生活魔法は万能です

浜柔

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397 ぐでっと

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 五日後。ルキアスはダンジョンタワー地下街の食堂の席でぐでっとなっていた。同じテーブルを囲むのはザネク、リュミア、それに消防隊中隊長のハーベイだ。

「疲れた……」

 この二日間で日に二回ずつ、消防、警察、警備、果ては軍を相手に講習を行った。探索者相手と違って講習は滞りなく行え、内容もほぼデモンストレーションだったものの、場所が場所だけに体力的には問題なくても気疲れが酷かったのだ。
 その代わりに十分な報酬は受け取っている。

「だけどリュミアさんもザネクもありがとうございました。助かりました」
「構わない……わ」
「おう。しようと思ってもなかなかできない体験だから面白かったぞ」
「ぼくにはそんな余裕は無かったよ……」

 ルキアスはザネクの強心臓が羨ましい。

「ハーベイさんも消防隊だけでなく、他の所にも来てくれてありがとうございました。心強かったです」
「気にしなくていいよ。君達だけを行かせる訳には行かないのだから、自分は職務でもあったからね」
「言われてみれば……」

 ハーベイ抜きで警察や軍に行くのを想像すると、まごまごする自分しか思い浮かばないルキアスだ。それだけならまだしも門前払いもあり得たことだろう。

「でもこれで落ち着いて探索に戻れます」

 一通りの事が終わったのだからもう『傘』の話をせがまれることも無くなる筈だ。
 そして探索の話が出たところでザネクにも思うところがあったらしい。

「ルキアスはまだソロでやるのか?」
「うん。まだ一一階が上手く行ってないから」
「どんな風に?」
「『傘』にぶつかられる前に魔物を全部倒したいんだけど、どうしても取りこぼすんだ」
「……何がどう悪いのか判らん。一度見に行ってもいいか?」
「え? 面白くはないよ?」
「いや、何か面白そうな予感がするぞ」
「同感だね。自分もいいだろうか?」
「ハーベイさんも?」
「いいじゃないか。手は出さないよ」
「うーん……。そんなに見たいなら……」
「おっし、そうこなくっちゃな」
「自分も是非見に行かせて貰うよ」
「あ、でも、ハーベイさんはダンジョンの探索の経験は?」
「それは大丈夫。消防隊員は定期的にダンジョン探索を行っていてね。四人パーティーで二〇階まで行けるのが隊員として活動できる条件のようになっているんだ」

 義務ではないが、ダンジョンで進出した階層が深い隊員ほど昇進等で有利になっている。中隊長ともなれば単独での第二〇階層攻略が必須条件のようになっている。
 これは消防隊は場合によってはダンジョン内での救助も担うためだ。

「じゃあ、普段から消防隊の人と擦れ違ったりしてるかも知れないんですね」
「間違いなくね。何人かの隊員が君のことを知ってたよ。ヘルドとかね」
「はい?」
「知らなかったのかな? 第五階層で会ったと聞いたのだけど」
「あ!」

 遭難していたのを救助した相手であった。本職は漁師でなかったらしい。
 それはさておき、ルキアスの探索に見学者が張り付くことになった。
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