437 / 627
437 七つ
しおりを挟む
「少し込み入った話になるが良いか?」
ルキアスは頷いた。
「この世界には七つのダンジョンが在る」
「七つ?」
「一般に知られておるのは三つじゃが、他に四つじゃ。そしてこの七つの内、我が主を務めるこのダンジョンを含め、三つのみに主が居る」
「じゃあ、知られているダンジョンにだけ主が居るってこと?」
ヨーコは首を横に振った。
「知られているダンジョンで主が居るのは我が主を務めるこのダンジョンとぐうたら女神が主を務めるダンジョンじゃ。天ぷら女神のダンジョンは封鎖されておる上に知られてもおらん」
「そうなんだ……」
「まあ女神はどうでも良い。問題は主の居らぬ四つじゃ。これを放置しておれば魔物が溢れ出して世界を覆い尽くしかねん」
「え!?」
「今日明日に滅びる訳ではないがの」
「何だ、びっくりした……」
「じゃが、魔物が溢れるだけなら明日にも起きて不思議ではない」
「止められないの?」
「主が居れば止められよう。じゃが居らぬでは止められぬ」
「それなら誰かが主になれば……、もしかしてヨーコが捜してたのは主候補!?」
「おぬしの実力で主になれる筈も……」
ヨーコは反論の途中でびっくりしたように目を見開いてルキアスを見た。
「……なるほど我の行動はそう見えるものじゃな。いや、きっとそうだったのじゃな」
そして切なげにする。
「違う……の?」
「いつの頃からか誰かに話を聞いて欲しいだけになっておったのじゃな……」
ルキアスは掛ける言葉が見付からなかった。だが暫くするとヨーコは鼻息荒く顔を上げた。
「じゃがこうなれば全て聞いて貰うのじゃ! 覚悟しておれ!」
「う、うん……」
「うむ。それで良い」
ルキアスは渋々頷いただけだが、ヨーコはそれで満足のようだ。余程聞いて欲しかったらしい。
「この世界は神に守られておる。そして神はダンジョンの主を兼ねておる」
ルキアスは神のイメージから程遠いヨーコを凝視するが、話の腰を折ってはいけないと考えて自重した。
「じゃが、今居る神はこの世界を創った神ではない。じゃから何故ダンジョンが七つかも判らぬ。確かなのはこの世界には神ですら抗えぬ法則があると言うことじゃ。
そしてこの世界は破壊と再生を繰り返しておる。その再生から破壊までを一つの時代と表現するなら、時代の始めに神は一柱しか居らぬ。今代は始めから二柱が存在するイレギュラーのようじゃがな。
ともあれ残る六柱には始めの一柱が司るものとは別のダンジョンを攻略した者が成る。
じゃが、神が七柱揃えば次に神同士の殺し合いが始まる。そしてその殺し合いで生き残った神が破壊と再生を行い、次代の始めの一柱となるのじゃ」
「どうしてそこで殺し合いに?」
「これはぐうたら女神の推測じゃがな、神とて元は人間じゃから孤独に堪えられずに消えて無くなりたくなるからじゃと言うておった。消えて無くなりたくとも神は自死が出来ぬ。じゃから別の神を育て、自らを殺してくれるようし向けるのじゃとな」
「それって神様の自殺に世界が巻き込まれるってこと!?」
「そうじゃ。じゃが今代の始めの神、天ぷら女神なのじゃが、ぐうたら女神と二柱で今も楽しく過ごしておるので神同士の戦いを心配する必要は無い」
「良かった……」
「じゃが、それはそれで問題があったのじゃ。話の最初に戻るのじゃが、無主で放置されたダンジョンもダンジョンじゃ。次第に魔力を高めて無限に魔物を生み出すようになる。そうなってしまえば地上へと魔物が溢れ、溢れた魔物で世界が蹂躙されてしまうのじゃ。それを抑えるにはダンジョンの主を宛てがわねばならぬ。じゃが生半な者では務まらぬし攻略さえも覚束ぬ。故に我のダンジョンで候補となる者を育てておるのじゃ」
「あれ? でもそれってヨーコがやらなくても、始めの神様がやればいいことなんじゃ?」
「そうなのじゃがのぅ。天ぷら女神めは魔物に蹂躙されるならその時と考えておるのじゃ」
「なんで!? 守ってるんじゃないの!?」
「魔物に蹂躙されれば世界は振り出しに戻すことも可能らしいのじゃ。今代の始めにじゃがな。恐らくじゃが、天ぷら女神めは既に亡き過去の者達を懐かしんでおるのじゃろう」
「ええ!? だけど、だとしても、今生きている人達が消えていいってことにはならないよね?」
「うむ。じゃから我はこのダンジョンの在り方をこうしておるのじゃ」
ヨーコは世界を救おうとしているらしかった。
ルキアスは頷いた。
「この世界には七つのダンジョンが在る」
「七つ?」
「一般に知られておるのは三つじゃが、他に四つじゃ。そしてこの七つの内、我が主を務めるこのダンジョンを含め、三つのみに主が居る」
「じゃあ、知られているダンジョンにだけ主が居るってこと?」
ヨーコは首を横に振った。
