427 / 627
427 これを見たまえ
しおりを挟む
更に五日。深層に来て早二〇日が経ち、ルキアスは『捏ね』る毎日を送っている。
「ルキアス、こっち頼む!」
「ルキアス、こっちもだ!」
「はいはーい!」
ルキアスが『捏ね』れば魔物の解体が楽になり、肉も食べられると判ると、今まで乱雑に切り刻んで魔石や必要な素材を切り出していた解体手順が整理された。特に肉に無駄が出ないよう解体されるようになった。
しかしそれはルキアスが滞在する間の短い期間で終わる。それで皆が少しでも多くと思うのか、ルキアスはせっつかれるようにして走り回ることになっている。
だから蒸気銃の改造は進んでいない。フヨヨンが蒸気ポンプを完成させる前に蒸気銃の形を整えようと思っていたルキアスだったが、『捏ね』て回って夜ともなるとかなり疲れている。勢い早めに寝てしまうのだ。
そんな夕方のこと。ルキアスが一日の仕事を終えて夕食に向かったところにフヨヨンが来た。
「ルキアス、これを見たまえ!」
フヨヨンは四角いフレームに円柱を三つ並べて填め込んだような装置を差し出した。幅は肩幅程度、高さは幅の三分の二程度、奥行きは幅の三分の一程度で、幅を四分割した三つに円柱状の何かが在り、残る一つには金具が付いている。
「これが蒸気ポンプだ!」
「おおーっ!」
ルキアスは小さく拍手した。
「随分早く出来ましたね?」
「そりゃあ、ボクだからね」
フヨヨンは得意げに鼻を鳴らして反り返る。
「早速試してみようじゃないか」
「はい!」
フヨヨンが蒸気ポンプを地面に置き、先端にピンが付いたタンクを取り付ける。タンクはポンプの高さの半分程度の長さだ。
「このタンクは満タンで七、八発撃てるからね」
「おおー」
蒸気銃は単発でしか撃てなかったから段違いの性能だ。
「但しチャージに時間が掛かるのには注意したまえよ」
「ええ……」
全てが都合良くはならないようだ。
「そしてどのくらいの時間が必要かは今からする実験次第さ」
「まだ動かしてないんですか?」
「当たり前じゃないか。ルキアスの『加熱』次第で性能が変わるんだからね。ルキアスが動かさなけりゃ、調整もできないよ」
「確かに……」
「ところで『湧水』は使えるね?」
「はい」
「よろしい。まずは釜の蓋を外して『湧水』で水を半分くらい入れて蓋を閉めてくれたまえ」
ルキアスがフヨヨンが指す円柱、タンクを取り付けたのとは反対側の端に在る円柱を見れば、下部が丸くなってフレームから浮いており、上部にネジ止めの蓋が付いている。その蓋を外して内側を見ると、何かの革らしきものが張り付けられていた。
「この革は?」
「パッキンだね。気密性を確保するためにパーツだよ。ルキアスが『捏ね』たリザード大将の皮が都合良さそうだったから革に鞣して使ったんだ」
「ふおお……」
ルキアスは変な声を漏らす。どこで何が役に立つか判らないものである。
「ルキアス、こっち頼む!」
「ルキアス、こっちもだ!」
「はいはーい!」
ルキアスが『捏ね』れば魔物の解体が楽になり、肉も食べられると判ると、今まで乱雑に切り刻んで魔石や必要な素材を切り出していた解体手順が整理された。特に肉に無駄が出ないよう解体されるようになった。
しかしそれはルキアスが滞在する間の短い期間で終わる。それで皆が少しでも多くと思うのか、ルキアスはせっつかれるようにして走り回ることになっている。
だから蒸気銃の改造は進んでいない。フヨヨンが蒸気ポンプを完成させる前に蒸気銃の形を整えようと思っていたルキアスだったが、『捏ね』て回って夜ともなるとかなり疲れている。勢い早めに寝てしまうのだ。
そんな夕方のこと。ルキアスが一日の仕事を終えて夕食に向かったところにフヨヨンが来た。
「ルキアス、これを見たまえ!」
フヨヨンは四角いフレームに円柱を三つ並べて填め込んだような装置を差し出した。幅は肩幅程度、高さは幅の三分の二程度、奥行きは幅の三分の一程度で、幅を四分割した三つに円柱状の何かが在り、残る一つには金具が付いている。
「これが蒸気ポンプだ!」
「おおーっ!」
ルキアスは小さく拍手した。
「随分早く出来ましたね?」
「そりゃあ、ボクだからね」
フヨヨンは得意げに鼻を鳴らして反り返る。
「早速試してみようじゃないか」
「はい!」
フヨヨンが蒸気ポンプを地面に置き、先端にピンが付いたタンクを取り付ける。タンクはポンプの高さの半分程度の長さだ。
「このタンクは満タンで七、八発撃てるからね」
「おおー」
蒸気銃は単発でしか撃てなかったから段違いの性能だ。
「但しチャージに時間が掛かるのには注意したまえよ」
「ええ……」
全てが都合良くはならないようだ。
「そしてどのくらいの時間が必要かは今からする実験次第さ」
「まだ動かしてないんですか?」
「当たり前じゃないか。ルキアスの『加熱』次第で性能が変わるんだからね。ルキアスが動かさなけりゃ、調整もできないよ」
「確かに……」
「ところで『湧水』は使えるね?」
「はい」
「よろしい。まずは釜の蓋を外して『湧水』で水を半分くらい入れて蓋を閉めてくれたまえ」
ルキアスがフヨヨンが指す円柱、タンクを取り付けたのとは反対側の端に在る円柱を見れば、下部が丸くなってフレームから浮いており、上部にネジ止めの蓋が付いている。その蓋を外して内側を見ると、何かの革らしきものが張り付けられていた。
「この革は?」
「パッキンだね。気密性を確保するためにパーツだよ。ルキアスが『捏ね』たリザード大将の皮が都合良さそうだったから革に鞣して使ったんだ」
「ふおお……」
ルキアスは変な声を漏らす。どこで何が役に立つか判らないものである。
4
お気に入りに追加
980
あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

忠犬ポチは、異世界でもお手伝いを頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
私はポチ。前世は豆柴の女の子。
前世でご主人様のりっちゃんを悪い大きな犬から守ったんだけど、その時に犬に噛まれて死んじゃったんだ。
でもとってもいい事をしたって言うから、神様が新しい世界で生まれ変わらせてくれるんだって。
新しい世界では、ポチは犬人間になっちゃって孤児院って所でみんなと一緒に暮らすんだけど、孤児院は将来の為にみんな色々なお手伝いをするんだって。
ポチ、色々な人のお手伝いをするのが大好きだから、頑張ってお手伝いをしてみんなの役に立つんだ。
りっちゃんに会えないのは寂しいけど、頑張って新しい世界でご主人様を見つけるよ。
……でも、いつかはりっちゃんに会いたいなあ。
※カクヨム様、アルファポリス様にも投稿しています

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました
まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。
ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。
変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。
その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。
恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる