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409 『傘』を焼台に
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リュミアが微妙な表情を浮かべて見詰める前、ルキアスは下に向けて差した小さな『傘』を焼台に、肉を薄く切って竹串に挿し、『加熱』で焼いた。この方がフライパン焼くより余分な油が抜けて表面がパリッと焼ける。
肉が焼き上がり、四人で揃って齧り付く。エリリースもこの程度の事には抵抗を感じないようだ。
「〃「……」〃」
四人とも噛み切るのに苦労しながらも一口齧って無言で咀嚼する。……咀嚼する。……まだ咀嚼する。
「固いね……」
「びっくりしましたわ」
「旨味はあるんだがな……」
「顎が疲れるわ……ね」
ルキアスが容易に薄切りにできるような肉なのだから推して知るべしだとは食べた後に判ったことだ。
このままでは折角の食事で気分が下がってしまう。皆でどうにか柔らかくできないものかと考える。手っ取り早いのは叩くこと。
しかし仮にも身を潜めているのだから物音を立てるのは考えものだ。
(あ、でもあれなら!)
ルキアスは思い付いたまま塊肉を『捏ね』る。『捏ね』て『捏ね』て『捏ね』まくる。もうぐにゃぐにゃだ。
その肉を薄く切り、竹串に挿して焼く。『捏ね』た後の肉の薄切りはルキアスには無理だったのでリュミアに頼んだが、些細なことである。
ともあれ、先とは違った香ばしい匂いが立ち込めた。
「うお……」
ザネクが呻くような声を出して生唾を飲み込んだ。
ルキアスも焼けるまでの時間が非常に長く感じた。
焼き上がると、四人は互いに顔を見合わせてから齧り付く。
そこからはもう四人とも持った串から肉が無くまで無言だった。
「やべぇ……」
「美味しいかった」
「塩と胡椒だけのシンプルな味付けですのに、どうしてこんなに美味しいのでしょう」
「柔らかくできたらこんなに美味しかったの……ね」
「ルキアス、次焼いてくれ、次」
「そうだね!」
「わたくしにもお願いします」
「わたしにも貰えるかし……ら?」
「勿論! どんどん焼くよ!」
肉はたっぷりある。四人は食べられるだけ食べた。
その後も魔物が三度ばかり通り掛かったが、全て単独だった。一頭は通り過ぎただけで、残る二頭も『鏡』に翻弄されるまま自滅する形で終わった。
夕方になると、タイラク、メイナーダ、ハーベイ、そしてヘルドが戻って来た。
「何、いい匂いさせてんだ……」
「お腹が鳴っちゃいそうだわ」
ルキアス達は夕食の支度をしているところであった。
肉が焼き上がり、四人で揃って齧り付く。エリリースもこの程度の事には抵抗を感じないようだ。
「〃「……」〃」
四人とも噛み切るのに苦労しながらも一口齧って無言で咀嚼する。……咀嚼する。……まだ咀嚼する。
「固いね……」
「びっくりしましたわ」
「旨味はあるんだがな……」
「顎が疲れるわ……ね」
ルキアスが容易に薄切りにできるような肉なのだから推して知るべしだとは食べた後に判ったことだ。
このままでは折角の食事で気分が下がってしまう。皆でどうにか柔らかくできないものかと考える。手っ取り早いのは叩くこと。
しかし仮にも身を潜めているのだから物音を立てるのは考えものだ。
(あ、でもあれなら!)
ルキアスは思い付いたまま塊肉を『捏ね』る。『捏ね』て『捏ね』て『捏ね』まくる。もうぐにゃぐにゃだ。
その肉を薄く切り、竹串に挿して焼く。『捏ね』た後の肉の薄切りはルキアスには無理だったのでリュミアに頼んだが、些細なことである。
ともあれ、先とは違った香ばしい匂いが立ち込めた。
「うお……」
ザネクが呻くような声を出して生唾を飲み込んだ。
ルキアスも焼けるまでの時間が非常に長く感じた。
焼き上がると、四人は互いに顔を見合わせてから齧り付く。
そこからはもう四人とも持った串から肉が無くまで無言だった。
「やべぇ……」
「美味しいかった」
「塩と胡椒だけのシンプルな味付けですのに、どうしてこんなに美味しいのでしょう」
「柔らかくできたらこんなに美味しかったの……ね」
「ルキアス、次焼いてくれ、次」
「そうだね!」
「わたくしにもお願いします」
「わたしにも貰えるかし……ら?」
「勿論! どんどん焼くよ!」
肉はたっぷりある。四人は食べられるだけ食べた。
その後も魔物が三度ばかり通り掛かったが、全て単独だった。一頭は通り過ぎただけで、残る二頭も『鏡』に翻弄されるまま自滅する形で終わった。
夕方になると、タイラク、メイナーダ、ハーベイ、そしてヘルドが戻って来た。
「何、いい匂いさせてんだ……」
「お腹が鳴っちゃいそうだわ」
ルキアス達は夕食の支度をしているところであった。
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