生活魔法は万能です

浜柔

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296 的は砂山

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 第五階層の砂浜が訓練場所だ。

「ここなら流れ弾を気にしなくて善いからの」

 これが理由。探索者がほぼ居ない階層だから、もし居ても直ぐに判る。そして砂浜なら跳弾もほぼ無い。
 的にするのは適当に盛った砂山だ。

「それでは各種銃器の違いを体験して貰おうかの。ピストルからの」

 ダン老人はそう言ってルキアスにピストルを貸した。
 ルキアスは初めての感触に最初こそおっかなびっくりだったが、直ぐに慣れた。銃には違いないのだ。

「このピストルに入れている弾丸は一〇弾相当になっとるの」

 ルキアスは「相当」の部分に疑問を感じたが、ここには言及しなかった。
 そんな事よりもと、構え方を習いつつ砂山に向かってピストルを両手で構え、引き金を引く。
 ガンと響く発射音。銃口が思いの外跳ね上がった。

「えっ!?」

 一〇弾を籠めたライフルではここまでの反動を感じない。反動の感覚だけならライフルで三〇弾か四〇弾を撃ったくらいだろうか。

「次はこれだの」

 ダン老人は奇妙にずんぐりした印象のライフルを差し出した。

「わっ! とっと……」

 ルキアスは受け取ろうとして一瞬落としそうになり、慌てて手に力を入れて支えた。

「重っ」
「ほっほっほ。わざと重く改造した銃だからの」
「でもこれじゃ扱いにくいんじゃ……」

 重ければ向きを変えるにも余分な力が必要だ。

「撃ってみれば判るの」

 これは尤もな話だ。ルキアスはダン老人に顎で促されるままに銃を構える。

(ますます重っ)

 立ち撃ちで構えるには銃を肩まで持ち上げなければならない。重量がもろに腕にのし掛かる。腕がぷるぷるするようなものではないのが救いだ。
 引き金を引く。バゥンと少し鈍い発射音が響く。

(あれ?)

 意外と反動が少なかった。

「これって二〇弾ですか?」
「違うの。四〇弾よの」
「え……?」

 ルキアス自身のライフルで四〇弾を撃った時より明らかに反動が小さかった。

「銃が重い方が反動が小さくなるとは昨夜言うたことだの」
「あ! そうでした……」

 俄には納得し難い話だったため、ルキアスはその時の話を記憶の片隅に追いやってしまっていた。
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