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234 どうしてここに
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「よう! また会ったな!」
クラーケンの上でどや顔を決めるのは昨日ルキアスとザネクが海に浮かんでいるのを助けた猟師だ。
ところがザネクは猟師を呼ぼうとして口籠もる。
「あんたは! えーと……」
「そう言や名乗ってなかったな。ヘルドだ」
「お、おう! ヘルド、助かったぜ!」
「いいってことよ。これで借りも返せたようだしな」
「ああ! これで貸し借り無しだ!」
これは勿論ルキアス、ザネクとヘルドとの貸し借りがだ。ザネクがルキアスに借りていると思っているのは命二つ分、今回の事で返せたのは精々命半分くらいだと考えているのでまだまだ清算はできていない。ルキアスに貸しを作った覚えが無いからザネクの勝手な思いでしかないが、返さないと落ち着かないのだからしょうがない。
それはそれとして、ここで貸し借りを云々するのは、ダンジョン内では義理がかなりものを言うからだ。何かで板挟みになった場合は義理のある方に味方する。それが時として身の破滅を呼ぶのだから、日頃から清算して後腐れを無くしておくに越したことはない。
「でもどうしてここに?」
大きな疑問はここだ。
「お前達が飛んで行くのを見張りが見付けてな。何か危なっかしく見えたからこっちの方に来たんだ。そしたら水柱が上がっただろ? 何かヤバくなってるんじゃって駆け付けた訳だ」
「そんなに危なっかしい?」
「おう。びっくりするぐらいにな」
「あちゃー……」
ザネクは額に手を当てて凹んだ。ルキアスにそんな部分があったら止める立場に居ながら一緒に危うい事をしてしまっていた。実際危うかったし、傍目にそう見えるなら大概だ。そして今後も宝箱探しを続けていれば同じ事が起きる可能性が高い一方で、助けが入る可能性は極めて低い。
しかしこれ以上の安全を考えれば第五階層の探索は夢のまた夢になる。ある程度の覚悟は必要だ。結局なるようにしかならないのだと開き直るしかないのだろう。
だから凹んでばかりもいられない。気になる事もある。
「あの閃光みたいなのは? 目が眩んで何も見えなかったんだが」
「目が眩んだのはすまんな。あの時は警告する暇も惜しかったんでな。あれは音響閃光弾だ。人には聞こえない音と閃光を発する。あれでクラーケンを硬直させて仕留めるんだ」
「音響閃光弾? 硬直? そんな物があったのか……」
それを持っていればもっと楽にルキアスを助けられた。それどころか掠われるのを防げたかも知れないとなれば、口惜しさを感じずにいられないザネクである。
そうしてザネクが情報収集不足に自責の念を抱いていると、少々情けない声がした。
「話してるところ悪いんだけど、早く助けて欲しいんだけど……」
ルキアスだ。まだクラーケンの足に巻き付かれたままであった。クラーケンが死んでもその足が解けなかった上、他にもクラーケンが居たらしく猟師達の手が取られていたことで未だ救出されずにいたのだ。
「悪い悪い」
ルキアスは漸く救出された。
クラーケンの上でどや顔を決めるのは昨日ルキアスとザネクが海に浮かんでいるのを助けた猟師だ。
ところがザネクは猟師を呼ぼうとして口籠もる。
「あんたは! えーと……」
「そう言や名乗ってなかったな。ヘルドだ」
「お、おう! ヘルド、助かったぜ!」
「いいってことよ。これで借りも返せたようだしな」
「ああ! これで貸し借り無しだ!」
これは勿論ルキアス、ザネクとヘルドとの貸し借りがだ。ザネクがルキアスに借りていると思っているのは命二つ分、今回の事で返せたのは精々命半分くらいだと考えているのでまだまだ清算はできていない。ルキアスに貸しを作った覚えが無いからザネクの勝手な思いでしかないが、返さないと落ち着かないのだからしょうがない。
それはそれとして、ここで貸し借りを云々するのは、ダンジョン内では義理がかなりものを言うからだ。何かで板挟みになった場合は義理のある方に味方する。それが時として身の破滅を呼ぶのだから、日頃から清算して後腐れを無くしておくに越したことはない。
「でもどうしてここに?」
大きな疑問はここだ。
「お前達が飛んで行くのを見張りが見付けてな。何か危なっかしく見えたからこっちの方に来たんだ。そしたら水柱が上がっただろ? 何かヤバくなってるんじゃって駆け付けた訳だ」
「そんなに危なっかしい?」
「おう。びっくりするぐらいにな」
「あちゃー……」
ザネクは額に手を当てて凹んだ。ルキアスにそんな部分があったら止める立場に居ながら一緒に危うい事をしてしまっていた。実際危うかったし、傍目にそう見えるなら大概だ。そして今後も宝箱探しを続けていれば同じ事が起きる可能性が高い一方で、助けが入る可能性は極めて低い。
しかしこれ以上の安全を考えれば第五階層の探索は夢のまた夢になる。ある程度の覚悟は必要だ。結局なるようにしかならないのだと開き直るしかないのだろう。
だから凹んでばかりもいられない。気になる事もある。
「あの閃光みたいなのは? 目が眩んで何も見えなかったんだが」
「目が眩んだのはすまんな。あの時は警告する暇も惜しかったんでな。あれは音響閃光弾だ。人には聞こえない音と閃光を発する。あれでクラーケンを硬直させて仕留めるんだ」
「音響閃光弾? 硬直? そんな物があったのか……」
それを持っていればもっと楽にルキアスを助けられた。それどころか掠われるのを防げたかも知れないとなれば、口惜しさを感じずにいられないザネクである。
そうしてザネクが情報収集不足に自責の念を抱いていると、少々情けない声がした。
「話してるところ悪いんだけど、早く助けて欲しいんだけど……」
ルキアスだ。まだクラーケンの足に巻き付かれたままであった。クラーケンが死んでもその足が解けなかった上、他にもクラーケンが居たらしく猟師達の手が取られていたことで未だ救出されずにいたのだ。
「悪い悪い」
ルキアスは漸く救出された。
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