276 / 627
276 薄板の実験
しおりを挟む
「あっ!」
ルキアスは寝床で小さく声を上げた。寝床に入って眠るまでの間、脳裏に浮かぶのはやはり蒸気銃改造の件だったのだが、流されるままにおさらいをする途中で閃いた。
(アダマントを鉄で挟んでみよう)
アダマントと鉄を貼り合わせての固定が難しくてもアダマントを鉄で包んでの固定なら可能だ。これを薄板で行えば立派な板材となる。銃の構造材にもなろうと言うものだ。
尤も、板材にした後で加工しようとすると切断が困難な上、切断できても断面で剥がれかねないため、結果として挟まるような加工手順となる。
ともあれ、アダマントを薄板にした場合の強度を確かめなければ蒸気銃の改造をする訳には行かない。
だから翌日は実験だ。
付き合いの良いザネクはまたルキアスに同行した。ザネク自身も『傘』の練習を続けるらしい。
実験にはまた竹林へ行く。竹林まで離れれば他の誰かが紛れ込んで来るのは稀だ。安心して実験できる。それにタケノコも調達できるのでルキアスにとっては大変好ましい。
その竹林までの道中、ドコッと鈍い音が響く。
「『傘』の練習にはこの階のホーンラビットが楽でいいぜ」
そう言って愉快そうに笑うザネクは全身をすっぽり覆うような『傘』を差している。これならホーンラビットがどこから来るか気にする必要も無い。二羽三羽と一度に襲って来たら間引く必要があるが、一羽だけならそのまま攻撃するに任せる。そして『傘』が壊れたらホーンラビットを倒してまた『傘』を差し直すのだ。
竹林に着き、ルキアスはアダマントを填め込む隙間を空けた的を用意し、アダマントの一部を紙のように薄く延ばして填め込む。
この延ばした部分をライフルで撃つのだが、的が小さいので極近距離で撃たなければならず、跳弾の危険がそれだけ増す。
撃つ寸前でこれに気付いたルキアスは一旦中止し、逡巡の後、竹で真ん中に穴の空いた的とも言うべき盾を作った。これを的の前に立て、穴からアダマントを狙う。更にルキアス自身は盛り土に隠れ、『傘』も差して防御を固める。そして『鏡』で銃口の向きを確かめて狙いを定め、引き金を引く。
発射音。続くのがキーンと甲高い金属音。そしてボッと鈍い音。
ルキアスがアダマントを確かめると、アダマントの延ばした部分に微かな跡があった。命中したのだ。だが跡だけで傷が無い。
(凄……)
聞いた話より遥かに強度があった。
それから金属音後の鈍い音の正体を探ると、盾にした竹に穴が空いていた。弾丸が盾を貫通していたのだ。この弾丸は盛り土の半ばで見付かった。延長線上にはちょうどルキアスの頭があった場所。
(怖っ……)
直ぐに盾や盛り土を増強した。
ルキアスは寝床で小さく声を上げた。寝床に入って眠るまでの間、脳裏に浮かぶのはやはり蒸気銃改造の件だったのだが、流されるままにおさらいをする途中で閃いた。
(アダマントを鉄で挟んでみよう)
アダマントと鉄を貼り合わせての固定が難しくてもアダマントを鉄で包んでの固定なら可能だ。これを薄板で行えば立派な板材となる。銃の構造材にもなろうと言うものだ。
尤も、板材にした後で加工しようとすると切断が困難な上、切断できても断面で剥がれかねないため、結果として挟まるような加工手順となる。
ともあれ、アダマントを薄板にした場合の強度を確かめなければ蒸気銃の改造をする訳には行かない。
だから翌日は実験だ。
付き合いの良いザネクはまたルキアスに同行した。ザネク自身も『傘』の練習を続けるらしい。
実験にはまた竹林へ行く。竹林まで離れれば他の誰かが紛れ込んで来るのは稀だ。安心して実験できる。それにタケノコも調達できるのでルキアスにとっては大変好ましい。
その竹林までの道中、ドコッと鈍い音が響く。
「『傘』の練習にはこの階のホーンラビットが楽でいいぜ」
そう言って愉快そうに笑うザネクは全身をすっぽり覆うような『傘』を差している。これならホーンラビットがどこから来るか気にする必要も無い。二羽三羽と一度に襲って来たら間引く必要があるが、一羽だけならそのまま攻撃するに任せる。そして『傘』が壊れたらホーンラビットを倒してまた『傘』を差し直すのだ。
竹林に着き、ルキアスはアダマントを填め込む隙間を空けた的を用意し、アダマントの一部を紙のように薄く延ばして填め込む。
この延ばした部分をライフルで撃つのだが、的が小さいので極近距離で撃たなければならず、跳弾の危険がそれだけ増す。
撃つ寸前でこれに気付いたルキアスは一旦中止し、逡巡の後、竹で真ん中に穴の空いた的とも言うべき盾を作った。これを的の前に立て、穴からアダマントを狙う。更にルキアス自身は盛り土に隠れ、『傘』も差して防御を固める。そして『鏡』で銃口の向きを確かめて狙いを定め、引き金を引く。
発射音。続くのがキーンと甲高い金属音。そしてボッと鈍い音。
ルキアスがアダマントを確かめると、アダマントの延ばした部分に微かな跡があった。命中したのだ。だが跡だけで傷が無い。
(凄……)
聞いた話より遥かに強度があった。
それから金属音後の鈍い音の正体を探ると、盾にした竹に穴が空いていた。弾丸が盾を貫通していたのだ。この弾丸は盛り土の半ばで見付かった。延長線上にはちょうどルキアスの頭があった場所。
(怖っ……)
直ぐに盾や盛り土を増強した。
3
お気に入りに追加
854
あなたにおすすめの小説
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
元探索者のおじいちゃん〜孫にせがまれてダンジョン配信を始めたんじゃが、軟弱な若造を叱りつけたらバズりおったわい〜
伊藤ほほほ
ファンタジー
夏休み。それは、最愛の孫『麻奈』がやって来る至福の期間。
麻奈は小学二年生。ダンジョン配信なるものがクラスで流行っているらしい。
探索者がモンスターを倒す様子を見て盛り上がるのだとか。
「おじいちゃん、元探索者なんでしょ? ダンジョン配信してよ!」
孫にせがまれては断れない。元探索者の『工藤源二』は、三十年ぶりにダンジョンへと向かう。
「これがスライムの倒し方じゃ!」
現在の常識とは異なる源二のダンジョン攻略が、探索者業界に革命を巻き起こす。
たまたま出会った迷惑系配信者への説教が注目を集め、
インターネット掲示板が源二の話題で持ちきりになる。
自由奔放なおじいちゃんらしい人柄もあってか、様々な要因が積み重なり、チャンネル登録者数が初日で七万人を超えるほどの人気配信者となってしまう。
世間を騒がせるほどにバズってしまうのだった。
今日も源二は愛車の軽トラックを走らせ、ダンジョンへと向かう。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる