316 / 627
316 パーティーなんだから
しおりを挟む
「違うと言うのは?」
ルキアスとていきなり行動を否定されれば面白くはない。声音に若干不快感が混じった。
「お前さん一人、あるいはザネク一人で背負う必要はないだろう? パーティーなんだからな」
「?」
ルキアスは言われている意味が見えなくて首を傾げた。
「さっきの話、お前さん一人でその女の子を守らなきゃいけなかったのか?」
「それはぼくが頼まれたから……」
「だがザネクも居たんだろ?」
「そうですけど……」
「だったらザネクでもあるだろ?」
「ん……、まあ……」
「それでどうしてソロでやろうってなる?」
「だからそれは今のぼくじゃ誰も守れないから……」
「だからどうしてお前さん一人だけで守らなきゃってなるんだ?」
「え?」
「パーティーなんだからみんなで守ればいいだろ」
「は、はあ……」
「うわぁ……」
ガノスが盛大な溜め息を吐いた。
「お前さんもザネクもパーティーってものを理解してなかったんだな」
「えっと……」
ルキアスは反論を試みようとしたができなかった。パーティーの何たるかを今まで殆ど考えていないのでガノスの言わんとしている事が判らない。反論するにもそこをはっきりさせなければ駄々を捏ねるに等しくなる。
「パーティーは単なる寄り合い所帯じゃない。一の力を持つ四人が集まったとしたら出せる力が全部で五にも六にもなるのがパーティーだ。単なる寄り合い所帯だと四人集まったところで出せる力が全部で二や三になってしまう。お前さん達のも寄り合い所帯になってないか?」
「よく判りません。どう判断したらいいのか判らないので……」
「そうだなぁ……、考えやすいのは稼ぎだろうな。一人一人で狩りをした時と集まって狩りをした時とどっちの稼ぎが多いか」
「……だとすると寄り合い所帯かも知れません」
ルキアスの狩りで最も稼ぎが多かったのは独りで第二階層に通っていた時と、ザネクと二人で第四階層に通っていた時だ。第四階層では『傘』に乗って上から一方的に魔物を攻撃できた事情があるので、純粋には第二階層で最も稼いでいたことになる。これを基準に考えるなら第六階層以降はあまり稼げていない。
「だけど、寄り合い所帯にならないようにって、どうしたらいいんでしょう?」
「それぞれの長所を生かした役割分担をすることだ。遠距離と近距離で分けるのもあれば、戦闘とそれ以外で分けるのもある。こればかりはパーティーメンバー次第で千差万別だから一概には言えないな」
「そうですか……」
ルキアスには雲を掴むような話に聞こえた。何の解決にもならない説明にしか聞こえなかったのだ。それに自身の長所など『傘』で飛べるくらいしか思い付かない。これがパーティーに必要な能力かと問われれば微妙だ。
と、その時。
「はいはい。食べ終わったらさっさと出て行ってくれないかな。後のお客さん待ってるんだから」
話が長くなって店員に追い立てられてしまった。「おっと、すまねぇな」と店員に返すガノスに続いてルキアスも店を出る。
「まあ、個人の力量も必要だから、お前さんのアプローチも別に間違いとは言えない。だから思う通りにするしかないな。ザネクに免じて相談を聞くくらいはするから、何かあったら言ってくれ」
ガノスはそれだけ言い残して帰って行った。
翌日。ルキアスはやはりソロ探索を続けている。一晩考えた結論だ。
(今のぼくはこうするしかないんだから)
ルキアスは迫り来るホーンラビットに向けて引き金を引いた。
--------
暫く休載します。
ルキアスとていきなり行動を否定されれば面白くはない。声音に若干不快感が混じった。
「お前さん一人、あるいはザネク一人で背負う必要はないだろう? パーティーなんだからな」
「?」
ルキアスは言われている意味が見えなくて首を傾げた。
「さっきの話、お前さん一人でその女の子を守らなきゃいけなかったのか?」
「それはぼくが頼まれたから……」
「だがザネクも居たんだろ?」
「そうですけど……」
「だったらザネクでもあるだろ?」
「ん……、まあ……」
「それでどうしてソロでやろうってなる?」
「だからそれは今のぼくじゃ誰も守れないから……」
「だからどうしてお前さん一人だけで守らなきゃってなるんだ?」
「え?」
「パーティーなんだからみんなで守ればいいだろ」
「は、はあ……」
「うわぁ……」
ガノスが盛大な溜め息を吐いた。
「お前さんもザネクもパーティーってものを理解してなかったんだな」
「えっと……」
ルキアスは反論を試みようとしたができなかった。パーティーの何たるかを今まで殆ど考えていないのでガノスの言わんとしている事が判らない。反論するにもそこをはっきりさせなければ駄々を捏ねるに等しくなる。
「パーティーは単なる寄り合い所帯じゃない。一の力を持つ四人が集まったとしたら出せる力が全部で五にも六にもなるのがパーティーだ。単なる寄り合い所帯だと四人集まったところで出せる力が全部で二や三になってしまう。お前さん達のも寄り合い所帯になってないか?」
「よく判りません。どう判断したらいいのか判らないので……」
「そうだなぁ……、考えやすいのは稼ぎだろうな。一人一人で狩りをした時と集まって狩りをした時とどっちの稼ぎが多いか」
「……だとすると寄り合い所帯かも知れません」
ルキアスの狩りで最も稼ぎが多かったのは独りで第二階層に通っていた時と、ザネクと二人で第四階層に通っていた時だ。第四階層では『傘』に乗って上から一方的に魔物を攻撃できた事情があるので、純粋には第二階層で最も稼いでいたことになる。これを基準に考えるなら第六階層以降はあまり稼げていない。
「だけど、寄り合い所帯にならないようにって、どうしたらいいんでしょう?」
「それぞれの長所を生かした役割分担をすることだ。遠距離と近距離で分けるのもあれば、戦闘とそれ以外で分けるのもある。こればかりはパーティーメンバー次第で千差万別だから一概には言えないな」
「そうですか……」
ルキアスには雲を掴むような話に聞こえた。何の解決にもならない説明にしか聞こえなかったのだ。それに自身の長所など『傘』で飛べるくらいしか思い付かない。これがパーティーに必要な能力かと問われれば微妙だ。
と、その時。
「はいはい。食べ終わったらさっさと出て行ってくれないかな。後のお客さん待ってるんだから」
話が長くなって店員に追い立てられてしまった。「おっと、すまねぇな」と店員に返すガノスに続いてルキアスも店を出る。
「まあ、個人の力量も必要だから、お前さんのアプローチも別に間違いとは言えない。だから思う通りにするしかないな。ザネクに免じて相談を聞くくらいはするから、何かあったら言ってくれ」
ガノスはそれだけ言い残して帰って行った。
翌日。ルキアスはやはりソロ探索を続けている。一晩考えた結論だ。
(今のぼくはこうするしかないんだから)
ルキアスは迫り来るホーンラビットに向けて引き金を引いた。
--------
暫く休載します。
3
お気に入りに追加
980
あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました
まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。
ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。
変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。
その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。
恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる