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281 外れたな
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ルキアスはライフル弾の試し撃ちにまた竹林へ行く。ザネクもまたそれに付き合う。
「どうやらもう大丈夫みたいだな」
「え? 何のこと?」
「昨日、すげぇ落ち込み方だったから、今日はもう宿泊所から出て来ないかと思ってたぜ」
「そうしたい気分だったけど、それだと時間を無駄に使っちゃうだけだから……」
蒸気銃の改造に費やした時間は取り戻せない。そんな無為な時間を使ったと思い悩んでは無為の二乗で時間を無駄にするだけだ。
「それにライフルでも第七〇階層くらいまでは行けるらしいから、そこまでにまた考えればいいし、いつまでも浅い階層でもたもたもしてられないよね」
「そっか。うん。そうかも知れないな」
ザネクはうんうんと頷いた。
竹林に着き、ルキアスは的を用意する。威力を確かめるために奥行き方向には三〇本ばかり並べている。ここまで大きくすると桟も外枠だけでは安定せず、途中にも桟を張った。
最初に試すのは二〇弾。引き金を引く。
「あっ!」
ルキアスは発射音に重なるように失敗したとばかりの声を上げた。今までと同じ感覚で撃ったら予想外に反動が大きく、銃口が跳ね上がったのだ。
弾丸は的の上へと外れた。
「随分外れたな」
「うん。反動が強くて……。次はもっとしっかり構えるよ」
ルキアスは手に力を籠めて銃を保持し引き金を引く。今度はどうやらそこまでの力は必要ではなかったようだ。
その後も一発毎に握り方や力の入れ方を調整しつつ発射する。安定するまでに一〇発以上を要した。
「弾丸を変えたら思った以上に撃つのが難しいよ」
「弓で矢を変えるようなものか」
ルキアスは矢についての知識に乏しいので何とも答えを返せなかった。曖昧に頷いて返すだけで次の試し撃ちに入る。
三〇弾の反動は二〇弾の倍を超えるが、心構えをして銃をしっかり保持していたので振り回されることは無かった。しかし銃口が跳ね上がるのまでは抑え切れず、次弾を撃てるようになるまでには相応の時間が掛かる。
四〇弾になると、身体全体が仰け反りそうになるのを抑えるのに励まなければならなかった。
(撃ち方変えなきゃいけないな……)
一〇弾なら多少無理な向きにも撃てたが、二〇弾以降はそうも行かないようだ。腰だめで左に撃つのは三〇弾までならどうにかできそうだが、四〇弾はそうも行かない。正面に撃つのでも銃床をしっかり固定しなければ命中させられるように感じられなかった。
「どうやらもう大丈夫みたいだな」
「え? 何のこと?」
「昨日、すげぇ落ち込み方だったから、今日はもう宿泊所から出て来ないかと思ってたぜ」
「そうしたい気分だったけど、それだと時間を無駄に使っちゃうだけだから……」
蒸気銃の改造に費やした時間は取り戻せない。そんな無為な時間を使ったと思い悩んでは無為の二乗で時間を無駄にするだけだ。
「それにライフルでも第七〇階層くらいまでは行けるらしいから、そこまでにまた考えればいいし、いつまでも浅い階層でもたもたもしてられないよね」
「そっか。うん。そうかも知れないな」
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弾丸は的の上へと外れた。
「随分外れたな」
「うん。反動が強くて……。次はもっとしっかり構えるよ」
ルキアスは手に力を籠めて銃を保持し引き金を引く。今度はどうやらそこまでの力は必要ではなかったようだ。
その後も一発毎に握り方や力の入れ方を調整しつつ発射する。安定するまでに一〇発以上を要した。
「弾丸を変えたら思った以上に撃つのが難しいよ」
「弓で矢を変えるようなものか」
ルキアスは矢についての知識に乏しいので何とも答えを返せなかった。曖昧に頷いて返すだけで次の試し撃ちに入る。
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(撃ち方変えなきゃいけないな……)
一〇弾なら多少無理な向きにも撃てたが、二〇弾以降はそうも行かないようだ。腰だめで左に撃つのは三〇弾までならどうにかできそうだが、四〇弾はそうも行かない。正面に撃つのでも銃床をしっかり固定しなければ命中させられるように感じられなかった。
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