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305 どうせ売れんさ
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「シーサーペントって、さっきの死んだのだけじゃなかったの!?」
「んな訳あるか! あれだけだったら回廊から出て来るかよ!」
直接対峙すればシーサーペントに後れを取るロマ、リュミア、それにダン老人ではない。下から上がって来たシーサーペントが目に見える範囲で留まるなら早々に倒してそれで終わりだ。
この場合はわざわざ階層に出たりしない。階層に出てしまえば魔物との連戦が必至なのだから、傍にシーサーペントの骸が転がっていても回廊に留まっている。
しかしその骸となったシーサーペントがじわじわ迫られ続けていたらどうか。骸を攻撃しても無意味だ。そしてその骸を押しているだろう後続を攻撃しようにも骸に阻まれて届かない。後退を余儀なくされ、階層に出て来ざるを得なかった。
「あら、ロマならどうにかできたんじゃない?」
「止せやい。幾ら何でも一瞬じゃ片付けられんさ」
メイナーダが軽くにやけながら茶々を入れ、ロマが嫌そうに否定した。ルキアスとザネクにはさっぱり見えない会話だったものだから、二人は顔を見合わせて首を傾げた。
「それよりあっちで首を突き出してるシーサーペントをどうにかしてくれ。ここじゃ、全く落ち着けやしない」
シーサーペントは回廊のどこかに引っ掛かっているのか、絡み合って縺れてでもいるのか、のたうちながら詰まったままだ。しかしそれでもじわじわと出て来ているので、あまり悠長に眺めてもいられない。
「全部燃やした方がいいのね?」
「肉なんてどうせ売れんさ」
魔物が大発生した場合は事後に食肉が大量に買取所に持ち込まれる。これで買取所の処理が間に合わなくなれば、種類を問わずに食肉が極端に買い叩かれるか、買い取り拒否の憂き目をみる。ここで拾ってもそうなった後にしか持ち込めないと予想できる状況だ。拾うことに意味を見出せない。
また倒した魔物はその骸を拾うなり何なりしなければ歩く邪魔にもなる。これを端から焼き尽くせば魔石が残るのみなので、歩く邪魔にもならず、売るのを後日に回しても差し支えのない魔石の回収も楽になる。あまりに火力が強ければ魔石さえも割れたり燃えたりしてしまうので全て完璧とは行かないが、より良い結果にはなる。
「それもそうね。で、どこに行くのがいいかしら?」
「六層がいいんじゃないか? もし六層からも魔物が大量発生しててやり過ごせそうになかったら上に行けばいい」
ロマはメイナーダが居なければ強引にでもダンジョンからの脱出を試みただろう。シーサーペントやクラーケンが群れているのが予想される第五階層を通り抜けるのは大火力の範囲攻撃が無ければ厳しい。
メイナーダは一つ頷いた。
ロマとメイナーダの二人だけで方針を決めた形になったが、ルキアスに否やはなかった。ルキアスが他の皆の様子を窺っても特に異論がある様子ではなかった。
「んな訳あるか! あれだけだったら回廊から出て来るかよ!」
直接対峙すればシーサーペントに後れを取るロマ、リュミア、それにダン老人ではない。下から上がって来たシーサーペントが目に見える範囲で留まるなら早々に倒してそれで終わりだ。
この場合はわざわざ階層に出たりしない。階層に出てしまえば魔物との連戦が必至なのだから、傍にシーサーペントの骸が転がっていても回廊に留まっている。
しかしその骸となったシーサーペントがじわじわ迫られ続けていたらどうか。骸を攻撃しても無意味だ。そしてその骸を押しているだろう後続を攻撃しようにも骸に阻まれて届かない。後退を余儀なくされ、階層に出て来ざるを得なかった。
「あら、ロマならどうにかできたんじゃない?」
「止せやい。幾ら何でも一瞬じゃ片付けられんさ」
メイナーダが軽くにやけながら茶々を入れ、ロマが嫌そうに否定した。ルキアスとザネクにはさっぱり見えない会話だったものだから、二人は顔を見合わせて首を傾げた。
「それよりあっちで首を突き出してるシーサーペントをどうにかしてくれ。ここじゃ、全く落ち着けやしない」
シーサーペントは回廊のどこかに引っ掛かっているのか、絡み合って縺れてでもいるのか、のたうちながら詰まったままだ。しかしそれでもじわじわと出て来ているので、あまり悠長に眺めてもいられない。
「全部燃やした方がいいのね?」
「肉なんてどうせ売れんさ」
魔物が大発生した場合は事後に食肉が大量に買取所に持ち込まれる。これで買取所の処理が間に合わなくなれば、種類を問わずに食肉が極端に買い叩かれるか、買い取り拒否の憂き目をみる。ここで拾ってもそうなった後にしか持ち込めないと予想できる状況だ。拾うことに意味を見出せない。
また倒した魔物はその骸を拾うなり何なりしなければ歩く邪魔にもなる。これを端から焼き尽くせば魔石が残るのみなので、歩く邪魔にもならず、売るのを後日に回しても差し支えのない魔石の回収も楽になる。あまりに火力が強ければ魔石さえも割れたり燃えたりしてしまうので全て完璧とは行かないが、より良い結果にはなる。
「それもそうね。で、どこに行くのがいいかしら?」
「六層がいいんじゃないか? もし六層からも魔物が大量発生しててやり過ごせそうになかったら上に行けばいい」
ロマはメイナーダが居なければ強引にでもダンジョンからの脱出を試みただろう。シーサーペントやクラーケンが群れているのが予想される第五階層を通り抜けるのは大火力の範囲攻撃が無ければ厳しい。
メイナーダは一つ頷いた。
ロマとメイナーダの二人だけで方針を決めた形になったが、ルキアスに否やはなかった。ルキアスが他の皆の様子を窺っても特に異論がある様子ではなかった。
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