生活魔法は万能です

浜柔

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399 撒く

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 後を追い掛ける彼らは別にルキアスの邪魔をしたい訳ではない。だから一定の距離を保って追跡する。
 これを見て取ったルキアスは一旦速度を緩め、四人が揃ったところで再加速。十字路を高速で左に曲がった。

「ここで引き離す気か!?」

 ルキアスを追跡する四人は急いで角を曲がる。ところがルキアスの姿はそこには無かった。次の曲がり角まではかなり遠く、この一瞬で行ける筈がない。

「どこに行った!?」

 四人が周囲を見回してもルキアスは見当たらなかった。

(撒けたかな?)

 ルキアスは後を振り返って確かめる。人影は見えない。

(どうにかなった!)

 ルキアスは左折したと同時に『鏡』と『ランプ』を消し、旋回を続けながら急上昇、追って来た四人が左折すると同時に十字路に戻って左の回廊に突入した。結果的に十字路を直進したことになる。念のために『鏡』を背後に後方に向けてカモフラージュしている。

(あんなに監視されてたんじゃ、おちおち探索してられないよ……)

 これで落ち着いて探索できる。探索を再開するべく高度を下げ、再度後方を確認してから進み始めた。
 だがルキアスに付いて来ていたのは撒いた四人だけではない。ルキアスの後方、十字路のかなり向こうからメイナーダ、ユア、リュミア、エリリースが歩いてやって来ている。

「あらあら、ルキアスちゃんたらタイラクを撒くなんて、やるわね」

 無論、タイラクは散歩気分で緩みっぱなしだからルキアスでも出し抜けたのだ。日頃の探索時の緊張感ならルキアスに出し抜ける可能性は万が一にも無い。

「何度見てもルキアスくんの『傘』って不思議……ね」
「お二人ともここからルキアスの様子がご覧になれるのですか?」
「あら、『望遠』を使えば簡単よ?」

 エリリースが手をポンと合わせる。

「『望遠』。ルキアスが時々使ってましたわ。わたくしは日頃使わないので全く思い浮かびませんでした」

 エリリースは『望遠』を試みる。メイナーダもリュミアもエリリースの様子を覗った。

「……『望遠』はどうしたら良いのでしょう?」

 エリリースは『望遠』を憶えていないのを思い出しただけだった。
 一方、ルキアスの探索はいつもの調子に戻っている。『望遠』で見なければならない距離が気になるほど感覚は鋭くなっていない。
 とは言え別の違和感は感じていた。後が気にならなくなったので浮かび上がった感覚だ。

(ガーゴイルが襲って来ないな……。いや、それどころか魔物が居ない?)

 ルキアスは思い返す。タイラク達から逃げた時のような動きしたならガーゴイルがトレインしても不思議ではない。それなのにガーゴイルには全く襲われず、タイラク達を撒くことができた。これは異常と言えるだろう。
 そしてその異常は今も続いている。

(もしかして戻った方が……?)

 少し嫌な予感を覚え始めて立ち止まったルキアスだ。
 だが少し遅かったかも知れない。目前に迫った丁字路の横路から巨大な陰がぬっと現れた。
 それは巨大なトカゲのような頭を持っていた。
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