411 / 627
411 指輪
しおりを挟む
「アダマントを弄れるなら、ちょっと指輪を作ってみてくれないか?」
タイラクが顔に似合わないことを言った。
「指輪ですか!? そんな大層な物は無理です。輪っかになるだけで……」
「輪っかで構わねぇよ。指に填められさえすればそれでいい」
「それなら……」
ルキアスは理由が判らないまま作業に取り掛かった。これを請け負っても損は無い。魔物の大発生が終わるまでにはまだまだ時間が残されている。
まずはアダマントの塊から指輪に必要な分量を千切る。ただ、これだけでも少々時間が掛かる。アダマントを『捏ね』るのはそう容易いものではないのだ。
だから集中し続けるのは難しい。だが『捏ね』るのを片手間に続けるのは可能だ。
「アダマントの指輪って何か意味があるんですか?」
「知らないのか? アダマントはある種の魔法を籠めたらその魔法を魔力が無くなるまで放ち続けるんだ」
「マジですか!? どんな魔法を籠められるんですか!?」
「そりゃおめぇ……、『治癒』だとか……、何だっけ?」
タイラクはメイナーダに投げた。
「偉そうに言っててそれってどうなのかしらね?」
「いや、ほら、俺が魔法を籠めるんじゃねぇからさぁ」
「はいはい。言い逃れは見苦しいわ」
メイナーダが窘めると、タイラクは拗ねたようにそっぽを向いた。その仕草はどこか可愛らしかった。ごついおっさんなのに。
だがメイナーダはタイラクを無視してルキアスを見る。
「籠めるだけならどんな魔法でも籠められるのよ。でも考えてもみてちょうだい。『火魔法』なんて籠めたら熱くて誰も触れなくなるわ。触れるように加工しても、使う時には火を噴き出すから投げ付けるのでもなければ使う人が火傷しちゃうのよ。投げ付けたんじゃ失くしちゃうかも知れなくて使い捨て覚悟になっちゃうわ。使い捨てにするにはアダマントは高価だから普通はしないわね」
「なるほど。それじゃ、『湧水』を籠めたら『湧水』を使えない人でも水が出せるってことですか?」
「そうなるけど、『湧水』で言えば水を止めたり出したりできなくて魔力が無くなるまで水が出っぱなしで不便よね」
籠めた以上の魔力を出せないので、魔法によっては効率が悪かったり不便だったりすると言う。
「使い方が難しそうですね」
「実用できる魔法を数えた方が早いかも知れないわね」
話をしている間にアダマントを千切り終えた。
これを輪にするのだが、穴を空けるのは現実的でない。アダマントを細長く伸ばし、輪に曲げて繋ぎ目を『捏ね』付ける。
そうして無骨な指輪状の何かが出来上がった。
タイラクが顔に似合わないことを言った。
「指輪ですか!? そんな大層な物は無理です。輪っかになるだけで……」
「輪っかで構わねぇよ。指に填められさえすればそれでいい」
「それなら……」
ルキアスは理由が判らないまま作業に取り掛かった。これを請け負っても損は無い。魔物の大発生が終わるまでにはまだまだ時間が残されている。
まずはアダマントの塊から指輪に必要な分量を千切る。ただ、これだけでも少々時間が掛かる。アダマントを『捏ね』るのはそう容易いものではないのだ。
だから集中し続けるのは難しい。だが『捏ね』るのを片手間に続けるのは可能だ。
「アダマントの指輪って何か意味があるんですか?」
「知らないのか? アダマントはある種の魔法を籠めたらその魔法を魔力が無くなるまで放ち続けるんだ」
「マジですか!? どんな魔法を籠められるんですか!?」
「そりゃおめぇ……、『治癒』だとか……、何だっけ?」
タイラクはメイナーダに投げた。
「偉そうに言っててそれってどうなのかしらね?」
「いや、ほら、俺が魔法を籠めるんじゃねぇからさぁ」
「はいはい。言い逃れは見苦しいわ」
メイナーダが窘めると、タイラクは拗ねたようにそっぽを向いた。その仕草はどこか可愛らしかった。ごついおっさんなのに。
だがメイナーダはタイラクを無視してルキアスを見る。
「籠めるだけならどんな魔法でも籠められるのよ。でも考えてもみてちょうだい。『火魔法』なんて籠めたら熱くて誰も触れなくなるわ。触れるように加工しても、使う時には火を噴き出すから投げ付けるのでもなければ使う人が火傷しちゃうのよ。投げ付けたんじゃ失くしちゃうかも知れなくて使い捨て覚悟になっちゃうわ。使い捨てにするにはアダマントは高価だから普通はしないわね」
「なるほど。それじゃ、『湧水』を籠めたら『湧水』を使えない人でも水が出せるってことですか?」
「そうなるけど、『湧水』で言えば水を止めたり出したりできなくて魔力が無くなるまで水が出っぱなしで不便よね」
籠めた以上の魔力を出せないので、魔法によっては効率が悪かったり不便だったりすると言う。
「使い方が難しそうですね」
「実用できる魔法を数えた方が早いかも知れないわね」
話をしている間にアダマントを千切り終えた。
これを輪にするのだが、穴を空けるのは現実的でない。アダマントを細長く伸ばし、輪に曲げて繋ぎ目を『捏ね』付ける。
そうして無骨な指輪状の何かが出来上がった。
2
お気に入りに追加
980
あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。
本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる