生活魔法は万能です

浜柔

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353 第一一階層

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 ルキアスは第一一階層に進出した。
 初めての階層だから最初は保守的に行く。『傘』を極めて深く差し、全身を覆うのだ。
 しかしこれにはデメリットも多い。『傘』を大きくしすぎれば容易に壁にぶつかり、時に『傘』が壊れたりや、狭い場所だと通れないなどが起きる。だからそれを避けるために細めに差す。ところがこれだと腕を横に伸ばせないので甚だ窮屈だ。その上、魔物を見付けても直ぐには攻撃できず、遭遇戦ともなれば時に逃げから入らざるを得ない。

(窮屈でも命あっての物種だから我慢だ……)

 階層の魔物の傾向さえ判ればガチガチに固める必要は無くなる。ソロ活動だから亀の甲のように『傘』を背負うのは止めないが。
 そうして暫く探索を続けたのだが……。

(代わり映えしないなぁ)

 ルキアスの抱いた感想がこれだ。
 ところがそう考えたのが悪かったかのようなタイミングで『傘』に衝撃を受けた。上だ。
 振り返ればガーゴイルが襲い掛かって来ようとしている。

(気付かなかった……)

 相変わらずホーンラビットやゴブリンが主に出現していたため、下ばかりに注意を払って上が疎かになっていた。
 幸いなことにガーゴイルは一頭だけ。銃を構え、狙いを付け、『傘』の形状を変えて射線を空け、引き金を引く。
 小さな悲鳴を残してガーゴイルは落ちた。

(今回は倒せたけど、上も下も警戒するのは難しいな……)

 魔物を探知できなければずっと窮屈な思いをしながら探索することになる。階層に慣れる慣れないではない。
 第三階層ではザネクと担当を分け合っていたので上空を警戒する余裕もあった。しかしここでは一人なので、神経が回らない。

(ガーゴイルが居なければいいけど……)

 考えてもガーゴイルは消えない。ルキアスはガーゴイルを無視できるよう、上方を全て『傘』で防ぐことを考えてみる。

(あ、でも空を飛ぶ魔物にも対処できるようにならないと、この先が大変かも……)

 第四階層では楽をして勘を養わなかったために後で苦労した。『傘』が破られる事態のため、比較的危険の少ないこの階層で飛ぶ魔物の対処は鍛えるべきだ。
 ただ鍛えようにも段階を踏まなければ危険だ。見落とさないよう警戒するのは上か下か。

(……逆にガーゴイルに絞っちゃおうか)

 『傘』で全身を覆えば動く邪魔になる。邪魔にならない探索ができないなら練習として中途半端は否めない。同じ中途半端なら空を飛ぶ魔物に絞る方が後々役に立ちそうに思えた。

(で、空中だけとなると……)

 ルキアスは思い付きから『傘』に乗ることにした。
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