生活魔法は万能です

浜柔

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 リュミアが金魚のフンと化して一〇日余りが過ぎた週末。その一〇日の間に突入を果たしている第八階層をルキアス、ザネク、シャルウィの三人だけで探索していた。
 第七階層と第八階層の違いは魔物の強さが多少違うくらい。今日はエリリースの安全を確保する必要も無いためか、ザネクは『鏡』も使わずにさくさくと足を進める。見通しの悪い場所にもルキアスからは不用意に見える歩き方で入って行く。そのくせシャルウィが警告する前から不意に足を止める場合がある。そんな時は脇道などから魔物が現れるのだ。

「もしかしてザネクも魔物を察知できるようになったの?」
「いや、まだだぞ」
「それにしては立ち止まった時っていつも魔物が出るよね?」
「あー、はっきりとは判らないが、何か嫌な感じがするんだよな」
「そんな感じなんだ……」

 明らかに察知の前段階だ。ルキアスは些かの羨望と共に得心もした。ダンジョンに来る前の努力はルキアスと比べてザネクが遥かに多いだろう。ダンジョンに来てからもルキアスが銃作りに努力している間も探索をしていたのだ。大きな差があっても不思議でない。

(天職の違いもあるもんな……)

 いつかのリュミアの口振りではザネクの持つ天職は察知能力会得の助けになるようだ。これを考えると少し切なくなるルキアスだが、天職こそは無い物ねだりでしかないのでぐっと堪える。それの要らない相棒も手にしているのだ。自作までして。今は『収納』の肥やしになっているのが玉に瑕だが……。

(そうだ……。蒸気銃もどうにかしなくちゃだった)

 市販の銃は階層が深くなるにつれて微妙に感触が悪くなっている。急所に中りさえすれば一撃で倒せるのは第八階層でも変わらないので傍目には差が見えないが、ルキアス自身は微かな差違を感じている。
 これを解決するには銃弾を別のものに替えるか、銃そのものを替えるしかない。
 直ちにしなければならない訳ではないのが救いだ。

(蒸気銃は一発の威力を高めた方がいいよね……。連射するなら別の方式にしなくちゃだし)

 即応性を高めようとしても限界がある。無理に高めようとすれば無為に疲労が蓄積するだけだ。それでいて然程速くもできない。市販の銃のような使い勝手を求めても実現可能性が無いのでここぞの一発に賭けるのが生かす道だろう。

「ルキアス! 置いて行くぞ!」
「あ、ちょっと待って!」

 考え事をしている間に遅れていたルキアスは慌てて二人を追い掛けた。
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