生活魔法は万能です

浜柔

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256 落とし物したみたい

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 休憩時間にルキアスが動く。

「落とし物したみたいだから探してくるね」
「手伝おうか?」
「ううん。多分そこの角を曲がった所で落としたと思うんだ。そこで見付からなかったら戻るから独りで大丈夫だよ」
「そうか? 早く探してルキアスも休めよ」
「うん」

 そんなやりとりの後にルキアスが後方の角を曲がって見回すと、リュミアは頭隠して尻隠さずな様子で直ぐ先の曲がり角に居た。

「何をしてるんですか……?」
「こんな時だけは勘がいいの……ね」

 リュミアはバツが悪そうに前髪を弄りながら向き直る。
 ルキアスとしてはあまり勘とは関係無かったので少々的外れな言われ方だが、そこをとやかく言う場面でもない。

「エリリースに付いて回るなら一緒に来ればいいんじゃないですか?」

 ルキアスとてここで「ぼく達」と言う程ものが見えてない訳ではない。

「そうした方がわたしも安心なのだけど、それではダメなの……ね。ルキアスくんが今安心しているように、みんなが安心してしまったらいけない……わ。安心は依存と隣り合わせだから……ね」

 ルキアスはドキリとした。指摘された通りにリュミアを見て安堵してしまった自覚がある。エリリースの安全が約束されていたことにだが、本来ならルキアス自身が守る立場なのだ。安堵はそれをあっさり投げ捨ててリュミアに依存したに等しい。
 リュミアは皆の成長を促すために同行しないようにしたのだ。それでいて後を付いて回っているのは心配性の表れだ。最も同行を望んでいるのは、そして同行が安心に繋がるのはリュミアだろう。

「だからルキアスくんは他のみんなには内緒にして……ね?」
「判りました……」

 もしもザネクまで緊張感を無くしてはリュミアの思いも全て無駄になってしまう。ルキアスは口を滑らさない努力を始めた。そしてリュミアと別れ、休憩場所へと戻る。

「遅かったな。落とし物は見付かったのか?」
「あ、うん。ちょっと変な所に入り込んでたからちょっと手間取ったんけどね」
「なら、いいが、直ぐに出発だぞ?」
「うん。判った」

 ルキアスはさっと水分補給などを済ませ、殆ど休む間もなく探索を再開することになった。
 しかし休憩が取れなかったのは些細なことだ。鏡にちらちらと映る影にどうしても気を取られてしまうが故に。
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