生活魔法は万能です

２９５ 多すぎ問題

　翌日。ルキアスはダン老人と午後からの待ち合わせをしたので探索を休む。約束が午後からなのはダン老人の朝が遅いことによる。夜に遊び歩いていては朝も遅くなろうと言うものだ。
　待ち合わせの場所はダンジョンの入口。ダンジョン内での訓練になる。
　ただ何故かロマが居て、ザネク、エリリース、シャルウィも居る。こっそり覗いているつもりのリュミアもだ。

　約束は昨晩、あっさり決まった。アイスクリームを食べ終わったダン老人が「明日にでもの」と指導を買って出てくれたのでルキアスは二つ返事で頷いた。それだけだ。
　そして今朝、ルキアスはいつものようにザネク達との待ち合わせの場所に行き、皆に事情を話して探索を休むと伝えた。するとどうしたことか、ザネク達が揃ってルキアスの訓練の様子を見学したいと言い出したのだ。
　ただこれはルキアスが許可するもしないもないので、ダン老人の意向を確かめてから決めることにした。
　そして昼までの時間、ルキアスはまたアイスクリーム作りに励んだ。ダン老人への報酬の先渡しである。ところがザネク達が食べたがったため、皆の分も含めてまた作り直す羽目になってしまった。とは言え、ダン老人にだけ振る舞う訳にも行かないので「食べたい」と言われなくても作ることにはなっていただろう。

　そしていよいよ約束の時間の少し前。ダン老人は待ち合わせ場所に現れた。何故か連れが居る。

「ダン爺がルキアスちゃんと遊ぶらしいから見に来たわ」
「ん！」
「メイナーダさんにユアも……」

　観客多すぎだ。どうしてこんなに多いのかと目眩を覚えそうなルキアスである。

「見たって絶対楽しくないですよ？」
「そんなことはないわ。ねー、ユア？」
「ん！」

　ユアが元気に手を振り上げて応える。
　しかし誰がメイナーダに話したか。ルキアスが訝しく周りを見ると、ロマがわざとらしくそっぽを向いて口笛を吹く真似をしている。どうやらロマらしい。

（ロマさんたら……）

　ルキアスは釈然としないものを感じながらも言及するのを避けた。
　それよりもアイスクリームが融ける前に皆に振る舞わなければならない。人数が増えた分だけ一人分が少し減るが致し方無しだ。ザネクに頼んでリュミアを連れてきて貰った。リュミアのバツが悪そうな表情はとても印象的だった。
　そしてユアがアイスクリームを食べて嬉しそうにしているのを見ている内に、ルキアスは観客多すぎ問題がどうでもよくなった。