生活魔法は万能です

浜柔

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457 ルート探し

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 一夜明け、ルキアス達は一階のダイニングで朝食だ。料理はこの宿の主人、口髭男のツアゾの手による。給仕もツアゾだ。通いの従業員は居るが、昨日から暇を出していて今はツアゾ独りだけらしい。

「いい腕してるじゃねぇか。これなら三食ここでもいいぜ」

 タイラクが素直に賞賛した。

「そいつはありがとうよ。で、ダンジョンにはいつ案内してくれるんだ?」
「その事だけど、安全な経路を見付けるまで待って貰えるかしら?」

 メイナーダが答えた。

「ダンジョンを見付けたのが本当なら経路だって判ってるものじゃないか?」
「道無き道を行ったり来たりしながら探したのだから、経路なんて確定できてないわよ」
「だったらこの町までどうやって来た?」
「大体の方角が判れば行き着くでしょう? この近くに他の町が在ったらそっちに着いたかも知れないわね」
「……なるほどな。だが、全部ほらで逃げようってんじゃないだろうな?」
「あら? 料金は支払ってるのだから、あなたに損は無い筈よ?」
「あるさ。あんたらのせいで逃げる準備ができなかったんだからな。本当に天変地異が来たらどうしてくれる?」
「あらあら、それならこうしましょう。経路の調査には内の男達三人で行って貰うわ。わたし達がここに残っていれば安心できるのではない?」
「……まあいいだろう。あんたらはここに残るんだ」
「はいはい。じゃあ、そう言うことでタイラクお願いね」
「しゃーねぇな」

 タイラクがルキアスとザネクを促して宿を出た。

「えーと、大丈夫なんですか?」
「メイナーダにめったな事は無いさ。もしあのオヤジが不埒な事やろうとしても返り討ちにしてそれをネタに宿代の棒引きさせるくらいのもんだろ。もしかしたらそれを狙ってるかも知れねぇぞ?」
「まさかぁ」

 ルキアスとザネクは苦笑いをし、タイラクは戯けたように肩を竦めた。

「ま、やる事はやろうぜ。歩いていける道を探さにゃならんのも確かだしな」
「そうですね」

 『傘』で飛ばなければならないままでは何かと不便だ。ルキアス達は未だ住民が右往左往動き回っている町を出、歩いて東に向かう。ダンジョンはこの町ラナファーベから直線で歩ければ一時間と掛からない距離に在る。町は湿地帯からすればちょっとした高台に在り、町の外れからその下りに入るまでに五分、坂を下って湿地帯の畔に到着するまでに五分程度であった。
 ところが湿地まで来てみると、水に浸っていない場所には湿地林が鬱蒼としている。

「こりゃ、木の間を縫って歩こうと思ったら何が出て来るか判らんぞ。毒虫に刺されでもしたら探索どころじゃなくなる」
「焼き払うって訳にも行かないよな……」
「魔道具って話にしたのに、ここで火柱は上げられないよね」
「他にルートが無いか、一応見てみるか。お前らはあっちを頼む、俺はこっちに行ってみる。一〇分だ」
「判りました」
「おう」

 ルキアス達は左右に分かれて侵入ルートとなる場所を探した。しかし一〇分歩いても湿地林の無いルートは見付からなかった。
 元の場所に戻って報告し合う。

「あんまり遠くにあってもだからな。木をどうにかするしかないな」
「タイラクさんの剣で切れませんか?」
「やってみるしかねぇか」

 タイラクは剣を抜いた。
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