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「水臭いぞ、ルキアス。『傘』の講習なら俺にも手伝わせてくれ」
デナンと講習の話をした翌日の夕方、ルキアスはダンジョンの出口でザネクに待ち伏せられていた。
「ザネク、どうして講習の事を?」
昨日の今日で実のところルキアスは具体的な話を知らない。これには少しばかりの経緯がある。
既に個別に教えた人との兼ね合いから受講料を取ると揉める原因になり兼ねず、デナン達と話し合って無料でするよう纏まった。しかし無料なのに準備からルキアスが行ったのでは丸っきりのただ働きだ。受講する者が準備をした後に頭を下げてルキアスを招くのが筋だとの話にもなった。
とは言えルキアスの知らない所で好き勝手に準備されても困ると言うことで、デナン達が「一肌脱ごう」と準備を進めることになった。その準備の経過は毎晩聞くことになっているが、昨日の今日ではまだ具体的になってないだろうとルキアスは予想していた。
「受付前にある講習の告知を見ただけだぞ?」
「え!? それっていつ?」
「今朝だな」
「ええ!?」
今朝と言うことは、昨日の内に手続きされたと言うことだ。
「講習は明後日だってな」
「へ!? 幾ら何でも早くない!?」
「何でルキアスが驚いてるんだ?」
「準備を人任せにしてるから。今日この後で打ち合わせすることになってるんだよ」
「じゃあ、俺もそれに混ぜてくれないか?」
「うん。大丈夫だと思う」
そうしてルキアスはザネクを連れだって待ち合わせの酒場まで行った。デナン達は既に酒が入っている様子だ。
「おう! ルキアス、来たな! 先に始めてるぜ!」
「先にって、飲み会を?」
「細かい事は気にすんな。講習の段取りの方はもう終わったからな! 明後日頼むぜ」
「早すぎるよ。心の準備も必要だし……」
「おいおい、ここで腰引けてんのか? 早い方がいいだろ。早けりゃ早いほど絡まれる回数が減るだろ?」
「確かに……」
ルキアスは勝手に日程まで決められたことにもやっとしたものを感じたが、デナンの話は尤もだったので反論もできなかった。
「ところでそっちの兄ちゃんは何者だ?」
「友達のザネクだよ。講習を手伝ってくれるって」
「ほう」
「ザネク・ドースバスだ」
「デナンだ。よろしくな」
デナンが右手を差し出し、ザネクが応えて握手する。
「ほう。兄ちゃんはなかなか腕が立ちそうだな」
「おっさんもな」
ザネクの手の感触を確かめつつデナンが言い、ザネクも同様に返した。ところがデナンには別のところで引っ掛かった部分があったらしい。
「おいおい、おっさんは止してくれ。これでもまだ若いんだ。『お兄さん』で頼むぜ」
「デナンの冗談はおいといて、俺はニケットだ。よろしくな」
「ヂッツだ」
「ニケット」
スルーされたデナンが仲間達をじとっと見た。
デナンと講習の話をした翌日の夕方、ルキアスはダンジョンの出口でザネクに待ち伏せられていた。
「ザネク、どうして講習の事を?」
昨日の今日で実のところルキアスは具体的な話を知らない。これには少しばかりの経緯がある。
既に個別に教えた人との兼ね合いから受講料を取ると揉める原因になり兼ねず、デナン達と話し合って無料でするよう纏まった。しかし無料なのに準備からルキアスが行ったのでは丸っきりのただ働きだ。受講する者が準備をした後に頭を下げてルキアスを招くのが筋だとの話にもなった。
とは言えルキアスの知らない所で好き勝手に準備されても困ると言うことで、デナン達が「一肌脱ごう」と準備を進めることになった。その準備の経過は毎晩聞くことになっているが、昨日の今日ではまだ具体的になってないだろうとルキアスは予想していた。
「受付前にある講習の告知を見ただけだぞ?」
「え!? それっていつ?」
「今朝だな」
「ええ!?」
今朝と言うことは、昨日の内に手続きされたと言うことだ。
「講習は明後日だってな」
「へ!? 幾ら何でも早くない!?」
「何でルキアスが驚いてるんだ?」
「準備を人任せにしてるから。今日この後で打ち合わせすることになってるんだよ」
「じゃあ、俺もそれに混ぜてくれないか?」
「うん。大丈夫だと思う」
そうしてルキアスはザネクを連れだって待ち合わせの酒場まで行った。デナン達は既に酒が入っている様子だ。
「おう! ルキアス、来たな! 先に始めてるぜ!」
「先にって、飲み会を?」
「細かい事は気にすんな。講習の段取りの方はもう終わったからな! 明後日頼むぜ」
「早すぎるよ。心の準備も必要だし……」
「おいおい、ここで腰引けてんのか? 早い方がいいだろ。早けりゃ早いほど絡まれる回数が減るだろ?」
「確かに……」
ルキアスは勝手に日程まで決められたことにもやっとしたものを感じたが、デナンの話は尤もだったので反論もできなかった。
「ところでそっちの兄ちゃんは何者だ?」
「友達のザネクだよ。講習を手伝ってくれるって」
「ほう」
「ザネク・ドースバスだ」
「デナンだ。よろしくな」
デナンが右手を差し出し、ザネクが応えて握手する。
「ほう。兄ちゃんはなかなか腕が立ちそうだな」
「おっさんもな」
ザネクの手の感触を確かめつつデナンが言い、ザネクも同様に返した。ところがデナンには別のところで引っ掛かった部分があったらしい。
「おいおい、おっさんは止してくれ。これでもまだ若いんだ。『お兄さん』で頼むぜ」
「デナンの冗談はおいといて、俺はニケットだ。よろしくな」
「ヂッツだ」
「ニケット」
スルーされたデナンが仲間達をじとっと見た。
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