生活魔法は万能です

浜柔

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450 こんなことなら

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 手頃な広場を見付けたのは郊外まで歩いた後だった。目立たない場所を選ぼうとするとなかなか見付からない。脇道に入って探せばもっと近くに在ったかも知れないが、無かった時には完全な無駄足になるようなリスクは冒せなかった。

「もうお昼じゃないのよ!」
「先にどこかでお昼を食べてからにしようか?」

 シャルウィの不満な気持ちはルキアスにも解るので提案すると、皆も苦笑交じりで同意した。
 近くの食堂に入って人心地付き、定食を食べる。

「〃「……」〃」

 味は微妙だった。飲食店にも色々あるのだとルキアスが学んだ瞬間だ。

「しっかし、こんなことなら郊外まではバスに乗るんだったな」

 ザネクがぼそりと言った。

「……気付かなかったよ」
「どこまで歩くかはっきりしなかったから仕方ないわ」
「だな。ベクロテって思ったよりでかかったしな」
「あら、この辺りはもうベクロテじゃない筈よ?」
「街並みは途切れてなかったよな?」
「ええ。ベクロテが大きくなり過ぎて隣町まで吸収しちゃったみたいね」

 そしてメイナーダは「ダンジョンって凄いわね」とまとめた。
 食堂を出て広場に行き、『傘』に乗り込む。

「ルキアス、どっちに飛べばいい?」
「取り敢えずは真っ直ぐ南にお願い」

 『ダンジョンダウジング』はベクロテより目的のダンジョンが近くならなければ目的地を指さないので、今は正確な方角が判らないのだ。ここからなら東寄りの南に位置する筈だが、どの程度東かが判らない。下手に東に行ってしまうより真っ直ぐ南に行く方が間違いが起きないと思われた。

「おう。第四階層で練習した『傘』の腕を見せてやるぜ」
「期待してるよ!」

 ルキアスとザネクが『傘』を差して乗り込み、ルキアスの『傘』にはメイナーダ、ユア、タイラクが、ザネクの『傘』にはシャルウィが乗り込んだ。事前の話でそう決めてはいたが、シャルウィは当然のようにザネクの『傘』に乗り込む。その様子にメイナーダがによによしているのをルキアスは見た。……が、見なかったことにした。
 そして二つの『傘』は飛び立った。
 ルキアスは念のためにザネクの後ろ、斜め下を飛ぶよう心懸けた。この位置なら彼の『傘』に何か起きても対処可能だ。

「しっかし、この『傘』ってのも速いもんだな」

 タイラクが感心するように言った。今の速度は早馬並みで、街道を無視して真っ直ぐ進めるのだから普通に馬車に揺られるより数倍の速さとなる。
 ただこれは『傘』で全周を覆っておらず、ルキアスやザネクが風圧を受けて速度が頭打ちになってのものだ。全周を覆えば風圧を受けなくなるので理論的には速度に上限が無くなる。
 とは言え速く飛べばそれだけ制御が難しくなるので今くらいの速さがちょうど良いだろうとルキアスは考える。

「景色もいいですよ」

 だから少しだけ話をずらした。
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