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355 落ちてから
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ガーゴイルを動き出す前に倒すのは不可能なようだ。
(面倒な!)
ルキアスは動かないガーゴイルに銃の照準を定めつつ近付く。動き出すのを見逃さないようにゆっくりとだ。
それが絶対的な距離なのか水平距離だけなのかは判らない。残り数歩分ほどの距離でガーゴイルは動いた。
動き出す際、先に撃ち込んだ弾丸が抜け落ちて傷だった部分が塞がる。弾丸がコツンと床を叩く音が響く。先に撃ち込んだ弾丸は全く意味を為していなかった。
だがこれは想定の範囲内だ。第一〇階層のボスに攻撃が全く効かなくなる条件と似たような仕掛けがあっても不思議は無い。今のルキアスは極めて冷静だ。
引き金を引いた。ガーゴイルに突拍子もない動きは見られず、狙い通りに中ってガーゴイルは床に落ちた。
「……」
ガーゴイルが落ちてから気付いた。その骸を見下ろし、ルキアスはげんなりした気分に襲われる。
(どうやって魔石を拾うの?)
床に落ちたガーゴイルから魔石を抜くにはルキアスも下に降りなければならない。面倒でもあるし、床を駆ける魔物からの襲撃にも備えなければならなくなる。宙を飛んだままなら魔物は避けられるのだ。これでも拾うメリットがガーゴイルの魔石にあるのか?
ルキアスにはあるのだった。主に、いや殆ど収入的な面で。
(倒した後の方が面倒だけど……、しょうがないな)
ルキアスは『傘』を床すれすれまで下ろし、『傘』を縦に回して元来は縁である穴を斜め下に向けて手を伸ばす。片手では魔石の回収がほぼ不可能なので半ば身を乗り出しての回収だから「却って無防備なんじゃ?」と、ルキアスは自問する。
だが他に解決法がある訳でもない。天井近くを飛んだまま魔石を回収する手段は無いのだ。特に神経を使う上下動を可能な限り減らすために二、三頭をまとめて倒してから回収するくらいが改善点として精々のところだった。
また、他の探索者と競合しないよう避けるのにも難儀した。視線の高さが全く違うので、ルキアス自身が見落とすことも多く、突然目の前に魔法や矢の流れ弾が飛んで来ることが幾度も起きた。このため飛んでいるルキアスの目撃者も一気に増えることになる。
この探索の仕方。使う方向が違うだけで神経を使うのは地上を歩くのと大差なかったとは、ルキアスが後になって思ったことだ。
(面倒な!)
ルキアスは動かないガーゴイルに銃の照準を定めつつ近付く。動き出すのを見逃さないようにゆっくりとだ。
それが絶対的な距離なのか水平距離だけなのかは判らない。残り数歩分ほどの距離でガーゴイルは動いた。
動き出す際、先に撃ち込んだ弾丸が抜け落ちて傷だった部分が塞がる。弾丸がコツンと床を叩く音が響く。先に撃ち込んだ弾丸は全く意味を為していなかった。
だがこれは想定の範囲内だ。第一〇階層のボスに攻撃が全く効かなくなる条件と似たような仕掛けがあっても不思議は無い。今のルキアスは極めて冷静だ。
引き金を引いた。ガーゴイルに突拍子もない動きは見られず、狙い通りに中ってガーゴイルは床に落ちた。
「……」
ガーゴイルが落ちてから気付いた。その骸を見下ろし、ルキアスはげんなりした気分に襲われる。
(どうやって魔石を拾うの?)
床に落ちたガーゴイルから魔石を抜くにはルキアスも下に降りなければならない。面倒でもあるし、床を駆ける魔物からの襲撃にも備えなければならなくなる。宙を飛んだままなら魔物は避けられるのだ。これでも拾うメリットがガーゴイルの魔石にあるのか?
ルキアスにはあるのだった。主に、いや殆ど収入的な面で。
(倒した後の方が面倒だけど……、しょうがないな)
ルキアスは『傘』を床すれすれまで下ろし、『傘』を縦に回して元来は縁である穴を斜め下に向けて手を伸ばす。片手では魔石の回収がほぼ不可能なので半ば身を乗り出しての回収だから「却って無防備なんじゃ?」と、ルキアスは自問する。
だが他に解決法がある訳でもない。天井近くを飛んだまま魔石を回収する手段は無いのだ。特に神経を使う上下動を可能な限り減らすために二、三頭をまとめて倒してから回収するくらいが改善点として精々のところだった。
また、他の探索者と競合しないよう避けるのにも難儀した。視線の高さが全く違うので、ルキアス自身が見落とすことも多く、突然目の前に魔法や矢の流れ弾が飛んで来ることが幾度も起きた。このため飛んでいるルキアスの目撃者も一気に増えることになる。
この探索の仕方。使う方向が違うだけで神経を使うのは地上を歩くのと大差なかったとは、ルキアスが後になって思ったことだ。
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