生活魔法は万能です

浜柔

文字の大きさ
上 下
278 / 627

278 あれ?

しおりを挟む
 ルキアスが蒸気銃の改造に勤しんでいる間、ザネクは『傘』の強化に努めたらしい。シャルウィとエリリースはそれぞれに『冷却』をマスターし、アイスクリーム作りに励んでいたと言う。いつでも冷たいお菓子を食べられれば夏も快適だ。既に各種フレーバーに挑戦しているだとか。
 そんな彼らに感心しつつ、ルキアスはまたまた試し撃ちへと出掛ける。ザネクもまた同行だ。シャルウィとエリリースはお互いのアイスクリームを食べ比べするのだと地下二階の炊事場へ行った。
 試し撃ちの場はまた竹林。竹を束ねて的にする。

「この前より小さくなってないか?」

 ザネクはルキアスが蒸気銃を取り出すなりそう尋ねた。横に並べて見比べなくても差が判る程の違いなのだ。

「うん。アダマントを薄く延ばして鉄に挟み込んでみたんだ」
「なるほどな」

 ザネクはルキアスの前回の実験の様子を思い出して納得した。至近からの銃弾を受けてもビクともしないアダマントなら強度は十分と予想に難くない。
 そんなザネクの見守る前、ルキアスは発射手順を一つずつこなす。手始めは動作確認も兼ねた三〇〇度の蒸気。引き金を引く。
 パァン! と甲高い音を立てて銃から飛び出した弾丸は的に命中した。
 ルキアスは安堵の息を大きく吐く。

「うん。問題なし!」
「これで終わりなのか?」
「ううん。まだまだこれからだよ」

 答えたルキアスは次弾の発射手順をこなす。今度は一足飛びに三五〇度。引き金周りの軋みも無い。
 引き金を引けば、先に倍する音を立てて弾丸が飛ぶ。弾丸は的を貫通した。

「的が薄くないか?」
「だね……」

 ルキアスは的を四倍の厚さにした。ここまで厚くなれば殆ど箱形だ。そして使う竹の数も多くなりすぎて紐では結び切れず、竹の桟を四角く組んで枠にして竹筒を入れた。

「こんな風に厚くしたら的っぽくないや」

 ルキアスはザネクと顔を見合わせて笑った。
 そして再度三五〇度で試す。弾丸は的で最も奥になる竹に食い込んで止まった。
 的の厚さを更に倍にして三六〇度、三七〇度、三八〇度と試し、三九〇度で試した時。

「あれ?」
「どうした?」
「三八〇度と三九〇度で威力が変わらなかったんだ」
「間違ったんじゃないか?」
「そうなのかな……」

 しかし何度試しても、三八〇度で試した時以上に威力が上がることは無かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

処理中です...