生活魔法は万能です

浜柔

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408 食べられますか?

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 昼食に何を食べようかと思いつつ、ルキアスはトカゲのような魔物の骸に目を向けた。多少稼げるようになっていても食費が浮くなら嬉しい。

「リュミアさん、これって食べられますか?」
「ダイナリザードは食べられなくはないけれど、固い……わ。見ての通りに皮が硬くて肉を切り出すのも骨……ね」

 リュミアは少し「固い」を強調するように言った。しかしルキアスには食べられることが重要だ。

「食べられないんじゃなければ、試してみます」
「チャレンジャー……ね。でもあまり時間を掛けるのは感心しない……わ」
「……時間が掛かりそうなら諦めます」
「それならやってみるといいわ……ね」

 ルキアスはリュミアが止めを刺した時の切り口に左手を掛けて『捏ね』る。すると魔物の分厚い皮がたわんだ。しかし千切れるには至らない。
 尤も、これだけで千切れるとはルキアスも思っていない。右手でナイフを取り出してたわんだ皮に切り付ける。素のオークの皮程度の抵抗でナイフが食い込んだ。

「え!?」

 リュミアの驚く声をどうにか聞き流しつつナイフを進めるが、切れたのは手の幅分程度だった。

「思ったより大変だ……」

 諦めたくなったルキアスだ。
 ところがリュミアには気になるものがあるらしい。

「ちょっと待って。そのナイフを見せて貰えないかし……ら?」
「あ、はい」

 リュミアはルキアスからナイフを受け取って検分する。無論なんの変哲もないナイフだ。リュミアから見れば安物である。

「ありがと……ね。もう一回その皮を切ってみて貰えるかし……ら?」
「え? あ、はい」

 切るのを諦めかけていたが頼まれれば続けるのに否やはないルキアスだ。
 改めて切り口に触れてみると、『捏ね』た部分は柔らかいままだ。皮は金属のように元の硬さに戻らないらしい。

(これなら切れる!)

 切る予定の場所を予め『捏ね』てからナイフを入れる。慣れて来たら少しずつ手をずらしつつ左手で『捏ね』ながら右手で切る。左手を切らないように慎重に。

(まだちょっと硬いけど、このやり方ならどこでも切り出せそう)

 気を良くしたルキアスはゆっくりだが確実に魔物の皮を切ってゆく。

「どうしてあのナイフで切れるのかし……ら?」
「ルキアスのことだから『捏ね』てるんじゃないか?」

 リュミあの呟きに答えたのはザネクだった。

「『捏ね』?」
「ああ。ルキアスはアダマントも『捏ね』ちまうからな」

 リュミアがザネクを目を見開いて凝視する。

「あれ? 姉ちゃんに話してなかったっけか?」
「聞いてないわ……ね」

 ルキアスは皮を四角く切り取ると、その下の肉にナイフを突き刺して切り取った。
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