生活魔法は万能です

浜柔

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 ルキアスは改めてソロ探索することで、ザネクが奇妙なほど慎重だった理由を実感した。

(ザネクのことだから自分がどうこうじゃなくて魔物がエリリースに向かったら、だろうけど)

 ザネクだけなら不用意に十字路に踏み込んで魔物に襲われても、避けるなり撃退するなりできるはずだ。しかしそこで避けた時、その魔物がエリリースを襲いかねない。これを考えればザネクも慎重にならざるを得なかったに違いない。
 ルキアスは一つ頷きながら見えない横路の先を『鏡』で確かめ、首だけ出して確かめ、それから漸く十字路に入る。
 何も無くてそっと胸を撫で下ろす。しかし安堵してみれば、何もないのにビクビクしていた自分が滑稽に見える。

「ぼくは何をしてるんだろう……」

 どっちへ行けば良いのか判らなくなって立ち尽くした。
 不意に右手側に違和感を感じた。振り向けばホーンラビットが走り込んで来る。その向こうに人影は見えないので誰かの獲物ではなさそうだ。
 ホーンラビットの頭突きを半身で躱し、銃を立ち撃ちに構える。心持ち開き直った気分になっていたためか、無駄な力が抜けていてダン老人が合格点を出すだろう姿勢。構える向こう、折り返すホーンラビットに狙いを定め引き金を引く。
 命中。ホーンラビットは一瞬仰け反った後、のろのろと二、三歩歩いてどっと倒れ込んだ。

「ふぅ……。ザネクと違ってぼくはさっぱりだよ」

 ザネクなら躱す手間を入れずに仕留めたはずだと思い、自身の鈍っていた索敵を思えば、自身が全く進歩していないように感じられるルキアスだ。
 自分では進歩を気付きにくいものであった。
 その後は数度の戦闘を行うだけで、早めに探索を切り上げた。
 ダンジョンを出る。

「よう。確かお前さんがルキアスだったよな?」
「はい……?」

 ルキアスは名前を確かめるように声を掛けられた。
 見覚えのある探索者。若いながらもベテランの風格を思わせる赤毛の偉丈夫だ。

「リュミアに迷走しているらしいって聞いてな。気になるから一度話をしてみようかと思ったんだが、時間はあるか?」

(んん? リュミアさん……? それに赤毛……)

「あ! ザネクのお兄さん! えっと、えっと……」

 ルキアスは名前が出て来なかった。

「ザネクのお兄さんと来たか……。そりゃ一回会っただけじゃ、名前を憶えてる方が不思議だよな。ガノスだ」
「そうでした。ガノスさん。時間ならあります」
「そりゃ良かった。飯でも食いながら話をしよう。勿論俺が誘ってるんだから奢るぜ」
「あ、はい。ごちそうになります……?」
「何で疑問形なんだ?」
「奢られ慣れてないから……、でしょうか?」
「俺に聞くな」
「あはは……」

 笑って誤魔化すルキアスだった。
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