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270 氷菓子
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翌日の昼休憩。
「ルキアス、氷ちょうだい」
シャルウィはルキアスに水の入ったカップを突き出した。ルキアスは苦笑しつつもその水を凍らせる。氷ならそれが融けて無くなるまで水の注ぎ足しで冷たい水を飲める。昼休憩の時間内なら一塊の氷が在れば十分だろう。ルキアスも一回で済むなら拒むほどの煩わしさではない。
昨日だけでは、シャルウィは水を凍らせることも、冷たい水を出すこともできなかった。ザネクは『冷却』はできなかったが『湧水』で冷水を出すことは叶った。何事にも個人差はあるものだ。
「ありがと」
礼を言ってカップを引っ込めたシャルウィはその上から『湧水』で水を入れて飲む。冷たい水が汗ばんだ身体に一服の清涼剤となって染み込んで行く。
「エリリースも良かったら」
ルキアスは目を丸くして見ているエリリースに問い掛けた。
「あの、氷を作れるのですか?」
エリリースは問い返した。尋ねられていても驚きが先に立てば問い返したくもなるものだ。
「あ、うん」
ルキアスはそんなエリリースに事の経緯を掻い摘んで説明する。するとエリリースは素直に表情で驚きを表した。
「驚きましたわ。氷、いただきますわ」
エリリースがカップに水を入れて差し出し、ルキアスが氷にする。
そのカップに少し水を注いでゆっくり回し、水が冷たくなったところで飲み干すエリリース。自然と顔が綻ぶ。
「冷たくて美味しいですわ。これ程簡単に氷が出来るなら、シャーベットも作れそうですわね」
「シャーベット。いいな、それ。今度作ってみないか?」
シャーベットの名前に目を輝かせたのはザネクだ。
「それならアイスクリームがいいわ!」
シャルウィはアイスクリームが好みらしい。
「アイスクリーム! それも素晴らしいですわね」
エリリースはパンと掌を合わせて笑みを零す。視線が少し彷徨ったのは想像したからだろう。
(あれ? 何か氷菓子を作る流れ?)
ルキアスは若干の不穏さを感じずにいられなかった。
そしてこの予想はこの通りに報われる。俄に盛り上がった三人によって済し崩しにアイスクリームを作ることになった。
「そんじゃ、今日はもう引き上げようぜ」
「賛成ー!」
「はい!」
「あ、うん……」
肝心のルキアスが少々話から置いてきぼりにされていた。
「ルキアス、氷ちょうだい」
シャルウィはルキアスに水の入ったカップを突き出した。ルキアスは苦笑しつつもその水を凍らせる。氷ならそれが融けて無くなるまで水の注ぎ足しで冷たい水を飲める。昼休憩の時間内なら一塊の氷が在れば十分だろう。ルキアスも一回で済むなら拒むほどの煩わしさではない。
昨日だけでは、シャルウィは水を凍らせることも、冷たい水を出すこともできなかった。ザネクは『冷却』はできなかったが『湧水』で冷水を出すことは叶った。何事にも個人差はあるものだ。
「ありがと」
礼を言ってカップを引っ込めたシャルウィはその上から『湧水』で水を入れて飲む。冷たい水が汗ばんだ身体に一服の清涼剤となって染み込んで行く。
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「あの、氷を作れるのですか?」
エリリースは問い返した。尋ねられていても驚きが先に立てば問い返したくもなるものだ。
「あ、うん」
ルキアスはそんなエリリースに事の経緯を掻い摘んで説明する。するとエリリースは素直に表情で驚きを表した。
「驚きましたわ。氷、いただきますわ」
エリリースがカップに水を入れて差し出し、ルキアスが氷にする。
そのカップに少し水を注いでゆっくり回し、水が冷たくなったところで飲み干すエリリース。自然と顔が綻ぶ。
「冷たくて美味しいですわ。これ程簡単に氷が出来るなら、シャーベットも作れそうですわね」
「シャーベット。いいな、それ。今度作ってみないか?」
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「それならアイスクリームがいいわ!」
シャルウィはアイスクリームが好みらしい。
「アイスクリーム! それも素晴らしいですわね」
エリリースはパンと掌を合わせて笑みを零す。視線が少し彷徨ったのは想像したからだろう。
(あれ? 何か氷菓子を作る流れ?)
ルキアスは若干の不穏さを感じずにいられなかった。
そしてこの予想はこの通りに報われる。俄に盛り上がった三人によって済し崩しにアイスクリームを作ることになった。
「そんじゃ、今日はもう引き上げようぜ」
「賛成ー!」
「はい!」
「あ、うん……」
肝心のルキアスが少々話から置いてきぼりにされていた。
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