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341 判らない事
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前のパーティーのボス戦は程なくして終わった。ここでボス戦を嗜んでいるパーティーは総じて如何に早く倒すか、タイムトライアルに励んでいるように見える。
無論のこと、ルキアスには却って都合が良い。スピーディーであればあるほど、シビアなタイミングでの連携が見られるからだ。
そしてそんなルキアスがデナンは気になるらしい。ボス部屋の中の戦闘を気にする様子は無い。始めは一緒に観戦していた彼らも何回かの後には飽きたのか、たまに戦闘の進捗を確かめる程度にしか見ないようになっている。
「どうだ? 何か判ったか?」
「うん。でも判らない事もあって……」
「どんな風にだ?」
「時々前衛が後も見ずに後衛の攻撃を避けているように見えるんだ」
「ああ、それはな。前衛が後衛の攻撃間隔を把握しておいて、頃合いを見計らって射線から退く。すると後衛が前衛に合わせて攻撃する訳だ」
「でもそれだと後衛の攻撃が飛んだ後で前衛が避けるようなタイミングにはならないよね?」
「そこがまあ、長年培った阿吽の呼吸ってヤツだ」
デナンはドヤ顔をする。
「例えば前衛が退く時に特別な仕草をするんだ。足を軽く踏み鳴らすとかな。それが合図になる。左に退く時は右足を、右に退く時は左足をタタンって感じに踏むと決めておけば、後衛はそれを見てタイミングを合わせればいい。タイミングに依っちゃ後衛の攻撃が飛ぶ方が早くなる」
「へー」
ルキアスは感心しきりだ。しかし少し怖い考えも浮かぶ。
「でも後衛の攻撃が早すぎて前衛に中ったりは……」
「まあ、そこは信頼関係だ。確実に退いてくれると信じられるから撃てる。不安が有るなら撃っちゃいけない」
「なるほど……。それじゃ逆に前衛が退く仕草を後衛が見逃したら?」
「そん時ゃ、後衛の攻撃が遅れるだけだ。まあ、あまりに遅くなるようじゃ、後衛は攻撃を見送りだな」
「それをみんな憶えてるってことなのか……」
そうした目的を持って練習しても形になるまでにどれだけの時間が掛かるのか気が遠くなりそうなルキアスだ。
「まあ、一朝一夕でできるもんじゃないから、少しずつ合わせて行くんだ。なあにルキアスにそこまでやって貰おうなんて思っちゃいないから安心してくれ。誤射の無いタイミングで攻撃してくれればいい」
「うん。それでお願いします」
最後は少し丁寧に頼んでしまうルキアスだった。
無論のこと、ルキアスには却って都合が良い。スピーディーであればあるほど、シビアなタイミングでの連携が見られるからだ。
そしてそんなルキアスがデナンは気になるらしい。ボス部屋の中の戦闘を気にする様子は無い。始めは一緒に観戦していた彼らも何回かの後には飽きたのか、たまに戦闘の進捗を確かめる程度にしか見ないようになっている。
「どうだ? 何か判ったか?」
「うん。でも判らない事もあって……」
「どんな風にだ?」
「時々前衛が後も見ずに後衛の攻撃を避けているように見えるんだ」
「ああ、それはな。前衛が後衛の攻撃間隔を把握しておいて、頃合いを見計らって射線から退く。すると後衛が前衛に合わせて攻撃する訳だ」
「でもそれだと後衛の攻撃が飛んだ後で前衛が避けるようなタイミングにはならないよね?」
「そこがまあ、長年培った阿吽の呼吸ってヤツだ」
デナンはドヤ顔をする。
「例えば前衛が退く時に特別な仕草をするんだ。足を軽く踏み鳴らすとかな。それが合図になる。左に退く時は右足を、右に退く時は左足をタタンって感じに踏むと決めておけば、後衛はそれを見てタイミングを合わせればいい。タイミングに依っちゃ後衛の攻撃が飛ぶ方が早くなる」
「へー」
ルキアスは感心しきりだ。しかし少し怖い考えも浮かぶ。
「でも後衛の攻撃が早すぎて前衛に中ったりは……」
「まあ、そこは信頼関係だ。確実に退いてくれると信じられるから撃てる。不安が有るなら撃っちゃいけない」
「なるほど……。それじゃ逆に前衛が退く仕草を後衛が見逃したら?」
「そん時ゃ、後衛の攻撃が遅れるだけだ。まあ、あまりに遅くなるようじゃ、後衛は攻撃を見送りだな」
「それをみんな憶えてるってことなのか……」
そうした目的を持って練習しても形になるまでにどれだけの時間が掛かるのか気が遠くなりそうなルキアスだ。
「まあ、一朝一夕でできるもんじゃないから、少しずつ合わせて行くんだ。なあにルキアスにそこまでやって貰おうなんて思っちゃいないから安心してくれ。誤射の無いタイミングで攻撃してくれればいい」
「うん。それでお願いします」
最後は少し丁寧に頼んでしまうルキアスだった。
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