454 / 627
454 湿地のただ中
しおりを挟む
『ダンジョンダウジング』の反応が逆を向いたのは、国境を越えた翌日の昼過ぎに使った時だった。
「通り過ぎてました。戻ります」
逆方向に向かい、五分進んで止まっては『ダンジョンダウジング』で方向を確かめるのを繰り返す。これまで一時間間隔だったので最大でも一二回でまた反応が反転する筈だ。
幾度目かにまた反応が反転した。また飛ぶ向きを変え、今度は一分毎に確かめる。そしてまた一〇秒毎にと、方向転換の度に確かめる間隔を縮めながら場所を絞る。
「この下です」
そこは湿地ただ中の湿地林であった。
「ここからじゃ見えないな」
「下りてみましょう」
「はい」
下りると言っても湿地の水面近くまでだ。それも真下は木々に遮られるので少し脇にずれた位置になる。
「それらしいものは見えねぇな」
「ルキアスちゃん、この奥で間違いないのよね?」
「はい」
再度『ダンジョンダウジング』で方角を確かめても、正面に見える森を指している。
「じゃあ、焼き払っちゃいましょう!」
「ちょっと待って! そんな事して大丈夫なの!?」
「そうですよ! 火事になったりして近くの町や村に被害が出たりしません!?」
「湿地帯なんだから火事なんて直ぐ消えるわよ。町は……、在るかどうか見てみるしかないわね」
メイナーダは上を指差した。高く上がればどこに町が在るか一目瞭然だ。
ルキアスはタイラク、ザネク、シャルウィと頷き合い、『傘』を高く上げた。
上空から見ても湿地帯の果てははっきりしない。ダンジョンが在るだろう場所は湿地帯の西の外れに近いのか、西に湿地帯が途切れる少し小高い土地の上に町らしきものが見える。そこが最も近い町のようだ。他の方角の小高くなった土地にも幾つか町や村が見えるが、西に在る町よりも少し遠い。
「これだけ離れていれば影響なんて出ないでしょ」
メイナーダは楽観的だ。
しかし町まではこの意見に誰もが同意するしかない程の距離があるのもまた事実。もっと近くに隠れ里のような村が在る可能性などは言っても詮無きことだ。
「まあ、どうにかしなきゃならんのは確かだしな」
「メイナーダさん、お願いします」
「任せてちょうだい」
焼き払う範囲を上空から一応確認し、また水面近くに下りる。
「一、二の三で行くわよ。一、二の……」
メイナーダの合図に一同身構える。
「三! どーん」
巨大な火柱が立ち上がった。
「あー、どっかで見た光景だ……」
「奇遇だな。俺もそんな気がしたぞ」
ルキアスの呟きにザネクが相槌を打つが、二人ともダンジョン第一階層で同じものを見ただけだ。
「ねぇ! ねぇ! 本当に大丈夫なの!?」
シャルウィが予想を超えて巨大だった火柱に一人狼狽えるのだが……。
「まあ、ダンジョンならこれで潰れたりはしないさ」
タイラクは何でもなさそうに顎を撫でた。
「ダンジョンの心配なんてしてないわよーっ!」
大規模な自然破壊ではあるが、人里離れた場所だ。咎められるとしたら運が無かった時だろう。
「通り過ぎてました。戻ります」
逆方向に向かい、五分進んで止まっては『ダンジョンダウジング』で方向を確かめるのを繰り返す。これまで一時間間隔だったので最大でも一二回でまた反応が反転する筈だ。
幾度目かにまた反応が反転した。また飛ぶ向きを変え、今度は一分毎に確かめる。そしてまた一〇秒毎にと、方向転換の度に確かめる間隔を縮めながら場所を絞る。
「この下です」
そこは湿地ただ中の湿地林であった。
「ここからじゃ見えないな」
「下りてみましょう」
「はい」
下りると言っても湿地の水面近くまでだ。それも真下は木々に遮られるので少し脇にずれた位置になる。
「それらしいものは見えねぇな」
「ルキアスちゃん、この奥で間違いないのよね?」
「はい」
再度『ダンジョンダウジング』で方角を確かめても、正面に見える森を指している。
「じゃあ、焼き払っちゃいましょう!」
「ちょっと待って! そんな事して大丈夫なの!?」
「そうですよ! 火事になったりして近くの町や村に被害が出たりしません!?」
「湿地帯なんだから火事なんて直ぐ消えるわよ。町は……、在るかどうか見てみるしかないわね」
メイナーダは上を指差した。高く上がればどこに町が在るか一目瞭然だ。
ルキアスはタイラク、ザネク、シャルウィと頷き合い、『傘』を高く上げた。
上空から見ても湿地帯の果てははっきりしない。ダンジョンが在るだろう場所は湿地帯の西の外れに近いのか、西に湿地帯が途切れる少し小高い土地の上に町らしきものが見える。そこが最も近い町のようだ。他の方角の小高くなった土地にも幾つか町や村が見えるが、西に在る町よりも少し遠い。
「これだけ離れていれば影響なんて出ないでしょ」
メイナーダは楽観的だ。
しかし町まではこの意見に誰もが同意するしかない程の距離があるのもまた事実。もっと近くに隠れ里のような村が在る可能性などは言っても詮無きことだ。
「まあ、どうにかしなきゃならんのは確かだしな」
「メイナーダさん、お願いします」
「任せてちょうだい」
焼き払う範囲を上空から一応確認し、また水面近くに下りる。
「一、二の三で行くわよ。一、二の……」
メイナーダの合図に一同身構える。
「三! どーん」
巨大な火柱が立ち上がった。
「あー、どっかで見た光景だ……」
「奇遇だな。俺もそんな気がしたぞ」
ルキアスの呟きにザネクが相槌を打つが、二人ともダンジョン第一階層で同じものを見ただけだ。
「ねぇ! ねぇ! 本当に大丈夫なの!?」
シャルウィが予想を超えて巨大だった火柱に一人狼狽えるのだが……。
「まあ、ダンジョンならこれで潰れたりはしないさ」
タイラクは何でもなさそうに顎を撫でた。
「ダンジョンの心配なんてしてないわよーっ!」
大規模な自然破壊ではあるが、人里離れた場所だ。咎められるとしたら運が無かった時だろう。
2
お気に入りに追加
980
あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました
まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。
ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。
変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。
その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。
恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる