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380 本題
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(ロマさんのことだから、火事現場の話をどこかで仕入れてて、ぼくに消防隊の事情を説明したかったんだろうな)
ルキアスはそう察した。どこで話を仕入れるのかが甚だしく謎ではあるが。
(だけどこのためだけに待ってたってなんてある?)
獲物の横取りに関する話は心得としては大事で、火事の件は話す切っ掛けになりもする。それでもわざわざ待ち構えてまでする話だろうかと考えれば疑問が残り、何となく落ち着かない。
「えーと、もしかして他に本題がある?」
「何だ、察しがいいな。実はな……」
「おーい、ロマ!」
ロマが答えようとしたところで誰かに呼ばれた。
そちらを見れば、スーツを着た男と作業服のような服を着た男の二人連れが近付いて来る。ルキアスは作業服のような服を着た男には見覚えがあった。
「お、ちょうど良かった。今話そうとしてたところだ」
「昨日の……?」
「おお! 君だ君だ。昨日の君だ」
相手は昨日の消防隊員だ。作業服のような服は消防隊の制服だろう。消火作業の時はもっとごつい服を着込んでいたので目の前の服が制服だと直ぐには判らなかった。
それはそれとして、少々心苦しい気持ちにもなっていたから今は会わずに済ませたかった相手だ。ルキアスは挨拶もさておいて頭を下げる。
「昨日は先走った事をしてすいませんでした」
これには相手の方が面食らったように瞠目する。
「謝罪は受け入れるから、頭を上げてくれ。さもないと隣の方に叱られてしまうからな」
「はい?」
ルキアスは首を傾げながら相手を上目遣いで見た。
「自分はハーベイ・ドナイゼン。消防隊の中隊長を勤めている。そしてこの方はキルシルセッカ・ベルゼゼナ殿だ。今日はこの方の願いで君を捜していたんだ」
「はい?」
「君だね? 妻と娘を助けてくれたのは。本当に感謝する」
キルシルセッカは進み出てルキアスの手を取って固く握った。
「あ! あの人、無事だったんですね!?」
「ああ、君のお陰で後遺症も無くね」
そう言われてルキアスがハーベイを見やると、ハーベイは頷いて応えた。
キルシルセッカは言う。
「こんな場所で立ち話も何だから一緒に食事でもどうかな? ご馳走させてくれないか?」
ルキアスがロマに誘いを受けた方が良いのかを問い掛けるように視線を向けると、ロマも頷いて応えた。
「はい。ご馳走になります」
ルキアスはそう察した。どこで話を仕入れるのかが甚だしく謎ではあるが。
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「えーと、もしかして他に本題がある?」
「何だ、察しがいいな。実はな……」
「おーい、ロマ!」
ロマが答えようとしたところで誰かに呼ばれた。
そちらを見れば、スーツを着た男と作業服のような服を着た男の二人連れが近付いて来る。ルキアスは作業服のような服を着た男には見覚えがあった。
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「おお! 君だ君だ。昨日の君だ」
相手は昨日の消防隊員だ。作業服のような服は消防隊の制服だろう。消火作業の時はもっとごつい服を着込んでいたので目の前の服が制服だと直ぐには判らなかった。
それはそれとして、少々心苦しい気持ちにもなっていたから今は会わずに済ませたかった相手だ。ルキアスは挨拶もさておいて頭を下げる。
「昨日は先走った事をしてすいませんでした」
これには相手の方が面食らったように瞠目する。
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「はい?」
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「自分はハーベイ・ドナイゼン。消防隊の中隊長を勤めている。そしてこの方はキルシルセッカ・ベルゼゼナ殿だ。今日はこの方の願いで君を捜していたんだ」
「はい?」
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キルシルセッカは進み出てルキアスの手を取って固く握った。
「あ! あの人、無事だったんですね!?」
「ああ、君のお陰で後遺症も無くね」
そう言われてルキアスがハーベイを見やると、ハーベイは頷いて応えた。
キルシルセッカは言う。
「こんな場所で立ち話も何だから一緒に食事でもどうかな? ご馳走させてくれないか?」
ルキアスがロマに誘いを受けた方が良いのかを問い掛けるように視線を向けると、ロマも頷いて応えた。
「はい。ご馳走になります」
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