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323 鏡写し
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その時が来た。ボスの出現だ。ボス部屋の奥に黒い靄が立ち籠めたかと思えば、その靄が集まって仄かに光を放つ。光の中で形作られるのは予想された巨体。
ただその姿にルキアスは口をあんぐりと開けた。
立っていたのはオーク。超肥満体のだ。身長よりも長く見えるほどの横幅で、転がった方が速く動けそうにさえ見える。これは確かに剣で斬り付けるだけでは苦労するだろう。
「よっしゃ、行くぜ!」
「「「おう!」」」
列の先頭に並んでいたパーティーが気勢を上げてボス部屋に入って行く。ボスの姿にも慣れっこで何も思わないらしい。
「おい、そこに突っ立ってたら危ねぇぞ」
「え? あ、そうですね……」
ルキアスは肩を小突かれて我に返り、部屋の入口の脇に避ける。部屋の入口には扉が無いので流れ魔法か何か飛んで来たら危ないに違いない。
しかしその一方で、見学をしようと思えば思う存分に可能だ。入口の脇に避けていては見学も何もないのではあるが。
見える場所に行くのは危険だ。入口から顔を突き出して中を覗くのも同じ事だし、体勢的に疲れる。
安全な場所から中を覗くには……。
(『鏡』!)
思い立ったルキアスは早速大きな、と言っても回廊の向こうを確認可能な範囲の大きさの『鏡』を入口の前に立てる。これなら中の様子がバッチリだ。
だが見ていて違和感があった。それが何かとじっくり『鏡』を見詰めていて気付いた。
(弓を左に構えてる……)
中に入ったパーティーの一人は弓を使っているのだが、左手で弦を引いている。一瞬左利きなのかと思えば、槍を持った人も左に構えている。
(あ! 鏡写し! やっぱり直接見なきゃダメなのか……)
左右が逆になった様子を見学しても後々混乱しそうに思われた。どうせ見学をするなら鏡像ではなく正像で見たいルキアスだ。
(あ、もしかして『鏡』を二枚使えば)
『鏡』一枚で左右が逆になるのだから、もう一枚『鏡』を介せば元に戻る。
早速ボス部屋に背を向ける形で座り、直角に反射する小さめの『鏡』をもう一枚目の前に出す。これで正像で見える。
(でもちょっと遠いな……)
『望遠』を使って拡大した。
ただその姿にルキアスは口をあんぐりと開けた。
立っていたのはオーク。超肥満体のだ。身長よりも長く見えるほどの横幅で、転がった方が速く動けそうにさえ見える。これは確かに剣で斬り付けるだけでは苦労するだろう。
「よっしゃ、行くぜ!」
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「おい、そこに突っ立ってたら危ねぇぞ」
「え? あ、そうですね……」
ルキアスは肩を小突かれて我に返り、部屋の入口の脇に避ける。部屋の入口には扉が無いので流れ魔法か何か飛んで来たら危ないに違いない。
しかしその一方で、見学をしようと思えば思う存分に可能だ。入口の脇に避けていては見学も何もないのではあるが。
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安全な場所から中を覗くには……。
(『鏡』!)
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(あ! 鏡写し! やっぱり直接見なきゃダメなのか……)
左右が逆になった様子を見学しても後々混乱しそうに思われた。どうせ見学をするなら鏡像ではなく正像で見たいルキアスだ。
(あ、もしかして『鏡』を二枚使えば)
『鏡』一枚で左右が逆になるのだから、もう一枚『鏡』を介せば元に戻る。
早速ボス部屋に背を向ける形で座り、直角に反射する小さめの『鏡』をもう一枚目の前に出す。これで正像で見える。
(でもちょっと遠いな……)
『望遠』を使って拡大した。
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