生活魔法は万能です

４３４ 空気銃作製

　翌日の夜。ルキアスはフヨヨンから報酬の工具一式を受け取った。フヨヨンが一日掛かりで作成したもので、旋盤などは蒸気機関を動力としている。アダマント製の工具の使い心地を兼ねてのものだったらしく、良い笑顔を浮かべていた。
　そんな訳で、更にその翌日からルキアスは空気銃の作成に取り掛かった。
　手始めに空気銃のモックアップを元に設計図を描く。フヨヨンに貰ったノギスで寸法を細かく測って図に起こす。図が多少ずれたって構いはしない。寸法さえ間違えなければ良い。無論、図にずれが無い方が見間違いが起きないので可能な限り合わせる努力はする。
　設計図を描き終えたら、それに従って鉄で金型を作る。この段階で形をしっかり作れば後々の手直しが少なくて済む。
　精度が求められる場合は金型も『捏ね』て仕舞わないよう気を付けながら金型に直接鉄を『捏ね』付けて成型する。金型を外す時は金型を『捏ね』て柔らかくして外すので失敗したら金型からやり直しだ。
　精度がそこまで求められない場合は油紙を挟んで鉄を『捏ね』付ける。これなら金型を『捏ね』なくとも引き抜けるのが期待できる。引き抜けない時もあるので過信はできない。
　いずれにしろ型を抜いた後で旋盤やフライス盤で形を整え、ボール盤で穴を空けて部品を完成させる。
　弾倉は六発装填のシリンダー型だ。工具を使うことで工作精度も上がり、実現可能となった。
　発射時の威力は二〇弾相当にした。二〇弾相当でもタンクのチャージ一回で五〇発近く撃てる。、フヨヨンが用意してくれた五つのタンクを駆使すれば低階層の探索の一日分を賄えるだろう。
　グリップに使う革は防具職人のホーカーに作って貰った。
　そうして完成したのは五日後だ。

（意外に早くできた！）

　工具の効果は十分に発揮されていた。
　試射の結果も良好だ。ただタンクと銃身を近接させて噴出口をタンク側に向けた都合上、ハンマーを押してセットすることになり、ライフルとは動作が逆なのと、発射時に銃床を支える肩への衝撃が一回余分に来るのが玉に瑕であった。
　そしてその夜のこと。ルキアスの部屋をロマが訪ねて来た。

「よう、兄弟。魔物の大発生からそろそろ一ヶ月半だ。メイを捜してた連中も落ち着いて来たようだから上に戻るなら戻れるぞ」
「ほんと!?」

　別に疑っている訳ではないが、念を押したいのが人情だ。

「ほんとだとも。兄弟にはここでやり残した事は無いか？」
「えっと……」

　ルキアスは考えるが、この階層で探索する訳にも行かないとなればやり残した事と言うよりできる事が無い。

「無いかな」
「そんじゃ早い目に帰れるように話を付けるとしよう」
「うん。お願い」

　メイナーダやこの拠点に住む探索者達に知らせる意味もあるのだ。