れて戻って来た。

「新しいダンジョン? いや、忘れられたダンジョンだね。それが見付かったって言うじゃないか。勿論ボクも行くよ」
「お願いします」

 ルキアス達は早速出発した。ラナファーベからベクロテまでと同様に飛べば、まだまだ今日の内に着ける時間だ。

「どうしてロマまで居るんだい?」
「俺と兄弟の仲だからな」
「全然答えになってないよ」

 フヨヨンはジトッと睨むが、ロマはしれっと受け流している。

「……まあ、想像はできるよ。新しい事を始めたルキアスが羨ましくなったんだろう?」

 ロマの顔が微かに歪んだ。
 取り留めもなく話している間にも離陸地点となる広場に到着した。
 粛々とルキアスが『傘』を差して皆が乗り込む。
 全員が乗ったのを確認し、ルキアスが『傘』を飛ばした。『傘』はぐんぐん上昇する。

「お……、お……、お、お、おおおおっ!」

 フヨヨンが奇声と共にテンションを上げた。

「ルキアス! 飛んでるよ! こんなに速く飛んでるよ!」
「ソウデスネ……」

 ルキアスはフヨヨンのテンションにちょっと引いていた。
 そんな横でタイラクはフヨヨンの様子など意識の外に置いたままロマを見ていた。
 ロマは目を瞑って頭を抱え、何やら念仏のようなものを唱え続けていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

処理中です...