生活魔法は万能です

浜柔

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454 湿地のただ中

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 『ダンジョンダウジング』の反応が逆を向いたのは、国境を越えた翌日の昼過ぎに使った時だった。

「通り過ぎてました。戻ります」

 逆方向に向かい、五分進んで止まっては『ダンジョンダウジング』で方向を確かめるのを繰り返す。これまで一時間間隔だったので最大でも一二回でまた反応が反転する筈だ。
 幾度目かにまた反応が反転した。また飛ぶ向きを変え、今度は一分毎に確かめる。そしてまた一〇秒毎にと、方向転換の度に確かめる間隔を縮めながら場所を絞る。

「この下です」

 そこは湿地ただ中の湿地林であった。

「ここからじゃ見えないな」
「下りてみましょう」
「はい」

 下りると言っても湿地の水面近くまでだ。それも真下は木々に遮られるので少し脇にずれた位置になる。

「それらしいものは見えねぇな」
「ルキアスちゃん、この奥で間違いないのよね?」
「はい」

 再度『ダンジョンダウジング』で方角を確かめても、正面に見える森を指している。

「じゃあ、焼き払っちゃいましょう!」
「ちょっと待って! そんな事して大丈夫なの!?」
「そうですよ! 火事になったりして近くの町や村に被害が出たりしません!?」
「湿地帯なんだから火事なんて直ぐ消えるわよ。町は……、在るかどうか見てみるしかないわね」

 メイナーダは上を指差した。高く上がればどこに町が在るか一目瞭然だ。
 ルキアスはタイラク、ザネク、シャルウィと頷き合い、『傘』を高く上げた。
 上空から見ても湿地帯の果てははっきりしない。ダンジョンが在るだろう場所は湿地帯の西の外れに近いのか、西に湿地帯が途切れる少し小高い土地の上に町らしきものが見える。そこが最も近い町のようだ。他の方角の小高くなった土地にも幾つか町や村が見えるが、西に在る町よりも少し遠い。

「これだけ離れていれば影響なんて出ないでしょ」

 メイナーダは楽観的だ。
 しかし町まではこの意見に誰もが同意するしかない程の距離があるのもまた事実。もっと近くに隠れ里のような村が在る可能性などは言っても詮無きことだ。

「まあ、どうにかしなきゃならんのは確かだしな」
「メイナーダさん、お願いします」
「任せてちょうだい」

 焼き払う範囲を上空から一応確認し、また水面近くに下りる。

「一、二の三で行くわよ。一、二の……」

 メイナーダの合図に一同身構える。

「三! どーん」

 巨大な火柱が立ち上がった。

「あー、どっかで見た光景だ……」
「奇遇だな。俺もそんな気がしたぞ」

 ルキアスの呟きにザネクが相槌を打つが、二人ともダンジョン第一階層で同じものを見ただけだ。

「ねぇ! ねぇ! 本当に大丈夫なの!?」

 シャルウィが予想を超えて巨大だった火柱に一人狼狽えるのだが……。

「まあ、ダンジョンならこれで潰れたりはしないさ」

 タイラクは何でもなさそうに顎を撫でた。

「ダンジョンの心配なんてしてないわよーっ!」

 大規模な自然破壊ではあるが、人里離れた場所だ。咎められるとしたら運が無かった時だろう。
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