生活魔法は万能です

浜柔

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「こんな感じにしか出来ませんでしたけど……」

 ルキアスは出来上がった指輪っぽい物をタイラクに差し出した。丸い鉄棒に巻き付ける要領で丸めたお陰で指に接する内側部分は滑らかになっているので指に填めても痛くならない。だが外側部分はガタガタな見た目で、装飾品としては落第だ。
 タイラクが指に填める。指が太くて小指にしか填らなかった。

「上等、上等。填めて邪魔にならなきゃそれでいいさ」

 タイラクはそう言いながら指輪を外し、メイナーダに差し出した。

「何か魔法入れてくれ」
「何かって何をかしら? 『手当て』くらいしか入れられる魔法は無いのだけど」
「あの、魔法ってどうやって籠めるんですか?」

 ルキアスには単純な興味もあったが、蒸気銃に使ったアダマントに不用意に魔法が籠められても困る不安もあった。

「練習したら誰でもできる方法ならアダマントの中で魔法を使うことね。だから自分で使える魔法しか籠められないわ。天職に『付与』があったら自分で使えない魔法も籠められるのだけどね」
「アダマントに魔法を掛けるだけなんですか?」
「違うわ。アダマントにじゃなくて、中で使うの。魔法を発動させないようにアダマントに押し込むと考えてもいいわ」
「まだよく判りませんけど、アダマントを持ったまま魔法を使ったらアダマントが勝手に吸い込んじゃうなんてことには?」
「ならないわね」
「良かった……。『加熱』なんかが吸い込まれたら危なそうだから」
「もし魔法をアダマントに使うだけで入るようだと、ルキアスちゃんなら『捏ね』が入っちゃうわね」
「確かに!」

 『捏ね』が入ったらどうなるのか想像もできないが、気持ち悪いことになりそうな予感のルキアスだ。そしてそんな気持ち悪い事態に陥ってないのは単純に魔法を使うだけでは何も起きないと言うことだ。目の前の現実があれば納得もし易い。

「なあ、蘊蓄はいいんだが、指輪の方はどうなったんだ?」
「はいはい。これでいいんでしょ」

 メイナーダは痺れを切らしたらしいタイラクに指輪を差し出した。話す間に籠めていたらしい。
 タイラクは指輪を小指に填めた。

「お、いいじゃねぇか。下手な『治癒』よりいい感じだぞ」
「冗談は止してよ。そんな筈ないでしょ」
「いやいやほんとだって。填めてみろよ」

 メイナーダはタイラクが外して差し出す指輪を受け取って中指に填めた。

「あら? ほんとだわ」

 メイナーダは首を傾げた。そんな仕草は意外と可愛らしい。タイラクが一瞬見蕩れた後で肩を竦めるのがルキアスの目に映った。「子持ちじゃなけりゃなぁ」と声が聞こえそうだった。
 それはそれとしてルキアスには疑問もある。

「怪我が無いのに『手当て』の効果なんて判るんですか?」
「これって疲れが取れるのよ。少し働いた後だからそれを感じやすいわ」

 割と単純な理由だった。
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