「知られているダンジョンで主が居るのは我が主を務めるこのダンジョンとぐうたら女神が主を務めるダンジョンじゃ。天ぷら女神のダンジョンは封鎖されておる上に知られてもおらん」
「そうなんだ……」
「まあ女神はどうでも良い。問題は主の居らぬ四つじゃ。これを放置しておれば魔物が溢れ出して世界を覆い尽くしかねん」
「え!?」
「今日明日に滅びる訳ではないがの」
「何だ、びっくりした……」
「じゃが、魔物が溢れるだけなら明日にも起きて不思議ではない」
「止められないの?」
「主が居れば止められよう。じゃが居らぬでは止められぬ」
「それなら誰かが主になれば……、もしかしてヨーコが捜してたのは主候補!?」
「おぬしの実力で主になれる筈も……」
ヨーコは反論の途中でびっくりしたように目を見開いてルキアスを見た。
「……なるほど我の行動はそう見えるものじゃな。いや、きっとそうだったのじゃな」
そして切なげにする。
「違う……の?」
「いつの頃からか誰かに話を聞いて欲しいだけになっておったのじゃな……」
ルキアスは掛ける言葉が見付からなかった。だが暫くするとヨーコは鼻息荒く顔を上げた。
「じゃがこうなれば全て聞いて貰うのじゃ! 覚悟しておれ!」
「う、うん……」
「うむ。それで良い」
ルキアスは渋々頷いただけだが、ヨーコはそれで満足のようだ。余程聞いて欲しかったらしい。
「この世界は神に守られておる。そして神はダンジョンの主を兼ねておる」
ルキアスは神のイメージから程遠いヨーコを凝視するが、話の腰を折ってはいけないと考えて自重した。
「じゃが、今居る神はこの世界を創った神ではない。じゃから何故ダンジョンが七つかも判らぬ。確かなのはこの世界には神ですら抗えぬ法則があると言うことじゃ。
そしてこの世界は破壊と再生を繰り返しておる。その再生から破壊までを一つの時代と表現するなら、時代の始めに神は一柱しか居らぬ。今代は始めから二柱が存在するイレギュラーのようじゃがな。
ともあれ残る六柱には始めの一柱が司るものとは別のダンジョンを攻略した者が成る。
じゃが、神が七柱揃えば次に神同士の殺し合いが始まる。そしてその殺し合いで生き残った神が破壊と再生を行い、次代の始めの一柱となるのじゃ」
「どうしてそこで殺し合いに?」
「これはぐうたら女神の推測じゃがな、神とて元は人間じゃから孤独に堪えられずに消えて無くなりたくなるからじゃと言うておった。消えて無くなりたくとも神は自死が出来ぬ。じゃから別の神を育て、自らを殺してくれるようし向けるのじゃとな」
「それって神様の自殺に世界が巻き込まれるってこと!?」
「そうじゃ。じゃが今代の始めの神、天ぷら女神なのじゃが、ぐうたら女神と二柱で今も楽しく過ごしておるので神同士の戦いを心配する必要は無い」
「良かった……」
「じゃが、それはそれで問題があったのじゃ。話の最初に戻るのじゃが、無主で放置されたダンジョンもダンジョンじゃ。次第に魔力を高めて無限に魔物を生み出すようになる。そうなってしまえば地上へと魔物が溢れ、溢れた魔物で世界が蹂躙されてしまうのじゃ。それを抑えるにはダンジョンの主を宛てがわねばならぬ。じゃが生半な者では務まらぬし攻略さえも覚束ぬ。故に我のダンジョンで候補となる者を育てておるのじゃ」
「あれ? でもそれってヨーコがやらなくても、始めの神様がやればいいことなんじゃ?」
「そうなのじゃがのぅ。天ぷら女神めは魔物に蹂躙されるならその時と考えておるのじゃ」
「なんで!? 守ってるんじゃないの!?」
「魔物に蹂躙されれば世界は振り出しに戻すことも可能らしいのじゃ。今代の始めにじゃがな。恐らくじゃが、天ぷら女神めは既に亡き過去の者達を懐かしんでおるのじゃろう」
「ええ!? だけど、だとしても、今生きている人達が消えていいってことにはならないよね?」
「うむ。じゃから我はこのダンジョンの在り方をこうしておるのじゃ」
ヨーコは世界を救おうとしているらしかった。
1
お気に入りに追加
823
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜
とかげになりたい僕
ファンタジー
不慮の事故で死んだ俺は、女神の力によって転生することになった。
「どんな感じで転生しますか?」
「モテモテな人生を送りたい! あとイケメンになりたい!」
そうして俺が転生したのは――
え、ここBLゲームの世界やん!?
タチがタチじゃなくてネコはネコじゃない!? オネェ担任にヤンキー保健医、双子の兄弟と巨人後輩。俺は男にモテたくない!
女神から「クリアすればもう一度転生出来ますよ」という暴言にも近い助言を信じ、俺は誰とも結ばれないバッドエンドをクリアしてみせる! 俺の操は誰にも奪わせはしない!
このお話は小説家になろう、カクヨムでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる