生活魔法は万能です

浜柔

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337 終わったか

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 ボスの絶叫が響き渡る。槍はクリティカルなダメージを与えたらしい。
 しかしまだ油断はできない。確実に仕留められたと確認できるまでは終わった訳ではないのだ。デナンが「油断はするな!」と声を上げて警戒を呼び掛ける。
 ボスが身体を起こし、立ち上がる。
 だが二、三歩歩いた所でどうっと倒れ込んだ。

「〃「……」〃」

 もうボスが動く気配は無い。

「終わったか?」
「みたいだな」
「あっさり行ったな。運がいい」
「え? いつもこのくらいで終わらせてるんじゃ?」

 ルキアスは彼らの手際の良さに感心しきりで「いつもこんな感じなのだろう」と考えたのだが、違ったようだ。

「おいおい昨日も来てて俺らが戦ってるのも見たろ? もっと時間掛かってぞ」
「そうだぜ? 今回は上手く行った。一人増えたのが良かったのか、単なる運かは判らんがな。どっちにしてもルキアスはとんだラッキーボーイだったって訳だ」
「「よ! ラッキーボーイ!」」
「や! 止めてください!」
「〃「あっははははは!」〃」

 真っ赤になって手をバタバタさせるルキアスに一同大受けだ。

「そ、そんな事より、ボスが倒れたなら宝箱を確認しないと!」
「おっと、そうだったな」

 皆は半笑いのまま部屋の奥へと行く。壁が凹んで台になっている場所に宝箱は在った。

(出るところ見逃した!)

 妙なところを残念がるルキアスだ。

「そんじゃ、開けるぞ」

 デナンが声を掛けると皆が頷いた。デナンは頷き返して箱を開ける。
 果たして中身は……。

「弓かよ……」
「外れだな」
「え? 随分立派な弓に見えるけど?」

 見るからに第五〇階層でも使えそうな弓。ルキアスには当たりに見える。

「俺ら、誰も弓使わねぇからな」
「弓なんて当てられる気がしねぇしな」
「ああ、うん。それは何となく解る」

 ルキアスも弓を諦めた一人だ。

「でもそれじゃ、みんなが欲しいのって?」
「剣だ」
「剣と鎧だ」
「槍だ」
「短剣か棍棒」
「なるほど」
「だからこの弓は売っちまおう。ヂッツの槍を補充した残りを山分けするぞ」

 置きに行く槍は使い捨て前提の安物なのだ。今回も壊れたので買い換えなければならない。
 デナン、ニケット、ヂッツは頷いた。だがルキアスは見守るだけだ。約束通りに山分けの対象にならないのだから、別れるならこのタイミングだろう。

「じゃあ、ぼくはこれで」
「まあ、待ちな。今日はルキアスのお陰で早く終わったかも知れないんだ。飯くらい奢らせてくれ」

 デナンが言うと、これまた残る三人が頷く。ルキアスとしてもタダ飯が食べられるならもう暫く彼らとの時間を過ごすのも吝かではない。

「じゃあ、ごちそうになります」
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