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330 望遠
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『望遠』を紐解けば、凸レンズ、凹レンズ、凸レンズで構成されている。このレンズの屈折率を変えることで歪曲収差を意図的に生むことも可能だ。凸面鏡で樽型に歪んでいる映像を見るなら糸巻き型に歪ませれば良い。
ただ『望遠』の魔法はその収差が起きないよう自動的に補正が掛かる。その部分を敢えて機能しないように手を施しながらレンズの屈折率を変えるのだ。
(理屈は簡単なんだけどなぁ)
どう変化させれば良いのかは手探りなので、良い塩梅を見付けるまでに甚だ時間が掛かった。大胆に変える必要があると判るまでにも時間を費やし、大まかな形が出来た後の微調整にも時間を費やした。
だがその甲斐はあったようだ。凸面の『鏡』を見る時専用の魔法となり、最終的な視野も平面の『鏡』で見る程度になってしまいはしたものの、視線を動かすだけで脇道の向こう全てが大きな歪みも無く見えるようになった。
とは言え、これで半分だ。左右反転は解消していない。
(プリズムは形がね……)
『望遠』のレンズを変化させることでプリズムを形作るのだが、素では形状がほぼ固定されている。レンズを形作る根本から手を入れなければならない。
(三角柱を作るには……)
三角柱は平面で構成される。平面が定義された魔法と言えば『鏡』。『鏡』の平面の定義を流用して三角柱を形作る。『望遠』に『鏡』を何重にも重ね合わせるようなものだ。凸面の『鏡』には『傘』の要素を組み入れ、今度は『鏡』の要素を『望遠』にと、複雑さは増す一方である。
ここでルキアスが幸運だったのはこれが魔法だったことだ。プリズムの屈折率は魔法故に任意に変えられる。屈折率を適切にすることで、ロマが持っていた本物と違って視角が狭まらずに済み、形状も調整せずに済んだ。
「出来た!」
完成したのは二日目の夜であった。
ただ『望遠』の魔法はその収差が起きないよう自動的に補正が掛かる。その部分を敢えて機能しないように手を施しながらレンズの屈折率を変えるのだ。
(理屈は簡単なんだけどなぁ)
どう変化させれば良いのかは手探りなので、良い塩梅を見付けるまでに甚だ時間が掛かった。大胆に変える必要があると判るまでにも時間を費やし、大まかな形が出来た後の微調整にも時間を費やした。
だがその甲斐はあったようだ。凸面の『鏡』を見る時専用の魔法となり、最終的な視野も平面の『鏡』で見る程度になってしまいはしたものの、視線を動かすだけで脇道の向こう全てが大きな歪みも無く見えるようになった。
とは言え、これで半分だ。左右反転は解消していない。
(プリズムは形がね……)
『望遠』のレンズを変化させることでプリズムを形作るのだが、素では形状がほぼ固定されている。レンズを形作る根本から手を入れなければならない。
(三角柱を作るには……)
三角柱は平面で構成される。平面が定義された魔法と言えば『鏡』。『鏡』の平面の定義を流用して三角柱を形作る。『望遠』に『鏡』を何重にも重ね合わせるようなものだ。凸面の『鏡』には『傘』の要素を組み入れ、今度は『鏡』の要素を『望遠』にと、複雑さは増す一方である。
ここでルキアスが幸運だったのはこれが魔法だったことだ。プリズムの屈折率は魔法故に任意に変えられる。屈折率を適切にすることで、ロマが持っていた本物と違って視角が狭まらずに済み、形状も調整せずに済んだ。
「出来た!」
完成したのは二日目の夜であった。
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