生活魔法は万能です

浜柔

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351 やる気

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 ルキアスはザネクが『傘』をどう鍛えたかは概ね聞いている。そこに自身の経験を付け加えれば良いのだ。

「『傘』を鍛えるにはとにかく使うことだよ。それも危機的状況であればあるほど使った時に鍛えられると思う」
「危機的状況? 例えば?」
「斜面を転がり落ちるとか、狼やホーンラビットに襲われるとか、水中を歩くとか、崖から落ちるとか……かな?」
「狼やホーンラビットってのは判らなくもないが、他のは何だ? 特に崖から落ちるとかって」
「それは第三階層で……」

 ルキアスは第三階層の岩山を上る途中でガーゴイルに襲撃されて崖から転落した時の顛末を説明した。

「……よく生きてたな? 飛べるようになるまでにはそんな経験もしなきゃならんのか?」

 ルキアスはこの問いにパタパタと右手を横に振って応えた。

「地道に『傘』を使ってれば飛べるようになるよ。ぼくの友達がそれで飛べたし」
「他に飛べるヤツが居るのか!?」
「うん」
「かー! こりゃ負けてられねぇな!」

 デナンが更にやる気を漲らせた。




 それから一週間余り。ルキアスは更なる体力作りを続け、生まれたての子鹿の様相にはならなくなった。一方、デナン達も『傘』の強化に勤しんだようだ。

「おっしゃあ! 見たか!? 今の見たか!?」

 ボス戦の途中だと言うのにデナンがはしゃいで皆に問い掛ける。

「ボスの棍棒逸らしたぜ!」
「んな事言ってる場合か! サボんな!」
「お、おう……」

 叱られてテンションだだ下がりのデナン。ボスに向き直って攻撃を再開する。
 ルキアスはそんなデナンに目を瞠った。デナンの『傘』は大抵の人のがそうであるように、触れれば壊れる程度のものだった。ところが僅か一週間でボスの棍棒を逸らせるまでになっている。無論一撃を逸らしただけで粉砕されるし、正面から受け止めようものなら『傘』を貫いて棍棒に痛撃されるだろう。だが一週間でこれなら近い未来に飛べるまでになるに違いない。

(熱心だったもんな……)

 デナン達はルキアスの体力作りを指導する傍ら、ひたすら模擬戦を繰り返していた。ルールは簡単。防御に武器を使うの禁止で、『傘』で往なすか避ける。木や竹で作った剣や槍であっても当たればそれなりに痛いのだ。そんな模擬戦を幾度となく『傘』を砕かれながら繰り返すのだから、『傘』も鍛えられると言うものだ。
 ボス戦の方は殆どルキアス抜きで推移している。前衛が攻撃している間、銃のルキアスに出番は無い。三人を引かせるには銃の攻撃力が全く足りていない。デナン達の検証も概ね結論が出たようだ。
 ボスは程なくして倒れた。
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