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328 距離感
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『傘』は楕円の枠と制御点を定義すると、枠から枠へ制御点を通る滑らかな曲線で形作られる膜で生成される。楕円の大きさや形、制御点の位置は任意で、使い慣れれば慣れるほどに自由自在に操れる。練習すればするほど剣術が上手くなるようなものだ。
つまり空まで飛べるルキアスは『傘』に関してなら一角なのだった。
だったら『鏡』と『傘』の融合くらいできるのではないか、と言うのがロマの予想だ。
その予想は正鵠を得ていて、ルキアスは『鏡』に『傘』の要素を組み込むのに成功した。丸一日を要したが。
探索で早速試す。
(おおー、回廊全体が見える。けど……)
部分的に見えていた以前と違い、全体が見えるために魔物の位置関係にまで目が行ってしまう。すると左右逆に戸惑いが生じる。回廊の奥から来ると思った魔物が手前から現れて「あっ」と驚くと言った塩梅だ。
無論、平面の『鏡』であっても回廊全体に張ってしまえば曲がった先の回廊全体が見える。しかしそれをすると正面が見えなくなるので実用たり得ない。
他に、『傘』の生成を応用している都合上、その特徴を引き摺る形で『鏡』が円形になるが、これが見づらく感じられた。『鏡』の歪みをできる限り少なくするなら真円になる。四角い『鏡』なら見える筈の四隅が見えない。ここに違和感を禁じ得ないルキアスだ。
だが最も感覚を狂わせるのは映る景色の歪みであった。
(左右逆もだけど、歪んでると距離感が掴めないんだよなぁ)
魔物が向かって来るのが見えていても速度が把握しづらい。
そして解決法が見当たらない。凹面『鏡』を組み合わせれば凸凹が合わさって歪みが無くなるが、正面を向いていられるよう、凹面『鏡』を凸面『鏡』の向こうに配置したなら平面の『鏡』を使うのと同じになってしまう。
(慣れるしかないな……)
ルキアスは距離感を憶え、その距離感が狂わないように凸面『鏡』を常に同じ調子で出すように練習を重ねた。
だが、違和感がどうしても拭えなかった。
つまり空まで飛べるルキアスは『傘』に関してなら一角なのだった。
だったら『鏡』と『傘』の融合くらいできるのではないか、と言うのがロマの予想だ。
その予想は正鵠を得ていて、ルキアスは『鏡』に『傘』の要素を組み込むのに成功した。丸一日を要したが。
探索で早速試す。
(おおー、回廊全体が見える。けど……)
部分的に見えていた以前と違い、全体が見えるために魔物の位置関係にまで目が行ってしまう。すると左右逆に戸惑いが生じる。回廊の奥から来ると思った魔物が手前から現れて「あっ」と驚くと言った塩梅だ。
無論、平面の『鏡』であっても回廊全体に張ってしまえば曲がった先の回廊全体が見える。しかしそれをすると正面が見えなくなるので実用たり得ない。
他に、『傘』の生成を応用している都合上、その特徴を引き摺る形で『鏡』が円形になるが、これが見づらく感じられた。『鏡』の歪みをできる限り少なくするなら真円になる。四角い『鏡』なら見える筈の四隅が見えない。ここに違和感を禁じ得ないルキアスだ。
だが最も感覚を狂わせるのは映る景色の歪みであった。
(左右逆もだけど、歪んでると距離感が掴めないんだよなぁ)
魔物が向かって来るのが見えていても速度が把握しづらい。
そして解決法が見当たらない。凹面『鏡』を組み合わせれば凸凹が合わさって歪みが無くなるが、正面を向いていられるよう、凹面『鏡』を凸面『鏡』の向こうに配置したなら平面の『鏡』を使うのと同じになってしまう。
(慣れるしかないな……)
ルキアスは距離感を憶え、その距離感が狂わないように凸面『鏡』を常に同じ調子で出すように練習を重ねた。
だが、違和感がどうしても拭えなかった。
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