生活魔法は万能です

浜柔

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460 ベクロテへと飛んだ

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 翌朝。ルキアスはタイラクと共にベクロテへと飛んだ。ルキアスでは深層に行けないのでタイラクに行って貰うのだ。

「もっと高く飛んでも大丈夫ですか?」
「高かったらどう違うんだ?」
「もっと速く飛べます」

 低高度で速度を上げればちょっとした操作ミスで地上に激突しかねない。立て直す時間を得られないためだ。高度を上げれば速度を上げても地上に達するまでにはそれなりの時間が掛かり、立て直しも可能になる。デメリットは高く飛び過ぎると今どこを飛んでいるのか判らなくなることだが、今この時に限れば『ダンジョンダウジング』を頼りにするだけで迷わない。

「……ならやってくれ」

 タイラクの了承を受け、ルキアスは高度を上げる。雲を突き抜け、真っ青な空を駆けて行く。
 そして徐々に速度を上げる。

「うひょーっ! こいつは凄ぇ!」

 タイラクが歓声を上げる。

「これができるなら最初からやれば良かったんじゃねぇか?」
「どうしてでしょうね。みんなを乗せてるからミスが怖かったのかも……」

 ルキアスはラナファーベ方面へ低高度を飛んだ理由が自分でも判らなかった。

「俺だけだったら怖くないのか?」
「タイラクさんだけならここから落ちても死ななそうじゃありません?」
「十分死ぬって!」

 そう言ってタイラクが可笑しそうに笑うものだから、ルキアスは釣られて笑った。
 そうこうする間にルキアスは『傘』に不可解な抵抗を感じたので加速を止め、巡航に移行する。

「そう言えば、メイナーダさんはツアゾさんについて何か言ってました?」
「おう、言ってたぜ」

『言葉遣いは乱暴だけど、振る舞いはとても紳士だったわ。だから特別な収穫は無しね』

「……ってな」
「特別な収穫……」
「怖ぇだろ?」
「ですね」

 巡航に入ってから約三〇分で『ダンジョンダウジング』の反応が前から返って来るようになった。更に三〇分そのまま進んでから減速に切り替える。高度も徐々に下げて行く。
 ラナファーベに行く時と同じくらいの速度と高度に落ち着いた頃、ベクロテの町並みも視界に入った。

「随分早く着いたな」

 飛び立ってからは三時間ほどしか経っていない。朝は早めにラナファーベを出たのでまだ昼前だ。

「できるだけ急ぎました」

 答えていて自分で何か苦しい言い訳のように感じるルキアスだ。

「そうだな」

 タイラクも何か釈然としないようであった。
 ただ、着陸可能な場所を見付けて降り、歩いてダンジョンタワーに到着した時には昼を大きく回っていた。歩くのに時間が掛かったのである。
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