生活魔法は万能です

２６４ 繋げられるか

　最低限、鉄製カバーと木製カバーとの間の空間を確保するためのスペーサーに耐熱・断熱素材を使えば間に合わせられるが、できれば鉄製カバー部分を断熱素材に置き換えられるに越したことはない。そうすれば火傷の心配が多少なりとも減る。
　ルキアスは未練を残さないためにも骨をどうすれば繋げられるか考えてみる。
　釘は論外だろう。ネジ止めでも締め付けた際に容易に割れそうだ。それに割れなくても熱がネジを伝わる。断熱用のパーツを留めるためとしては不都合だ。
　用途を鑑みて適切なのは噛み合わせるか、接着だ。
　噛み合わせるのは一定の加工精度が求められる。工作も少し細かくなる。しかしそんな精度を出せるならその方面の職人に成れるだろうし、何より細かい工作には時間が掛かる。

（時間は掛けたくないよね……）

　蒸気銃作りに時間が掛かれば探索の進捗が遅れ、勘も鈍る。出来上がった銃がその遅れを取り戻して余りある出来になるなら敢えてそれを目指すのも選択肢だが、どう考えてもそこまでの出来にはならない。
　そうなると接着と言うことになるが、接着剤にニカワなんかは使えない。熱すれば融けるし焦げるし燃える。

（接着するとしても熱に強い接着剤が必要だもんね）

　それこそオークの骨のように。
　ルキアスは粉になった骨に目をやった。

（ん？　待てよ？　骨の粉を水で捏ねて焼き固めたらいいんじゃ……）

　陶器とまでは行かなくてもレンガ程度にはできるだろう。
　ルキアスは食べかけの馬鈴薯を手早く胃袋に収めると、骨片を二つ、適当に磨いて用意する。ここまでに出来た骨粉を集め、水を加えて練る。磨いた二つ骨片を練った骨粉で繋ぎ、先日作った鉄板に載せる。水が沸騰する寸前の温度を維持して乾くのを待ち、乾いたら温度を徐々に五〇〇度超まで上げる。
　そのまま暫く待てば何となく焼き上がった感じになった。
　冷めるのを待ってから、手に取って検分だ。

（あ……）

　焼き固めた筈の部分がボロッと行った。

（それにレンガみたいなのじゃ付かないよね……）

　水を加えて練ってる段階なら何となく付きそうでも、乾けば接着力など無くなっている。乾いた時に接着できていなければそれっきりだ。そんなもので磨いてツルッとしている骨を付けようとしたのだから失敗して当然と言うもの。せめて骨の表面が凸凹してたらまだ付いた可能性があっただろう。
　だがこの可能性もマシな程度でしかない。

（骨の表面を凸凹させて実験しても時間の無駄っぽいよね……）

　ルキアスは骨粉での接続は諦めた。
　ともあれあまり夜が遅くなってはいけないので今日はここまでだ。