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444 会食
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昨日の今日でありながら、キルシルセッカは参加の意思と会食会場と料理人、リザード先生肉以外の食材の手配を申し出てくれた。これが無ければ地下二階の炊事場で串焼きパーティーになっただろう。ルキアスにどこかの店を借りようとする甲斐性は無いし、仮にあってもルキアスのようなどこの誰かも判らない相手に飛び込み同然で貸す店など無かったに違いない。
午前中に肉を『捏ね』ていたルキアスは昼頃にキルシルセッカからの連絡を受け、その足で会食会場へと行った。会場は少人数のパーティーを催すための貸部屋だった。
そこで料理人に肉を渡した後、一旦そこを出てホームセンターでテント布、鍋などの調理道具、それに食器類を見繕った後、ダンジョンタワーに戻ってデナン達やダンと合流、また会食の会場へと向かった。
ところが会場に着いてみれば待ち構えている人が居た。
「よう、ルキアス、話をしっかり訊かせて貰うぞ」
「タイラクさん、どうしてここに?」
ルキアスは呼んでいない。タイラクはリザード先生肉を既に鱈腹食べたのだし、旅に同行する予定でもないのだ。
「勘だ。……と言うのは嘘で、跡を付けさせて貰った。ルキアスが行くのは大陸の反対側に在るダンジョンじゃないんだろ?」
「勘」と言った時にルキアスの胡散臭げに変わったのに気付いてか、タイラクは言い直したが、褒められた理由ではなかった。
だがルキアスは付け加えられた話の方に気を取られてしまう。
「え……?」
「『どうして?』って顔だな? そんなもん、隠し事をしているような顔をしてるからだ」
「えっ!?」
ルキアスは思わず顔を触った。
するとタイラクにニヤリと笑う。半ば鎌掛けだったとそれで気付いて仄かに悔しく感じたルキアスだ。
「……わかりました」
話をするのは会食後にメイナーダ、ザネク、リュミア、エリリース、それにキルシルセッカにのみと考えていたルキアスだが、出席者全員に話すしかなさそうなので食事中にしようと考え直した。
すっかり誤魔化されたルキアスである。
やがて、メイナーダとユア、ザネクとリュミア、エリリースとキルシルセッカとその家族、ハーベイ、シャルウィとその母ウィルミ、それにロマも来た。
人数に合わせて席を調整し、それぞれに席に着く。デナン達は借りてきた猫のように小さくなっている。タイラクやメイナーダの居る席ではやはり落ち着けないようだ。
しかしその緊張も料理が運ばれてくる時までだった。
料理は前菜からローストリザード先生のサラダと、リザード先生肉のフルコースだ。一口食べた途端に緊張などかなぐり捨てて食べることに集中する。
しかしそれは他の参加者も似たようなものだった。会場はナイフやフォークが皿を叩く音、誰かの咀嚼音、そして時折お代わりを依頼する声がするだけで皆料理に集中している。
ルキアスも言うに及ばず食べることに集中し、食事中に話をしようとしたことなど頭から飛んでいた。
午前中に肉を『捏ね』ていたルキアスは昼頃にキルシルセッカからの連絡を受け、その足で会食会場へと行った。会場は少人数のパーティーを催すための貸部屋だった。
そこで料理人に肉を渡した後、一旦そこを出てホームセンターでテント布、鍋などの調理道具、それに食器類を見繕った後、ダンジョンタワーに戻ってデナン達やダンと合流、また会食の会場へと向かった。
ところが会場に着いてみれば待ち構えている人が居た。
「よう、ルキアス、話をしっかり訊かせて貰うぞ」
「タイラクさん、どうしてここに?」
ルキアスは呼んでいない。タイラクはリザード先生肉を既に鱈腹食べたのだし、旅に同行する予定でもないのだ。
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だがルキアスは付け加えられた話の方に気を取られてしまう。
「え……?」
「『どうして?』って顔だな? そんなもん、隠し事をしているような顔をしてるからだ」
「えっ!?」
ルキアスは思わず顔を触った。
するとタイラクにニヤリと笑う。半ば鎌掛けだったとそれで気付いて仄かに悔しく感じたルキアスだ。
「……わかりました」
話をするのは会食後にメイナーダ、ザネク、リュミア、エリリース、それにキルシルセッカにのみと考えていたルキアスだが、出席者全員に話すしかなさそうなので食事中にしようと考え直した。
すっかり誤魔化されたルキアスである。
やがて、メイナーダとユア、ザネクとリュミア、エリリースとキルシルセッカとその家族、ハーベイ、シャルウィとその母ウィルミ、それにロマも来た。
人数に合わせて席を調整し、それぞれに席に着く。デナン達は借りてきた猫のように小さくなっている。タイラクやメイナーダの居る席ではやはり落ち着けないようだ。
しかしその緊張も料理が運ばれてくる時までだった。
料理は前菜からローストリザード先生のサラダと、リザード先生肉のフルコースだ。一口食べた途端に緊張などかなぐり捨てて食べることに集中する。
しかしそれは他の参加者も似たようなものだった。会場はナイフやフォークが皿を叩く音、誰かの咀嚼音、そして時折お代わりを依頼する声がするだけで皆料理に集中している。
ルキアスも言うに及ばず食べることに集中し、食事中に話をしようとしたことなど頭から飛んでいた。
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