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452 焼き餅
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ルキアスは『傘』の上側、若干前寄りを開口部として空を飛ばす。これだと風が少し吹き込むが、吹き込まないように開口部を設けると息苦しくなるので致し方無しだ。
「やっぱルキアスの『傘』は速ぇな」
「前を覆ってるからだよ。ザネクも前を覆えるようになったらもっと速く飛べるよ」
風圧を『傘』で受ければ減速させられないので速く飛べる。
「そうなのか。そうと知ってれば……」
ザネクは上目遣いに考える。
「もしかしてできるの?」
「ん? ああ、できるが、やっぱ無いな。このままルキアス頼むぜ」
「どうして?」
「そりゃ、密室にしちまったら……」
ザネクはちらっとシャルウィに目を向けた。
これに目敏く気付いたのはメイナーダだ。
「男の子なのねぇ」
「どう言うことです?」
「ルキアスちゃんはわたしと仲良くしましょうってことよぉ」
メイナーダはルキアスの腕に腕を絡めた。
「え! ちょっ! ……?」
ルキアスは動揺しつつもメイナーダに抗議しようとしたが、メイナーダの腕から細かな振動が来るのを感じた。
メイナーダの後を見れば、ユアがメイナーダの肩口を膨れっ面でぽかすか叩いている。
「あらあらユアったら焼き餅焼きさんね」
メイナーダはルキアスの腕を放し、ユアの手を取った。
「ねぇ、ユア? ユアはお兄ちゃんのこと大好きよね?」
ユアはこっくりと頷く。
「お嫁さんになりたいのよね?」
ユアはまたこっくりと頷く。
ルキアスは驚愕に顔を歪め、然りとて口を挟むこともできずにメイナーダとユアの二人と前方とで視線を行ったり来たりさせる。
「ママも大好きなユアの大好きなお兄ちゃんと仲良くしたいの。駄目かな?」
ユアは難しい顔で考え込んだ後、首を横に振った。
「ありがとう! ユア大好きよ!」
メイナーダはユアを抱き締める。ユアも抱き締め返した。
「さあ、ユア。今度はユアがアピールする番よ」
メイナーダがユアを嗾けると、ユアは這ってルキアスの前に回り、ルキアスの膝の上に収った。
傍観者でしかない三人は何も言わない。
ルキアスもだ。
「……」
ルキアスはされるがままにしている。そして少し現実逃避をする。
「タイラクさん。今更ですけど、タイラクさんはどうしてぼくの話を信じてくれたんですか?」
「ん? 別に全部を信じちゃいないぜ? だがルキアスが人を騙すようには見えないし、話は面白かったんでな。自分の目で確かめたくなったんだ」
「俺も似たようなもんだぜ」
「ザネクもなんだ? だけど少し安心しました。全部信じられても困ったかも知れないので」
「なら良かった」
「ところで目的地にはいつ頃着きそうなんだ?」
「今のペースだと今日の夕方か明日の午前中に方向が判る程度かな」
「まだ遠いな」
ザネクは退屈そうに言った。
「やっぱルキアスの『傘』は速ぇな」
「前を覆ってるからだよ。ザネクも前を覆えるようになったらもっと速く飛べるよ」
風圧を『傘』で受ければ減速させられないので速く飛べる。
「そうなのか。そうと知ってれば……」
ザネクは上目遣いに考える。
「もしかしてできるの?」
「ん? ああ、できるが、やっぱ無いな。このままルキアス頼むぜ」
「どうして?」
「そりゃ、密室にしちまったら……」
ザネクはちらっとシャルウィに目を向けた。
これに目敏く気付いたのはメイナーダだ。
「男の子なのねぇ」
「どう言うことです?」
「ルキアスちゃんはわたしと仲良くしましょうってことよぉ」
メイナーダはルキアスの腕に腕を絡めた。
「え! ちょっ! ……?」
ルキアスは動揺しつつもメイナーダに抗議しようとしたが、メイナーダの腕から細かな振動が来るのを感じた。
メイナーダの後を見れば、ユアがメイナーダの肩口を膨れっ面でぽかすか叩いている。
「あらあらユアったら焼き餅焼きさんね」
メイナーダはルキアスの腕を放し、ユアの手を取った。
「ねぇ、ユア? ユアはお兄ちゃんのこと大好きよね?」
ユアはこっくりと頷く。
「お嫁さんになりたいのよね?」
ユアはまたこっくりと頷く。
ルキアスは驚愕に顔を歪め、然りとて口を挟むこともできずにメイナーダとユアの二人と前方とで視線を行ったり来たりさせる。
「ママも大好きなユアの大好きなお兄ちゃんと仲良くしたいの。駄目かな?」
ユアは難しい顔で考え込んだ後、首を横に振った。
「ありがとう! ユア大好きよ!」
メイナーダはユアを抱き締める。ユアも抱き締め返した。
「さあ、ユア。今度はユアがアピールする番よ」
メイナーダがユアを嗾けると、ユアは這ってルキアスの前に回り、ルキアスの膝の上に収った。
傍観者でしかない三人は何も言わない。
ルキアスもだ。
「……」
ルキアスはされるがままにしている。そして少し現実逃避をする。
「タイラクさん。今更ですけど、タイラクさんはどうしてぼくの話を信じてくれたんですか?」
「ん? 別に全部を信じちゃいないぜ? だがルキアスが人を騙すようには見えないし、話は面白かったんでな。自分の目で確かめたくなったんだ」
「俺も似たようなもんだぜ」
「ザネクもなんだ? だけど少し安心しました。全部信じられても困ったかも知れないので」
「なら良かった」
「ところで目的地にはいつ頃着きそうなんだ?」
「今のペースだと今日の夕方か明日の午前中に方向が判る程度かな」
「まだ遠いな」
ザネクは退屈そうに言った。
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