生活魔法は万能です

浜柔

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427 これを見たまえ

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 更に五日。深層に来て早二〇日が経ち、ルキアスは『捏ね』る毎日を送っている。

「ルキアス、こっち頼む!」
「ルキアス、こっちもだ!」
「はいはーい!」

 ルキアスが『捏ね』れば魔物の解体が楽になり、肉も食べられると判ると、今まで乱雑に切り刻んで魔石や必要な素材を切り出していた解体手順が整理された。特に肉に無駄が出ないよう解体されるようになった。
 しかしそれはルキアスが滞在する間の短い期間で終わる。それで皆が少しでも多くと思うのか、ルキアスはせっつかれるようにして走り回ることになっている。
 だから蒸気銃の改造は進んでいない。フヨヨンが蒸気ポンプを完成させる前に蒸気銃の形を整えようと思っていたルキアスだったが、『捏ね』て回って夜ともなるとかなり疲れている。勢い早めに寝てしまうのだ。
 そんな夕方のこと。ルキアスが一日の仕事を終えて夕食に向かったところにフヨヨンが来た。

「ルキアス、これを見たまえ!」

 フヨヨンは四角いフレームに円柱を三つ並べて填め込んだような装置を差し出した。幅は肩幅程度、高さは幅の三分の二程度、奥行きは幅の三分の一程度で、幅を四分割した三つに円柱状の何かが在り、残る一つには金具が付いている。

「これが蒸気ポンプだ!」
「おおーっ!」

 ルキアスは小さく拍手した。

「随分早く出来ましたね?」
「そりゃあ、ボクだからね」

 フヨヨンは得意げに鼻を鳴らして反り返る。

「早速試してみようじゃないか」
「はい!」

 フヨヨンが蒸気ポンプを地面に置き、先端にピンが付いたタンクを取り付ける。タンクはポンプの高さの半分程度の長さだ。

「このタンクは満タンで七、八発撃てるからね」
「おおー」

 蒸気銃は単発でしか撃てなかったから段違いの性能だ。

「但しチャージに時間が掛かるのには注意したまえよ」
「ええ……」

 全てが都合良くはならないようだ。

「そしてどのくらいの時間が必要かは今からする実験次第さ」
「まだ動かしてないんですか?」
「当たり前じゃないか。ルキアスの『加熱』次第で性能が変わるんだからね。ルキアスが動かさなけりゃ、調整もできないよ」
「確かに……」
「ところで『湧水』は使えるね?」
「はい」
「よろしい。まずは釜の蓋を外して『湧水』で水を半分くらい入れて蓋を閉めてくれたまえ」

 ルキアスがフヨヨンが指す円柱、タンクを取り付けたのとは反対側の端に在る円柱を見れば、下部が丸くなってフレームから浮いており、上部にネジ止めの蓋が付いている。その蓋を外して内側を見ると、何かの革らしきものが張り付けられていた。

「この革は?」
「パッキンだね。気密性を確保するためにパーツだよ。ルキアスが『捏ね』たリザード大将の皮が都合良さそうだったから革に鞣して使ったんだ」
「ふおお……」

 ルキアスは変な声を漏らす。どこで何が役に立つか判らないものである。
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