生活魔法は万能です

浜柔

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「で、リュミア姉ちゃん、天職に魔法を持ってたらどうのってのは? いや、それよりどうしてそう言うことができるようになるって教えてくれなかったんだ?」
「二人にはまだ早いと思ったから……よ。できると言われた事がずっとできなかったら辛いもの……ね」
「確かに……」

 ルキアスは「できる」と言われていたなら、焦燥感に苛まれていた可能性を否定できない。
 昔に似たような経験がある。故郷の町で同年代の友人知人が次々に天職に目覚めているのを横目で見ているしかなかったこと。その頃には「自分も早く」と願い続けたものだ。恐らくはそれが焦燥感だった。もしも周りが天職に目覚めるのを知らないままなら抱かなかったに違いない。
 ならば知らずに過ごせていれば良かったか。それは定かでない。後で知ったなら焦燥が一度に押し寄せて来てショックを受けていたかも知れないからだ。逆に何とも思わなかったかも知れない。
 まあ、仮定を考えても詮無きことだ。今回の魔物を察知する能力についても直面してみなければ判らない。

「ガノスがなかなか感じられなくてとても悔しそうにしていたの……よ」
「兄ちゃんも苦労したんだ?」
「そう……ね。誰でも少しずつ苦労はあるわ……ね。魔物を感じるのが遅かったのは彼の天職が物理系統だからかしら……ね。それを考えればザネクはガノスより早いのではないかし……ら」
「……」

 これにザネクは頭を掻くことで応えた。

「まだ気に入らないのかし……ら? 使い勝手が悪いのは判るけれど……ね。たまには使ってあげないと、いざと言う時に使えないわ……よ?」
「判ってるよ」

 ルキアスには二人の話が朧気にしか見えなかったが、ザネクが自分の天職をあまり好んでいないのだけは何となく判った。




 リュミアから誰もが探索者を長く続けていれば魔物を察知できるようになると聞きはしたが、聞いたからってできるようになるものではない。更に一週間が過ぎてエリリースが魔物全てを察知できるようになってもルキアスとザネクはさっぱりだ。
 そのためか、暫くは何かと膝を突き合わせてひそひそ話し合う男二人の姿が見られた。
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