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303 炎の輪
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螺旋回廊を埋め尽くすような炎が迫る。地面を這う魔物が炎に巻かれて一瞬で黒焦げになる。
「やべぇ!」
ザネクの悲鳴にも似た声に押されるようにルキアスは『傘』を全力で飛ばす。旋回による遠心力で身体が外側に飛ばされそうになるのを『傘』を傾けて堪えながら加速する。魔物の攻撃に遭わないように天井付近を飛ぼうなんてしていられない。天井にぶつかる方が危険なのだから、回廊の真ん中を飛び抜ける。メガフロッグの攻撃が『傘』に中った振動が伝わって来るが無視だ。
それでも炎はじわじわ迫り来る。
「くっ! 来る!」
目前に迫った炎にザネクが覚悟にも似た声を上げた途端、炎がルキアスの『傘』を避けるように開いた。炎が天井、地面、壁を這うように先行して行く。
螺旋回廊の出口だ。ルキアスが迷わず『傘』を飛び出させて高度を取ると、炎はそれ以上追って来ることもなく、霧散した。
「うっわー、びっくりしたー……」
第四階層を眼下に捉えつつルキアスは大きく胸を撫で下ろした。ユアはいつもと変わらぬ様子だが、ザネクは顔が引き攣っていて声も無いらしい。
ルキアスは気持ちを落ち着けるためにも暫くそのまま漂う。するとメイナーダがテクテク歩いて戻って来た。
地面を歩けば上の階層へと向かうクロコダイルやメガフロッグが立ち塞がり、まとわりついて来る。だがメイナーダを囲って炎の輪が広がっていて、それに触れた途端に炎上、魔石を遺して燃え尽きる。そんな調子ではメイナーダ自身も焼け焦げそうなものだが、涼しい顔をしていて服が焦げる様子も全く無い。
この光景を上から見ていたルキアスとザネクは目を剥いて声を無くした。
そんなルキアスにメイナーダが笑いかける。
「もう、ルキアスちゃんたら、待っててって言ったのに。びっくりしちゃったじゃない」
「びっくりしたのはぼく達ですよ! 焼け焦げるかと思いました!」
「やあね、そんなことにはならないわよ。わたしがユアを間違える訳ないじゃない」
「え? ユアが乗ってるって判ってたんですか?」
もしもユアを乗せてなかったらどうなっていたのかと若干不安になったルキアスだが、それはどうにか表情に出すのを堪えた。
「勿論よ。だけど宙に浮いてるから何事かと思ったのだけど、ルキアスちゃんが飛んでたのね。乗ってるそれって『傘』かしら?」
「あ、はい。そうです」
ルキアスはメイナーダやロマには『傘』で飛べることを話していなかったのを思い出した。機会が無かっただけのことだが、先にロマが微妙な顔をしていた筈だ。
「驚いたわ。『傘』ってそんなことができるのね」
と、その時、第五階層への螺旋回廊の方から激しい銃声が聞こえた。
「やべぇ!」
ザネクの悲鳴にも似た声に押されるようにルキアスは『傘』を全力で飛ばす。旋回による遠心力で身体が外側に飛ばされそうになるのを『傘』を傾けて堪えながら加速する。魔物の攻撃に遭わないように天井付近を飛ぼうなんてしていられない。天井にぶつかる方が危険なのだから、回廊の真ん中を飛び抜ける。メガフロッグの攻撃が『傘』に中った振動が伝わって来るが無視だ。
それでも炎はじわじわ迫り来る。
「くっ! 来る!」
目前に迫った炎にザネクが覚悟にも似た声を上げた途端、炎がルキアスの『傘』を避けるように開いた。炎が天井、地面、壁を這うように先行して行く。
螺旋回廊の出口だ。ルキアスが迷わず『傘』を飛び出させて高度を取ると、炎はそれ以上追って来ることもなく、霧散した。
「うっわー、びっくりしたー……」
第四階層を眼下に捉えつつルキアスは大きく胸を撫で下ろした。ユアはいつもと変わらぬ様子だが、ザネクは顔が引き攣っていて声も無いらしい。
ルキアスは気持ちを落ち着けるためにも暫くそのまま漂う。するとメイナーダがテクテク歩いて戻って来た。
地面を歩けば上の階層へと向かうクロコダイルやメガフロッグが立ち塞がり、まとわりついて来る。だがメイナーダを囲って炎の輪が広がっていて、それに触れた途端に炎上、魔石を遺して燃え尽きる。そんな調子ではメイナーダ自身も焼け焦げそうなものだが、涼しい顔をしていて服が焦げる様子も全く無い。
この光景を上から見ていたルキアスとザネクは目を剥いて声を無くした。
そんなルキアスにメイナーダが笑いかける。
「もう、ルキアスちゃんたら、待っててって言ったのに。びっくりしちゃったじゃない」
「びっくりしたのはぼく達ですよ! 焼け焦げるかと思いました!」
「やあね、そんなことにはならないわよ。わたしがユアを間違える訳ないじゃない」
「え? ユアが乗ってるって判ってたんですか?」
もしもユアを乗せてなかったらどうなっていたのかと若干不安になったルキアスだが、それはどうにか表情に出すのを堪えた。
「勿論よ。だけど宙に浮いてるから何事かと思ったのだけど、ルキアスちゃんが飛んでたのね。乗ってるそれって『傘』かしら?」
「あ、はい。そうです」
ルキアスはメイナーダやロマには『傘』で飛べることを話していなかったのを思い出した。機会が無かっただけのことだが、先にロマが微妙な顔をしていた筈だ。
「驚いたわ。『傘』ってそんなことができるのね」
と、その時、第五階層への螺旋回廊の方から激しい銃声が聞こえた。
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