生活魔法は万能です

浜柔

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392 どうにか

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「なあ? これって鍛え方があるんだろ?」
「はい。この後その話をします」

 ルキアスはタイラクの問いに直接的には答えなかった。それをしてしまえば講習を開いた甲斐が無い。

「でもその前に……、『傘』で飛べるのがぼくだけじゃないことを見て貰おうと思います!」

 ルキアスは途中から会場の皆に向けて行った。

「ザネク、リュミアさんお願い」
「おう」
「出番……ね」

 ザネクとリュミアは壇上ではなく床に立ち、ザネクは下を向けて、リュミアは上に向けて『傘』を差す。転落の可能性が否定できないので床でなのだ。
 二人は恐る恐る『傘』に乗り、宙に浮かんで見せた。
 感心するような小さなどよめきが起きる。だが違和感を抱いた人も居たようだ。

「なあ、そっちの姉ちゃんは何でそんな乗り難そうな乗り方してるんだ?」

 真ん中が突き出た上に乗るより凹んだ中に乗る方が落ちる心配もなく乗りやすいのは一目瞭然だ。

「『傘』は突き出た側の方が衝撃に強いからです」

 質問者は「そうなのか?」と他の参加者に尋ねるが、皆一様に首を横に振る。

「それじゃ確かめて貰いましょう。タイラクさんお願いできますか?」
「おう。いいぜ」

 確かめるにはルキアスの『傘』が最も表と裏の強度さが大きいので最適だ。ただそれにはそれを砕くだけの力が必要となる。今ここには正面から打ち砕いた人物が居るのだからその人に頼むのが一番だろう。
 ルキアスが裏面が参加者の方を向くよう『傘』を差して距離を置く。タイラクが言われずとも先と同じ力加減でハンマーを振るい、パキャンと音を立てて『傘』が砕けた。ハンマーは『傘』で止まらず振り抜かれている。

「こりゃ確かに柔かったな」

 タイラクは納得するように頷き、他の参加者も「タイラクが言うなら」と納得した。
 ここでまたルキアスは可能な限り声を張る。できるだけ多くの人の耳に入らなければまた講習会を開く羽目になりかねない。

「理解していただいたところで鍛え方ですが、これはもうひたすら使うだけです!」

 ロマと話した時に出た筋トレを例に出して説明する。この筋トレの譬えは探索者には判りやすかったようだ。

「使うのはいいが、飛べるまでにはどのくらいの時間が掛かるんだ?」

 これも当然の疑問だろう。これにはザネクの経験が参考になる。ザネク自身が疎覚えだから大まかな感覚だ。

「毎日一〇時間くらい使い続けて三ヶ月程度掛かると思ってください!」

 これにはそこかしこから「マジかよ……」などと嘆きの声が聞こえるが、こればかりは頑張って貰うしかないルキアスである。
 更には幾つかの鍛え方を可能なものは実演しつつ教えた。魔物と戦う時に盾代わりに使ったり、壁に押し付けて割ったりなどだ。
 そんなこんなで講習会をどうにか終えられた。
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