生活魔法は万能です

浜柔

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207 探す理由

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 ルキアスの『傘』を疑いの眼差しで見ていたシャルウィだったが、『傘』に乗っている間にそんな気持ちもどこかへ行ったらしい。

「これが生活魔法だなんて信じられないわ!」

 一人歓声を上げつつはしゃぐ様子を見れば、その言葉は文字通りの意味でなく感嘆だと判る。
 だがそんな彼女の気分をぶち壊してでもはっきりさせておかなければならない事もあった。

「なあ、お前はどうして神薬を探してるんだ?」

 一瞬ハッとなったシャルウィは苦悶の表情を見せるが、直ぐに無表情で目を逸らす。
 ザネクには不思議とそれがシャルウィの素の表情に感じられた。

「あたしのママが肺を患っていて治療に必要なのよ」
「それにしては随分態度が不貞不貞しいっつーか、騒々しいが?」
「そんなの、ママが一番喜ぶのがあたしが元気にしてる姿だからよ」

 今し方の無表情など無かったように、シャルウィは不敵な笑みを浮かべて胸を張った。

「俺達の前でも元気な振りをしてたってのか?」
「当たり前じゃない。日頃からやってなかったらママの前でボロが出るじゃない」

 恐らくシャルウィは口を滑らせた。

「そうか」

 ザネクはそう返した後、暫し無言でシャルウィを見据える。そして言った。

「判った。もし神薬が見付かったら最初のはお前にやる。ルキアスもいいか?」

 ルキアスとしてはシャルウィの言葉を信じて良いのか判断がつかない。シャルウィの態度からは本当か嘘か読み取れない。だからザネクがしたいようにして貰うのが良いと考えた。

「ぼくも構わないよ」
「え? 信じるの?」
「ああ、信じるさ。もしも嘘でも一度目は信じてやる」

 シャルウィが瞠目した。ルキアスもだ。

(男らしいな……)

 胸がキュンとまではしないが、やたら格好良く感じた。そして少し顔を赤らめているシャルウィを見て、「もしかしてキュンとしちゃったのかな」なんて考えてしまう。

「あ、ありがと……」

 シャルウィは髪の毛の先を弄りながら言った。少し照れた様子は至極可憐だ。ザネクが一瞬見蕩れ、それを振り払うかのように頭を振る。
 そんなこんなをしている間にも『傘』は昨日目指した島に到着した。二桁に及ぶクロコダイルやメガフロッグが屯しているのを上から銃と弓で始末する。

「あんた達、それちょっとあくどくない?」
「楽できるなら苦労する必要なんて無いさ」

 ザネクが「お前も楽したくて俺達に近付いたんだろ?」と付け加えれば、シャルウィは「それはそうだけど……」と片付かない様子で呟いた。
 魔物を一掃できたところで島に上陸する。

「ルキアス、在ると思うか?」
「魔物が群れてたから多分」

 何がと言わなくても判る。宝箱だ。第二階層ではゴブリンの群が出た茂みに在った。ここでも同様だと推測できる。

「在るとしたら……」

 ルキアスは島の真ん中に向かう。第三階層では山の頂上の真ん中だった。可能性は高い。
 だが真ん中にそのもの・・・・な物は見当たらない。泥水が溜まった凹みがあるだけだ。それでも第三階層を考えれば……。

(ちょっと怖いな……)

 恐る恐る手を伸ばしてみるが水面に触れる直前止めた。『収納』から竹竿を取り出し、これで泥の中を探る。
 コツンと手応えがあった。
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