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438 南西
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「そうか。ここの深層の探索者ならダンジョンから溢れた魔物を倒せるんだね?」
「……結果的にそうなるやも知れぬが、当初の目的は無主のダンジョンを攻略して主となる人材の確保じゃ」
「今は違うの?」
「別に目的は変えておらぬが、ここの連中と来たらこのダンジョンに拘泥しておるからのう。このダンジョンの攻略はできぬし、仮にできてもして貰う訳には行かぬ。じゃから強力な魔物によって事実上攻略不可能にしておるのじゃが、それをここの連中が諦めよらん。無主のダンジョンなら攻略もできようにのぅ」
「……だけど、他のダンジョンに行くとしても遠いんじゃない?」
「遠いと言えば遠いのじゃ」
ヨーコは何かを思い浮かべるように中を睨んだ。
「ダンジョンはこの大陸の中央を中心とする円を描くよう配置されておる。中心からの方角で言うなら北東、東、南東、南、南西、西、北西じゃ。これじゃと北に無いようじゃが、ダンジョンは等間隔に在って大陸を方角で分割した時にたまたま北の範囲に無いだけじゃ。そして北東が人に知られておる一つでぐうたら女神が管理しておる。天ぷら女神が管理するのが東で、南東が人に知られておるもう一つじゃ。我のダンジョンは西に位置しておるで、大陸の反対側と言えようの」
「それ、行くだけで何ヶ月も何年も掛からない?」
「歩く前提で考えるでないわ。バスを乗り継げば半月程じゃろう」
「……それでも十分長い日数だよ」
「そうかも知れぬが、おぬしならもっと短期間で行けようがの?」
「無理だよ!」
「『傘』じゃ。飛んで行けばバスより速かろう」
「あっ!」
魔法は地上でだって使える。そして地上なら壁も天井も気にせず『傘』で飛べるのだ。スピードも出し放題である。
「……だけどそんな話をするってことは、ぼくにそこに行けってこと?」
「当たらずとも遠からずじゃ。行って貰いたいのはもっと近場の南西じゃ。北西や南はダンジョンとは気付かぬまま人の出入りがあるのじゃが、南西はそれも無い。放置しておれば魔物が溢れても誰も気付かず、手遅れになろう」
「溢れ出して直ぐなら間に合うってこと?」
「うむ。その段階で発見できればここの深層組が出向くことで対処できよう」
「ぼくは監視係なんだ?」
「うむ。そう取って貰って構わぬ」
「……」
ルキアスは天を仰いで身の振り方を考えた。
そして溜め息一つ。
「はあ……、ぼく以外に行く人居ないんだよね?」
「うむ。我の言葉に耳を傾けたのはおぬしのみじゃからな」
「……判った。行くよ」
「おお! 行ってくれるか!」
「だけど場所を教えて貰わないと無理だよ?」
「うむ。そのための有用な魔法を一つ進ぜよう」
そう言ってヨーコがルキアスの額に手を当てると、ルキアスは額から何かがずるっと頭に入り込むような感覚を覚えた。
「『ダンジョンダウジング』じゃ。最も近いダンジョンの方角を感知できる魔法じゃ」
「えーと、『ダンジョンダウジング』? ……うわっ!」
ルキアスは試してみた途端、クワンと目眩に襲われた。
「ダンジョンの中で使うからじゃ」
「だよね……」
試した後で気付くルキアスであった。
「……結果的にそうなるやも知れぬが、当初の目的は無主のダンジョンを攻略して主となる人材の確保じゃ」
「今は違うの?」
「別に目的は変えておらぬが、ここの連中と来たらこのダンジョンに拘泥しておるからのう。このダンジョンの攻略はできぬし、仮にできてもして貰う訳には行かぬ。じゃから強力な魔物によって事実上攻略不可能にしておるのじゃが、それをここの連中が諦めよらん。無主のダンジョンなら攻略もできようにのぅ」
「……だけど、他のダンジョンに行くとしても遠いんじゃない?」
「遠いと言えば遠いのじゃ」
ヨーコは何かを思い浮かべるように中を睨んだ。
「ダンジョンはこの大陸の中央を中心とする円を描くよう配置されておる。中心からの方角で言うなら北東、東、南東、南、南西、西、北西じゃ。これじゃと北に無いようじゃが、ダンジョンは等間隔に在って大陸を方角で分割した時にたまたま北の範囲に無いだけじゃ。そして北東が人に知られておる一つでぐうたら女神が管理しておる。天ぷら女神が管理するのが東で、南東が人に知られておるもう一つじゃ。我のダンジョンは西に位置しておるで、大陸の反対側と言えようの」
「それ、行くだけで何ヶ月も何年も掛からない?」
「歩く前提で考えるでないわ。バスを乗り継げば半月程じゃろう」
「……それでも十分長い日数だよ」
「そうかも知れぬが、おぬしならもっと短期間で行けようがの?」
「無理だよ!」
「『傘』じゃ。飛んで行けばバスより速かろう」
「あっ!」
魔法は地上でだって使える。そして地上なら壁も天井も気にせず『傘』で飛べるのだ。スピードも出し放題である。
「……だけどそんな話をするってことは、ぼくにそこに行けってこと?」
「当たらずとも遠からずじゃ。行って貰いたいのはもっと近場の南西じゃ。北西や南はダンジョンとは気付かぬまま人の出入りがあるのじゃが、南西はそれも無い。放置しておれば魔物が溢れても誰も気付かず、手遅れになろう」
「溢れ出して直ぐなら間に合うってこと?」
「うむ。その段階で発見できればここの深層組が出向くことで対処できよう」
「ぼくは監視係なんだ?」
「うむ。そう取って貰って構わぬ」
「……」
ルキアスは天を仰いで身の振り方を考えた。
そして溜め息一つ。
「はあ……、ぼく以外に行く人居ないんだよね?」
「うむ。我の言葉に耳を傾けたのはおぬしのみじゃからな」
「……判った。行くよ」
「おお! 行ってくれるか!」
「だけど場所を教えて貰わないと無理だよ?」
「うむ。そのための有用な魔法を一つ進ぜよう」
そう言ってヨーコがルキアスの額に手を当てると、ルキアスは額から何かがずるっと頭に入り込むような感覚を覚えた。
「『ダンジョンダウジング』じゃ。最も近いダンジョンの方角を感知できる魔法じゃ」
「えーと、『ダンジョンダウジング』? ……うわっ!」
ルキアスは試してみた途端、クワンと目眩に襲われた。
「ダンジョンの中で使うからじゃ」
「だよね……」
試した後で気付くルキアスであった。
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