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292 ムラ
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ルキアスは牛乳を煮詰め、ゆっくり『冷却』する。
そして菓子店が何かを泡立てていたやり方を見よう見まねで試す。力任せに掻き交ぜても煮詰めた牛乳は鍋の中をぐるぐる回るだけで空気をあまり含まないのは経験済みだ。
(チャッチャッチャッて感じだったから……)
泡立て器を鍋肌に沿って横に回すのではなく、縦に回す。まずはゆっくりと……。
ちゃぷちゃぷしている。
零さないように注意しながら泡立て器を速くする。力はできる限り入れない。
(こうだ。こうだったんだ)
少しずつだが目に見えて牛乳が泡立つ。このまま続ければふんわりとしたものになりそうだ。
前回の試作では必死に掻き回しても目に見えては泡立たなかった。一頻り掻き回した後で幾らか泡立ったのが判る程度。そしてその最初の試作の時にダン老人が来て話が纏まったため、結果的に試作は失敗した一回のみに留まって試行錯誤に至らなかった。
判ってみれば単純なことだ。何度か試作できていれば今悩む必要は無かっただろうことは想像に難くない。
(楽はさせて貰えないなぁ)
とは言え順番が前後しただけのことだ。満足の行くアイスクリームを作らなければならない意味では何も変わらなかった。こうして泡立て器を回していることも含めてだ。前の時に試行錯誤したならもっと悩んだかも知れないので少し楽ができた可能性はある。
そうこう取り留めもなく考えている間にも牛乳はかなり泡立った。間もなく泡立った牛乳は凍り、アイスクリームが出来上がる。
ルキアスは早速食べてみるのだが……。
(ムラがある?)
ふんわりした感覚の部分ともったりした感覚の部分が同居している。鍋の中を見てみれば、鍋底の隅がもったりしている。泡立て器が当たらない部分だ。
(道具を買い足さなきゃ……)
泡立て器を使うなら底の丸いボールを使わないと上手く撹拌できないのだ。泡立て器では容器の形状に囚われる。
一方、風魔法だったら術者の技量次第で鍋の形状を問わない。リュミアのように熟達していれば平底の鍋でも隅々まで撹拌可能だ。
ルキアスはついつい風魔法を羨んでしまいたくなったが、これは無い物ねだりになるので頭に過ぎった考えは捨てる。
気を取り直し、ボールを買い求めて再挑戦。
すると今のルキアスにはこれ以上は無理だろうと言えるアイスクリームが出来上がった。
そして菓子店が何かを泡立てていたやり方を見よう見まねで試す。力任せに掻き交ぜても煮詰めた牛乳は鍋の中をぐるぐる回るだけで空気をあまり含まないのは経験済みだ。
(チャッチャッチャッて感じだったから……)
泡立て器を鍋肌に沿って横に回すのではなく、縦に回す。まずはゆっくりと……。
ちゃぷちゃぷしている。
零さないように注意しながら泡立て器を速くする。力はできる限り入れない。
(こうだ。こうだったんだ)
少しずつだが目に見えて牛乳が泡立つ。このまま続ければふんわりとしたものになりそうだ。
前回の試作では必死に掻き回しても目に見えては泡立たなかった。一頻り掻き回した後で幾らか泡立ったのが判る程度。そしてその最初の試作の時にダン老人が来て話が纏まったため、結果的に試作は失敗した一回のみに留まって試行錯誤に至らなかった。
判ってみれば単純なことだ。何度か試作できていれば今悩む必要は無かっただろうことは想像に難くない。
(楽はさせて貰えないなぁ)
とは言え順番が前後しただけのことだ。満足の行くアイスクリームを作らなければならない意味では何も変わらなかった。こうして泡立て器を回していることも含めてだ。前の時に試行錯誤したならもっと悩んだかも知れないので少し楽ができた可能性はある。
そうこう取り留めもなく考えている間にも牛乳はかなり泡立った。間もなく泡立った牛乳は凍り、アイスクリームが出来上がる。
ルキアスは早速食べてみるのだが……。
(ムラがある?)
ふんわりした感覚の部分ともったりした感覚の部分が同居している。鍋の中を見てみれば、鍋底の隅がもったりしている。泡立て器が当たらない部分だ。
(道具を買い足さなきゃ……)
泡立て器を使うなら底の丸いボールを使わないと上手く撹拌できないのだ。泡立て器では容器の形状に囚われる。
一方、風魔法だったら術者の技量次第で鍋の形状を問わない。リュミアのように熟達していれば平底の鍋でも隅々まで撹拌可能だ。
ルキアスはついつい風魔法を羨んでしまいたくなったが、これは無い物ねだりになるので頭に過ぎった考えは捨てる。
気を取り直し、ボールを買い求めて再挑戦。
すると今のルキアスにはこれ以上は無理だろうと言えるアイスクリームが出来上がった。
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