生活魔法は万能です

浜柔

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242 特訓の成果

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「エリリース!?」
「リュミア姉ちゃんも?」

 エリリース在る所にリュミア在りとでも言うか如く、エリリースの横にはリュミアが苦笑を浮かべながら佇んでいた。

「どうしてここに?」
「第六階層は今日から……ね? 二人だけでは疲れて早く帰って来ると思ったの……ね」
「なるほど……」

 全くその通りなので頷くしかないルキアスだ。

「でも、エリリースがぼく達と一緒に探索するって言うのは……?」
「それなのだけど……ね。きっと二人だけでは先に進めそうになくて仲間を増やそうと考えるのではないかしらと、うっかりエリリースに漏らしてしまって……ね」

 リュミアは甚だ疲れたように息を吐く。
 それでルキアスも大体の事情の想像は付いた。エリリースが立候補して、それを思い止まらせようと説得するも失敗したのだ。かなり頑張ったに違いない。
 しかし店員にはそんなリュミアの機微はどうでも良かった。立ったままの二人にの傍に来て睨み付けている。

「注文しないならさっさと出てっておくれ」
「待って、注文する……わ」

 リュミアとエリリースはそれぞれザネクとルキアスの横に座り、リュミアがさっとテーブルの上を見て注文を言う。

「わたしがラビット丼、彼女がクラーケンかつ定食でお願い……ね」
「毎度」

 店員は無愛想に返事すると、厨房の方へと戻って注文をコールした。
 しかしこれで落ち着いて話せると言うものだ。

「それでエリリースは大丈夫なの? オークとか……」
「勿論ですわ。特訓いたしましたから。今や大好物ですのよ」
「大……好物?」

 ルキアスは盛大に疑問符を浮かべ、説明を求めるようにリュミアを見た。

「それが……ね。エリリースは毎日オークの兜煮を食卓に並べたそうなの……ね」
「兜煮?」
「判りやすく言ったら、オークの頭の姿煮だな」
「ええ!?」

 ルキアスが素っ頓狂な声を上げたものだから注目が集まった。ルキアスは愛想笑いを浮かべて周囲に頭を下げると、テーブルに身を乗り出して声を潜めた。

「アレを食べるの? あの顔を見ながら……」

 尋ねた相手はザネクだ。ザネクは「そうなるな」と頷いて返す。

「もしかしてそれが特訓なの?」

 ルキアスはぐりんと頭を回してエリリースを見る。するとエリリースがどや顔だ。

「その通りですわ。最初は苦労いたしましたけれど、その甲斐有って今は美味しそうにしか見えませんわ」
「ええ……」

 ルキアスはちょっとばかり引いた。

(特訓の方向性間違ってるよね……)

 ちらりとリュミアの様子を窺うと、額に手を当てて苦悶の表情を浮かべていた。
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