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219 でっかいの
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「あれ? もしかしてあの船何かと戦ってる?」
遠目に人が慌ただしく行き交うのが見え、魔法らしき閃光も見える。
「みたいだな。近付くのはヤバそうだ」
下手に戦いに近付くのは危険だ。人同士の戦いなら両陣営から敵と見なされかねず、魔物との戦いなら獲物の横取りと思われて人から攻撃されかねない。状況を慎重に見極める必要がある。
そんな悠長な。もし人が魔物との戦いで危機に陥っていたら助けなければ。なんて考えたら早死にするだけだ。ルキアスは勿論、ザネクにも大型船を助けられる実力は無い。大型船ならもっと腕の立つ傭兵が乗っている筈。そんな場所にのこのこ乗り込んで目覚ましい活躍ができるのは英雄譚の主人公だけだ。
だから遠巻きに回り込んで状況を把握できる場所まで移動する。
「何? あの、でっかいの……」
さすがに目の前の船ほどの大きさは無いが、足を伸ばして五、六匹並べたら船の全長に匹敵するだろう大きさだ。それが三匹、船に貼り付いている。
「クラーケンだな」
「大き過ぎない?」
「巨大だって言ったろ?」
「いや、だって、第五階層だよ? メガフロッグだって名前ほど大きくなかったよね? それがどうして突然ああなるの?」
「俺に言われてもアレだが、確かに奇妙だな」
ザネクは腕組み考える。
「うん、あれだ。大方周りが水ばかりで比べる物が無いもんで、創ったヤツが錯覚したんだろうさ」
「なるほど、それはあり得る」
ルキアスはヨーコが本当に神様ならやらかしそうだと思った。
直後、女声で「そこに突っ込むでないわ」と聞こえた気がしたが、気にしないことにした。殆どの探索者がこの階層を素通りするので今のままでも特に問題は無いのだ。
それから暫く見ていると、乗組員が倒したクラーケンを船に引き上げている様子が見えた。
「でもあれって襲われてるのかな? それとも漁をしてるのかな?」
「あれは多分両方だな。船を囮にしてクラーケンを引き寄せて狩るんだろう」
「それって危なくない?」
「俺らだって、俺を囮にホーンラビットを狩ってたろ? 規模が大きいだけだ」
「そう言われればそうだね……」
囮と言うと人聞きを悪く感じるが、他に適当な言い方ができるものでもない。このダンジョンの低階層は向こうから寄って来て貰わなければ食い繋ぐのでギリギリの収入だったりするので、誰もが多かれ少なかれ行っていることなのである。
話をしている間にもクラーケンが一匹倒され、残る一匹も間もなく倒された。
「そろそろ行くか?」
「そうだね」
船も無事そうなので二人がここに居る意味も無い。ルキアスは『傘』をそろそろと動かし始める。
「あ! ちょっと待った!」
ルキアスがザネクの声に振り向けば、ザネクが船の方を顎で指し示す。示されたまま船を見れば、誰かがこちらに向けて手招きするように手を振っていた。
遠目に人が慌ただしく行き交うのが見え、魔法らしき閃光も見える。
「みたいだな。近付くのはヤバそうだ」
下手に戦いに近付くのは危険だ。人同士の戦いなら両陣営から敵と見なされかねず、魔物との戦いなら獲物の横取りと思われて人から攻撃されかねない。状況を慎重に見極める必要がある。
そんな悠長な。もし人が魔物との戦いで危機に陥っていたら助けなければ。なんて考えたら早死にするだけだ。ルキアスは勿論、ザネクにも大型船を助けられる実力は無い。大型船ならもっと腕の立つ傭兵が乗っている筈。そんな場所にのこのこ乗り込んで目覚ましい活躍ができるのは英雄譚の主人公だけだ。
だから遠巻きに回り込んで状況を把握できる場所まで移動する。
「何? あの、でっかいの……」
さすがに目の前の船ほどの大きさは無いが、足を伸ばして五、六匹並べたら船の全長に匹敵するだろう大きさだ。それが三匹、船に貼り付いている。
「クラーケンだな」
「大き過ぎない?」
「巨大だって言ったろ?」
「いや、だって、第五階層だよ? メガフロッグだって名前ほど大きくなかったよね? それがどうして突然ああなるの?」
「俺に言われてもアレだが、確かに奇妙だな」
ザネクは腕組み考える。
「うん、あれだ。大方周りが水ばかりで比べる物が無いもんで、創ったヤツが錯覚したんだろうさ」
「なるほど、それはあり得る」
ルキアスはヨーコが本当に神様ならやらかしそうだと思った。
直後、女声で「そこに突っ込むでないわ」と聞こえた気がしたが、気にしないことにした。殆どの探索者がこの階層を素通りするので今のままでも特に問題は無いのだ。
それから暫く見ていると、乗組員が倒したクラーケンを船に引き上げている様子が見えた。
「でもあれって襲われてるのかな? それとも漁をしてるのかな?」
「あれは多分両方だな。船を囮にしてクラーケンを引き寄せて狩るんだろう」
「それって危なくない?」
「俺らだって、俺を囮にホーンラビットを狩ってたろ? 規模が大きいだけだ」
「そう言われればそうだね……」
囮と言うと人聞きを悪く感じるが、他に適当な言い方ができるものでもない。このダンジョンの低階層は向こうから寄って来て貰わなければ食い繋ぐのでギリギリの収入だったりするので、誰もが多かれ少なかれ行っていることなのである。
話をしている間にもクラーケンが一匹倒され、残る一匹も間もなく倒された。
「そろそろ行くか?」
「そうだね」
船も無事そうなので二人がここに居る意味も無い。ルキアスは『傘』をそろそろと動かし始める。
「あ! ちょっと待った!」
ルキアスがザネクの声に振り向けば、ザネクが船の方を顎で指し示す。示されたまま船を見れば、誰かがこちらに向けて手招きするように手を振っていた。
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