生活魔法は万能です

浜柔

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316 パーティーなんだから

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「違うと言うのは?」

 ルキアスとていきなり行動を否定されれば面白くはない。声音に若干不快感が混じった。

「お前さん一人、あるいはザネク一人で背負う必要はないだろう? パーティーなんだからな」
「?」

 ルキアスは言われている意味が見えなくて首を傾げた。

「さっきの話、お前さん一人でその女の子を守らなきゃいけなかったのか?」
「それはぼくが頼まれたから……」
「だがザネクも居たんだろ?」
「そうですけど……」
「だったらザネクでもあるだろ?」
「ん……、まあ……」
「それでどうしてソロでやろうってなる?」
「だからそれは今のぼくじゃ誰も守れないから……」
「だからどうしてお前さん一人だけで守らなきゃってなるんだ?」
「え?」
「パーティーなんだからみんなで守ればいいだろ」
「は、はあ……」
「うわぁ……」

 ガノスが盛大な溜め息を吐いた。

「お前さんもザネクもパーティーってものを理解してなかったんだな」
「えっと……」

 ルキアスは反論を試みようとしたができなかった。パーティーの何たるかを今まで殆ど考えていないのでガノスの言わんとしている事が判らない。反論するにもそこをはっきりさせなければ駄々を捏ねるに等しくなる。

「パーティーは単なる寄り合い所帯じゃない。一の力を持つ四人が集まったとしたら出せる力が全部で五にも六にもなるのがパーティーだ。単なる寄り合い所帯だと四人集まったところで出せる力が全部で二や三になってしまう。お前さん達のも寄り合い所帯になってないか?」
「よく判りません。どう判断したらいいのか判らないので……」
「そうだなぁ……、考えやすいのは稼ぎだろうな。一人一人で狩りをした時と集まって狩りをした時とどっちの稼ぎが多いか」
「……だとすると寄り合い所帯かも知れません」

 ルキアスの狩りで最も稼ぎが多かったのは独りで第二階層に通っていた時と、ザネクと二人で第四階層に通っていた時だ。第四階層では『傘』に乗って上から一方的に魔物を攻撃できた事情があるので、純粋には第二階層で最も稼いでいたことになる。これを基準に考えるなら第六階層以降はあまり稼げていない。

「だけど、寄り合い所帯にならないようにって、どうしたらいいんでしょう?」
「それぞれの長所を生かした役割分担をすることだ。遠距離と近距離で分けるのもあれば、戦闘とそれ以外で分けるのもある。こればかりはパーティーメンバー次第で千差万別だから一概には言えないな」
「そうですか……」

 ルキアスには雲を掴むような話に聞こえた。何の解決にもならない説明にしか聞こえなかったのだ。それに自身の長所など『傘』で飛べるくらいしか思い付かない。これがパーティーに必要な能力かと問われれば微妙だ。
 と、その時。

「はいはい。食べ終わったらさっさと出て行ってくれないかな。後のお客さん待ってるんだから」

 話が長くなって店員に追い立てられてしまった。「おっと、すまねぇな」と店員に返すガノスに続いてルキアスも店を出る。

「まあ、個人の力量も必要だから、お前さんのアプローチも別に間違いとは言えない。だから思う通りにするしかないな。ザネクに免じて相談を聞くくらいはするから、何かあったら言ってくれ」

 ガノスはそれだけ言い残して帰って行った。




 翌日。ルキアスはやはりソロ探索を続けている。一晩考えた結論だ。

(今のぼくはこうするしかないんだから)

 ルキアスは迫り来るホーンラビットに向けて引き金を引いた。




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暫く休載します。
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