生活魔法は万能です

２７５ 強度不足

　ルキアスは蒸気銃の引き金周辺の耐久力アップを図った。主に銃床周りになる。
　ストッパー、これは蒸気タンクの噴出口に栓棒を差し込んだ位置で固定するためのパーツだが、これを支える部分の強度が不足していて軋んだのだ。ストッパー自身の強度も心許ない。
　そこでストッパーを支える部分の鉄を肉厚にして強度を上げ、ストッパーも肉厚にする。
　引き金も大型化する。ストッパーを肉厚にすることと、蒸気圧を高めることとで重くなる引き金を引きやすくする。蒸気圧を高めれば栓棒を押す力が強くなり、ストッパー直付けの引き金ももろに影響を受けるのだ。
　これに伴ってストッパーを跳ね上げるバネ板ももっと強いものに交換する。このバネ板ばかりは購入せざるを得なかった。
　また、蒸気圧を上げて試し撃ちした際、発射時に栓棒が後退して銃床を叩く衝撃が無視できなくなったため、コイルバネを用いた衝撃吸収用パーツを追加した。
　ルキアスは改造した蒸気銃を構えてみる。

（重っ）

　各種鉄製パーツを肉厚にした分だけ重量が増した。重量バランスが変わったためか、増した重量以上に重く感じる。取り回しにもかなり支障がある。

（もっと軽くて丈夫な材料じゃないとだめなんだ……）

　心当たりは無くもない。アダマントだ。しかしあまりにも量が少ない。極一部に使っても減らせる重量は極僅か。
　煮詰まったルキアスは気晴らしを兼ねて食事の仕度。馬鈴薯を醤油で煮詰める。

（この鍋はブリキだったっけ）

　素材のことで煮詰まっていたルキアスは自然と鍋の材質に目を向けた。蒸気銃にブリキを使うことを考えてみるが、望んだ耐久力を得られるとは思えない。尤も、ブリキの製造法が判らないので使おうにも使えない。

（あ、でも、メッキはありなのかな？）

　ブリキはメッキだ。メッキならば使う量は少ない。手持ちのアダマントでもメッキになら十二分な量がある。
　だが、製造法が判らなくてメッキ加工はできない。それでも考え方だけなら利用可能だ。

（似たようなのならできるかな？）

　薄く延ばして表面に貼る。いや、それではまた接着問題が出る。単純には行かない。

（馬鈴薯の煮っ転がしってパンに挟むのありかな……？）

　ルキアスは煮た馬鈴薯を食べながら脈絡も無く不意に思った。しかし何かヒントになるような気になった。